第20話 新しい仲間

王都のカフェ「ルーン」で待ち合わせ。

何でも最近流行りのお店なんだそうな。

全く興味のない騎士団長のワットは店内を眺めていた。

枯れた花とか、古めかしい小物などが飾られていて、絵も飾ってあったりする。


「よく解らんな‥カップルとかが来るところなのだろうが‥。」


「ワットお待たせしたかしら。」


時刻キッチリに来た勇者ご一行。

全然待っていないが。


「あれ?シオリとやらは?」

小さい女の猫族がいない。

勇者という固有名詞は出さないように話す。

世間に知られないようにしているからだ。


「何言ってるの、貴方の目の前にいるじゃない。猫耳の。」


「え?ええええ?」


見ると15、6くらいだろうか、美少女がそこに立っていた。

漆黒の黒髪と焦げ茶色の瞳。

そういわれて見れば面影おもかげはあるが‥‥。


「あーしばらく会ってなかったわね。しょうがないか。とにかく座るわよ。」


俺の座席の前に座る美少女。

何だこれ別人だろ。

最初見たときは猫族の小さい子供だったのに…。


「俺も一緒に ”ローズウッド” に混ぜてもらえないだろうか…。」


「「え、えええ?」」


「騎士団長、貴方‥仕事辞める気なの?」


ローズが小さい声で言ってくる。

俺、あれ変なこと言ったかな。

彼女に惚れてしまったみたいだ。

一目ぼれって本当にあるんだな。


「これも仕事の一環いっかんだし、構わないだろ。」


ローズが何故か慌てているがよく分からない。


「貴方こんな人だったっけ?もっと冷静沈着で…。」

ローズはこめかみを抑えつつ


「まあ、いいわ。よく話し合いましょう。」



****



お店の紅茶を、何回かおかわりしたところで・・・。


「‥…本人の意思が固いようだし仕方ないわね…。」


あれから小一時間ローズはワットを説得?していた。

王国の騎士団長ともなれば、平の騎士団とは全く違う。

業務をほっぽりだして、一緒に冒険したいというのだ。


「俺は剣の腕は言うまでもありませんが、前衛で役に立てると思いますよ。」

ぼくの隣のシオリに、にっこりと微笑む。


金髪碧眼へきがんの美青年のワット。

見た目20代くらいじゃなかろうか。

イケメンの部類に入る彼はモテモテだろうに‥。

――――気にしないことにしよう。


ぼくは少し大人になったんだ。


「そうですね。とても助かります。」

ぼくは少し引きつりながらうなずいた。


「へぇ~騎士団長さんだったんだ。」


シオリがワットに話しかけている。


「そんな大層なものじゃないですよ。ただ立場が上なだけで。」


いやいや、大したことあるだろ。

何もシオリに近づかなくても、こんなイケメンなら女が離さないだろうに。

ぼくはまたイライラしていた。


「ちょっと待ってくださいね。」


シオリはそう言うとぼくの手を握った。

テーブルの下でぎゅっと手をつないでいる。

不思議なくらいイライラは静まった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る