第5話 悲恋



 

 甘い汁をたっぷりと吸わされた『デーモン鬼龍』閣下は、現ナマとワイロ攻めにあい、そのお金の大半を、あのレニー王子の側を片時も離れない妖艶で美しい公女エリ-ゼに、どうも貢いでいるらしい。

「今度こそ……今度こそ……あの美しいエリ-ゼ様を僕のものに……嗚呼……」

 

 だが、5歳の一華を16歳に戻す事は兵士たちの誰もが望まぬ事だった。その理由は高慢ちきな女の子で、早速『ヴィエノワ-ル王国』の兵士たちに毒付いたからだった。


「全く無能ね!この戦争結局『デーモン鬼龍』閣下が、ひとり頑張っただけで只隠れてビクビク怯えていただけじゃないの。クズ!」


「幾ら5歳と言えど、あんな我がままで高慢ちき娘絶対に賛成は出来ません。散々我々にも悪態の限りを尽くして……もう辛抱が出来ません。もし16歳に戻したらどんな悪知恵を働かす事か?それを考えるとブルブルと身震いさえ感じます」


 それでも『デーモン鬼龍』閣下には賄賂にゴマすりと、ちゃっかり使い分けしている一華。だから……兵士たちには散々反対されたが、『デーモン鬼龍』にすれば可愛い小娘。部下たちの反発を押さえ付けて自分の意のままに強引に一華を16歳に戻した。


「たっぷりと上手い汁を吸わせて貰ったわい。う~っふっふっふ~!ア~ッハッハッハ!そして…何よりもエリ-ゼ様の為だ」

 

 ”エリ-ゼ様ってひょっとして……公爵令嬢の公女エリ-ゼ様の事?”

「エエエエ————————ッ!『何よりもエリ-ゼ様の為だ!』とは、一体どういう事?」


実は…『デーモン鬼龍』閣下は公女エリ-ゼ様に、事あるごとに声を掛けられていた。

 

「ありがとうございます!デーモン閣下のお陰ですことよ。この戦争に勝てたのも……」そう言ってデーモン閣下の目をジーッと見詰めて、ウインク更には手をそっと握りしめてくれるのだった。


 またある時は『デーモン鬼龍』閣下の大好物魚の干物をどっさり届けてくれるのだった。それはレニー王子から頼まれたからだったが、またしてもウインクと手をそっと握り締めてくれた。


 こんな美人にそんな事をされれば、普通の男だったら完全に恋狂いしてしまう事が目に見えてるのに何故……こんな大胆な行動を取るのか?


 実は…この公女エリ-ゼは貴族階級最高峰の公爵家の御令嬢だが、生活苦に喘いでいた。



 ※それでは先ず貴族とはどのようなものか説明しておく必要がある。そして…その中には貧乏貴族と呼ばれる者も存在する。

 ●貴族とは、国のために功績を残した人物が、王様、領主などから、功績に応じて土地や爵位をもらって、平民にない特権(政治に関与する権限など)を与えられた人達なのだ。だが、爵位を与えられた貴族が亡くなり代が変わると子孫が、能力の問題や、権力闘争に負け、役職に就けずに、その収入が無くなったり、領地が無くなったりして、貧乏になった場合に貧乏貴族が発生する事になる。


   ◇◇

 それでは何故貴族階級最高峰公爵家の、御令嬢公女エリ-ゼ様の家庭が生活苦に追いやられたのかという事だ。

 

 実は…レニー王子の父レオナルド王の親友と目されていた公女エリ-ゼの父エドワ-ド公爵だったが、この2人は過去に女性を巡って壮絶な争いを繰り広げていた。


 


 レオナルド王はお亡くなりになった元王様に生き写しのずんぐりむっくりのチンチクリンだが、『ヴィエノワ-ル王国』では何よりも血統を重んじるので、例え無能であろうと、チンチクリンであろうと、代々血筋最優先に基づく王国だったので、レオナルド王子が王様となった。


 一方の公女エリ-ゼの父でエドワ-ド公は、それこそ「眉目秀麗」とはエドワ-ド公の為に有ると言っても過言ではない顔立ちが整っていて、優れた容貌を誇る人物だった。


 

 最初にエドワ-ド瑯と公女レイラが出会ったのが、王族や貴族の子女たちが通っている名門校「カレッジ・ランブルック・スクール」で年に1度繰り広げられるダンスパ-ティ会場で出会ったのが最初の出会いだった。そして…この「カレッジ・ランブルック・スクール」では、毎年ダンス大会が繰り広げられてキングとクイーンが選出される事になっていた。


