いきなり天使にされたけど、勢いだけで宇宙を作っちゃった

ahootaa

第1話 神との出会い〜魔法でやりたい放題〜

 今、正直、自分の能力にドン引きしている。

 俺は自称神様という中年のオッサンに唆されて宇宙を一つ作らされた。


「なんだよ? これは?」


「宇宙だよ? 上手に作れるね。これでキミも天使さ! おめでとう!」


 なぜこんなことになったかと言うと、二日前まで遡る



★★★



「アルターイ! 話聞いてる!?」


「あぁ、聞いているよ。アリエル」


 俺はアルターイ・ガストン。

 15歳の少年だ。

 幼馴染のアリエルと結婚式の話し合いをしていた。

 結婚式は三日後に迫っている。

 俺の家は小さな領地の領主をしている。

 俺は三男であるため、領主にはなれないが、王国の衛兵として雇われている。

 戦士ではなく、魔術師としてだ。

 中でも特級と呼ばれる特別珍しい能力を持っている。

 本来であれば上級がヒトの限界とされているが、それを上回る魔力を持っている。

 特級は一人生まれるとその国の国力が大きく強くなると言われている。

 俺もそう聞いただけで、どれくらいすごいのかはわかっていない。

 でも、魔術に関しては誰にも負けなかった。

 

 通常、魔力の等級が上がれば上がるほど、魔術を放つまでの時間が短いとされている。

 俺の場合、どんなに複雑な術式の魔術でも一瞬で放つことができるのである。

 先日は時を止める魔術を教えてもらったので、試してみたが、10秒くらいは止めることができた。

 先輩達は1秒も止められないのに、である。

 しかし、あの時は、時を止められると証明するのに時間がかかってしまった。

 結局、止まっている間に走って移動することで瞬間移動のように見せて、証明することができた。


「アルターイ!またボーッとしてる!」


「あぁ、ごめんよ」


 マリッジブルーではない。

 ただ、自分の魔力に酔いしれていただけだ。

 説明すると余計に痛いヒト扱いされるので、黙っておくが。


 アリエルは領内の孤児院で育った子どもだった。

 俺は領内でも有名なワンパク小僧だったため、あっちゃこっちゃでトラブルを起こしていた。

 それをいつもアリエルはフォローしてくれていたらしい。

 俺は見たわけではないので「らしい」とつく。

 それを教えてくれたのは一番上の兄だった。

 その話を聞いてからというもの、一気にアリエルと仲が良くなり、それなりの年齢になったので「結婚しよう」という運びである。

 

「ねぇ、アルターイ?私、結婚する前にあなたに会って欲しい方がいるの」


「へぇ、君にそんなヒトがいるなんて初耳だな。どんなヒトなんだい?」


 意外だった。

 子どもの頃からずっと一緒に過ごしてきたのに、そんな改めて会わせたいヒトなんていたっけな?


「えっとね、素敵な方よ?詳しくは会ってから説明するね」


 ますます怪しい。


「うん。わかった。それじゃあ、楽しみにしてるよ。それはいつなんだ?」


「今日はもう遅いから、会いに行くのは明日にしましょう」


 結構簡単に会えるヒトだな。

 貴族ではなさそうだ。

 それは一安心だ。

 貴族の作法は難しい。

 俺は作法の勉強は嫌いだった。

 地方の小領主の三男だし、教える側も教える気がなかったのか、逃げ出したら、そのまま教師は追いかけてこなかった。


「あぁ、わかった。それじゃあ、明日の午後でもいいか?」


「ええ、いいわよ」



★★★



 そして紹介されたのが、目の前の自称神だ。

 このオッサンが言うには、俺は神殺しという才能があって、場合によっては神を殺せる存在らしい。

 殺される前に仲良くなっておきたいらしい。

 と、いうことで、さらに魔力を強化されてしまったら、うっかり宇宙を作ってしまっていたということだ。


「おい、オッサン、俺はアリエルと結婚する予定なんだけど、なんでアリエルをはべらせてんの?俺のアリエルなんだけど?」


「んー、アリエルは私が作った天使だからね。キミのことは好きらしいけど、私には逆らえないんだ。だからだよ」


 泰然とした態度がムカつく。

 なんなんだよ。


「そうじゃなくて、結婚するから元に戻してくれよ」


「それも無理だね。キミはもう天使になってしまったからね。ヒトとして第10宇宙へは帰れないよ」


「え?何言ってんだ?オメー、ぶっ飛ばすぞ?」

 

 俺は携帯していた杖を使い、時を止める魔術を使う。

 

 しかし、時は止まらない。


 いや、止まっているのか?

 周りに何もないから止まっているのかどうかわからない。


「ってか、ここどこ!?」


 そう、場所がわからない。

 アリエルについて行ったのは普通の町の道だったはずなのに、いつの間にかここへ来ていた。

 何もない、真っ白な空間へ。

 

「ここは神の間よ。アルターイ、落ち着いて。私はあなたと結婚するわ。その前に、神様のご判断を仰ぎに来たのよ」


「なんで今頃?もっと時間はあっただろ?」

 

 なんかわからないけど、アリエルに怒鳴る。


「神様が何も言ってこないということは基本はOKの合図なの。でも、天使が結婚するのは大丈夫なのか? ということを確認したかったのよ」


「それはわかったけど、神とかは信じられん」


「さっきあなたが放った魔術では私と神様の時を止めることはできなかったでしょ?完全なる上位者であられる神様には何も攻撃はできないのよ」


「でも、俺は神殺しなんだろ?」


「それはその素質のある者と言った方が正しいわね」


「なるほど、もっと強くなれば、自由が手に入るんだな?」


「それも違うわ。アルターイ、あなたは、自由なの。もうヒトという種族からも自由になったのよ」


「じゃあ、何をしたらいいんだよ?」


 もう、わからんよ。


「天使よ」


 それは知ってる。

 知ってるけど、天使って何?


 するとオッサンが話し出す。


「天使とは、私の意志を具体化させるものだよ。何か仕事があるのは、滅多にないからアリエルと好きなようにして過ごすといいさ。天使になったキミにはなんでもできるからね」


 ん?

 まさか、心を読まれた?


「そうだよ。私はなんでもできるし、なんでもお見通しさ」


 わからないけど、納得することにした。

「まぁ、いいか」

 小さい頃からの口ぐせだった。


表紙となるカバーイラストです

https://kakuyomu.jp/users/ahootaaa/news/16817330663275290461


アルターイのイラストです

https://kakuyomu.jp/users/ahootaaa/news/16817330663275394463

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