第4話 小学校の先生

 その日は偶然昼には起きていた。

 インターフォンが鳴ったので、カメラを見ると肩幅の広いガッチリとした男性。


 敵性感知。


 これは敵性しかない。でも、手は通話ボタンを押してしまった。僕は小さな声で話しかけた。こちらの返事が終わる前に男性はナントカ小学校の教師だと言った。


 ナントカ小学校は近くの小学校だ。選挙せんきょの時にしか行かない。


 僕は門から顔を出して小さな声で対応した。この辺りで巨漢の大男がいたいけな小学生を追い回したり、道を聞いたらするらしい。


 僕はこの辺に引っ越して三年だ。心当たりはありませんと、小さな声で対応した。教師の敵性は外れない。どうやら、僕を疑っている様だ。


 失礼な男だ。小学生を追い回しても膝がこわれるだけだし、道を聞いてもマトモな返事は聞かないだろう。


「失礼ですが、お仕事は何を」


 ほら来た。そうやって職業ヘイトをする。僕には分かる。ここで無職と答えると僕の家周辺の見回りが増える。だから、僕は小さい声で自らが仕方なく、無職だと伝えた。


 馬鹿ばか脳筋たいりょくばかめ、僕の声が耳に届かないらしい。わざわざ大声で話すと疲れるではないか。


 ここで僕ではありませんと言うのは逆効果ぎゃくこうかだし、あやしまれる。それに紳士的ではない。

 だからと言って、僕が犯人を見つけようと動くと、一層怪しまれる。


 敵性感知過多になりそうだ。紳士として、子どもを見守るのはこの体型たいけい表情筋ひょうじょうきんが失われた顔では困難こんなんだ。


「何か怪しい人を見かけたら、ナントカ小学校に連絡をください」

 それは、『あなたが怪しいので、何かやったらナントカ小学校に自首してください』と言ってるのも同意だろう。

 なんと不愉快ふゆかいな敵性だ。


 夜に出て行きしな、大きな男が小学生の手を握っていた。紳士的な僕は彼を小さな声で呼び止めた。


 反応したぞ、何もせずとも犯人を捕まえたぞ。紳士的に生きていて良かった。


「パパどうしたの? 早く行こうよ」

 男の敵性を感知した。

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