 その時ダンスファイナリストに残ったレイラが、ミュージックにのせて体を自由自在に、まるで鳥のように、蝶のように 、羽のように軽やかに、 何かに取り付かれたかのように一晩中踊り明かす その姿の余りの美しさに、一瞬桜の精が舞い降りたのではと、見間違うほどの美しく魅惑的な乱舞だった。


 その時男子の部ではいち早くエドワ-ド瑯が、栄えあるキングの称号を手にしていた。そして…この時のクイーンが公女レイラだった。


 2人は一瞬で恋の魔法に掛かってしまい18歳だというのに、会えない時間が続くと胸が締め付けられて、息もできないほど胸が苦しくなり不安に苛まれるのだが、会って恋の証最上級の甘いキスをすると、甘美なロマンティックな気分に浸る事が出来るのだった。

 こんな激しい焼けつくように胸に迫る恋だった2人だが、この恋に待ったを掛けたのが、レオナルド王子だった。


 きっとエドワ-ド瑯と公女レイラの恋が、息もできないほど激しくて胸が苦しくなり不安に苛まれる恋だったのは、レオナルド王子の行動の数々に対する不安で一杯だったからだ。


 それはレオナルド王子が、事あるごとにレイラの前に現れて、エドワ-ド瑯との関係を引き裂こうとしてレイラに迫ることだった。


「レイラ今度の休み僕の馬で2人でオーロラを見に行こうよ。イヤとは言わせないよ。そんな事したら父上の今の地位法務大臣の座を失脚してもらう事にするよ。良いのかい?」


「……でも……でも……私には……だから……」


「何を周りくどい事を言っているんだい。ハッキリ言いなよ。あいつだろう?エドワ-ド瑯だろう。じゃ―言うけど……今後あいつと付き合ったら両方の親の役職を解く事だって俺は出来るんだ。それでも……それでも……良いのかい?」


「ウウウウッシクシク(´;ω;`)ウゥゥ……レオナルド王子お許し下さい。どうか……どうか……私の事は……私の事は……ウウウウッ(´;ω;`)ウゥゥお諦め下さい」


「俺は……俺は……レイラの事をあいつエドワ-ド瑯と付き合うズ—ッと前から思っていた。何で……何で……僕の気持ちをいつも踏みにじる事を言うんだ。ウウウッ( ノД`)シクシク…レイラお願いだから……アイツとは別れてくれ!」


「そんな事……そんな事……ウウウウッシクシク(´;ω;`)ウゥゥワァ~~ン😭ワァ~~ン😭」


「俺だってレイラ以上に苦しんでいるさ。もし言う事聞けないのだったら御父上の職を解くからな!俺が……俺が……レイラを幸せにしてやる!」

 有無も言わせぬ形で、強引に公女レイラを奪い去ったのが、レオナルド王子だった。



    ◇◇


 いくら行く行く王様になる身のレオナルド王子でも、我がままで自己中心的な性格のレオナルド王子と、片やエドワ-ド瑯はスポ-ツ万能にして学業優秀、更には超イケメン。


 公女レイラの父はお城に仕える公爵様だった。代々お城に仕える家系であったが、実はご先祖様は偉大な人物だった。建国時に『ヴィエノワ-ル王国』が敵国から攻め入られ瀕死の状態だった所を、その当時有名な剣の達人だった若武者が1000人斬りという偉業を達成して、敵国を圧勝した話は伝説として今でも語り継がれている。そんな勇者の末柄が公女レイラだった。そして…その当時その多大なる功績を認められて王様から貴族の最高位公爵に任命された人物だった。


 一方のエドワ-ド公爵の先祖は建国時に『ヴィエノワ-ル王国』の地質学者として

鉱物の試掘、採掘およびこれに付属する選鉱、製錬その他の事業の発展に貢献した人物だった。この国の金貨や鉄鋼、銅線、石炭、石油などの資源発掘生成に貢献した第一功労者として、王様から貴族の最高位公爵に任命された人物だった。


 こうしてレイラは泣く泣くレオナルド王子の妻となった。だが、胸を焦がすほどの熱い恋だった2人の恋の炎が、おいそれと消える訳がない。


 2人は人目を盗んで逢引きを重ねていた。だが、エドワ-ド公に悲劇が……。      



 

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