【書籍化決定!】原作最強のラスボスが主人公の仲間になったら?

反面教師@5シリーズ書籍化予定!

第1話 悪役転生、そして亡命

 ユーグラム・アルベイン・クシャナ。


 栄えある帝国の第三皇子にして、世界にたった二人しかいない〝神の御子〟。


 その才能は留まるところを知らず、基本的にやれば何でもできた。


 まさに完璧超人。


 それでいて容姿端麗。文武両道。あらゆる面において恵まれた男は、——しかし、人間性にだけは恵まれなかった。




 悪逆非道。傲慢。残忍で冷酷。


 ユーグラムを知る全ての民は、彼のことを恐れていた。


 気に食わない者は処刑。


 気に食わない店は潰す。


 気に食わない物は壊す。


 まさにやりたい放題だった。


 そんな彼が最後に目を付けたのが——隣国のアルドノア王国。


 もう一人の神の御子が存在する国だ。


 その国を手中に収め、世界でたった一人のになろうとした。


 しかし、この物語の主人公はユーグラムではない。


 心優しきアイリスという女性だった。


 彼女はユーグラムとは対照的に優しく、自らの生まれ持った才能を人々のために使いたいと言った。


 そんな二人がぶつかるのは当然のこと。


 アイリスは断固として帝国の侵攻を許さず、勇猛果敢に最前線で戦った。


 その末に、仲間たちと力を合わせてユーグラムを討ち取る。


 それが物語の本筋。


 定められた絶対の未来だった。




 ▼△▼




「……まさか、俺がユーグラムに転生するとはな……」


 自室でひとり愚痴る。


 窓の外から差し込む月光が、わずかに俺の姿を照らした。


 反射した鏡に映っているのは、まごうことなき自分の顔。


 ——ユーグラム・アルベイン・クシャナの顔だった。




「納得できねぇ……できるわけがねぇ」


 俺はこの世界に転生した。


 前世の記憶はほとんど覚えていない。


 唯一、鮮明に残っている記憶は、この世界の元になった小説の内容と、悪役にしてラスボスのユーグラムが持っていた記憶だけ。


 それによると、このままシナリオ通りに動けば——俺は確実に殺される。


 アイリスとその仲間たちに殺される。




 ユーグラムは至上最低最悪の皇帝だ。正確にはまだ皇帝ではないが、いずれそうなる。


 他者を道具のように扱い、掃いて捨てるほど利用した。


 ——そんな男を助ける者はいない。


 孤立し、孤独の中で、それでも戦いをやめなかった。


 そして殺される。


 それがユーグラムの最期だ。


 しかし……。


「無理だよな。普通に考えて、そんな未来を受け入れるなんてこと」


 俺自身、この世界——小説の内容は割と好きだった。


 クソ野郎のユーグラムが最後にはざまぁされてめっちゃスッキリした。


 けど、そのざまぁになるなんて聞いてない。


 せっかくロマン溢れるファンタジー世界にいるってのに、最初からバッドエンドが確定したキャラとか終わってる。どうしよう……。


「なんとか戦争を回避して内政に専念するか? いや無理だろ。すでに帝国上層部はかなり腐敗してるし、国内も戦争準備を始めてる。そもそも両親からして悪役っぽい感じだしなぁ……」


 現在ユーグラムの年齢は15歳。


 原作だと、皇帝に即位するのが早くても10年後くらいだから十分に猶予はあるが、王国との戦争が始まるのはそう遠い未来じゃない。下手すると2、3年で始まる。


 戦争が始まれば、もうユーグラムはバッドエンドまで転げ落ちるだけだ。


 たとえ俺が全力で王国軍を完封して勝利を収めても、腐った帝国が覇権を握ったらかなりまずい。


 いずれ帝国そのものが火種になって暗殺とかされそう。


「そうなると……やはりここは逃げの一手だな」


 最後に閃いた答えは——亡命。


 帝国最強戦力である俺がいなくなれば、単騎でアイリスを抑えられる者がいなくなる。


 そうでなくとも、帝国はアイリスたち王国軍に負ける運命にある。


 だったら俺は、最初から王国側に亡命して情報などを売ればいい。普通の生活くらいはできるだろう。


 ナイスアイデアッ!


 倫理観? 良心? そんなものは転生した直後の俺わかんなぁい。


 いろいろ含めて全部帝国に置いていくことにした。


 早速準備を始める。




 ▼△▼




 武器よし。食料よし。飲み物よし。服よし。変装用の仮面よーし!


 ささっと亡命用の荷物をまとめる。


 俺ってば世界で二人しかいない神の御子だからね。その証である金色の瞳を隠すために、仮面は必須アイテムだ。


 かちゃりと仮面を付けて窓を開ける。


 転生した直後で愛着などまったくないが、これから待ち受ける自分の不安定な未来を想像すると、少しだけ怖くなった。


 しかし、覚悟を決める。


「俺は生き残ってみせる。どんな手を使ってでも——」


 バッと窓の外に飛び降りる。


 地面に着地してすぐ走り出し、王宮を出て街中へ。


 静まり返った夜の帝国の風景を記憶に刻みながら、闇にまぎれて正門を越える。


 そこから先は、王都まで大自然が広がっている。


 外には異世界らしくモンスターがいる。


 それでも俺は迷わずに駆けた。もう二度と後ろは振り返らない……。




———————————

あとがき。


反面教師の新作!

過去に投稿して爆死した作品に手を加えました!


本日はもう1話夜に投稿します(20時くらい)

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