第15話


 変動ステータス


 名前:栖海すかい 来翔らいと

 性別:男

 レベル:20


 HP:8/15

 SP:100/100

 腕力:1

 俊敏:1

 器用:11

 知力:1

 魔力:1


 固定ステータス


 才能:B

 人柄:A

 容姿:C

 運勢:B

 因果:C


 スキル:【100互換】【PH】


 装備:皮の服 皮の靴



 変動ステータス


 名前:あか 結理ゆうり

 性別:女

 レベル:20


 HP:19/20

 SP:8/15

 腕力:1

 俊敏:1

 器用:6

 知力:1

 魔力:1


 固定ステータス


 才能:B

 人柄:A

 容姿:A

 運勢:C

 因果:A


 スキル:【糸目】【観覧】


 装備:皮の服 魔法の靴(無限)皮の袋



 オルトン村を出発する際、僕はこんな具合で【互換】スキルを使って自分と結のステータスを弄ってみた。


 あと、弓や魔法の矢筒、それに棍棒は魔法の袋に収納しておいた。武器もその人を特定できる特徴の一つだろうからね。もちろん何かあったらすぐに取り出すつもりだ。


 入れ替えるときに偶然できた魔法の靴(無限)っていうのが、鑑定スキルで見られたら怪しいところ。でもまあ、そういう珍品もあるんだろうとギリギリ見逃されるレベルなはず。


【互換】スキルで見た目にしても変えられるのがわかったので、早速イメージチェンジしてみた。目を指で吊り上げてから吊り上がった目→釣り目に変換したり、血を髪につけてから赤色が付着した髪→赤髪に置き換えたりと、自分なりに工夫したつもりだ。


「クルスさん、なんか見た目のキャラが凄く変わってますよ⁉」


「そういうユイもね……」


「似合ってますか? へへっ……」


 容姿を簡単に説明すると、僕は気が弱そうな感じからいかにも気が強そうな雰囲気になり、ユイはというと天然な小動物タイプからの切れ長の目の凛々しさが漂う女性になった感じだ。






 オルトン村からしばらく歩いたところで、僕たちは関所に差し掛かる。そこで屈強そうな兵士に呼び止められた。


「おい、そこの二人組、待て。冒険者のような恰好だが、それならギルドカードを出しなさい」


「あ、はい」


 それについては何度も確認したので大丈夫なはず……。僕は内心ドキドキしつつ、ユイとともにギルドカードを兵士に提出した。


「……」


 兵士は気難しそうな顔で僕とユイのカードを交互に見たのち、うなずいて返してくれた。


「うむ、問題ないな……っと、そうだ。お前たちにも一応注意喚起をしておこう。オルトン村から、凶悪犯がここへ向かっているらしい」


「きょ、凶悪犯……⁉」


「そうだ。弓と棍棒を持った凶悪犯で、通り魔を繰り返しているらしいから気をつけるんだ」


「は、はい」


「怖いですね」


「まあ、そう怖がることはない。そんなやつら、ここに来たとしても私がなんとかしてやるから大丈夫だ。私は門番としてキャリアがあるのだからな」


「……」


 ここにいるのがその二人組なだけに、僕はユイと気まずそうな顔を見合わせる。


 それにしても、召喚士のガリュウのやることには本当に腹が立つ。散々悪さをしておいて僕らを通り魔だなんてよく言えたもんだ。盗人猛々しいとはこのことだね。


「ん、どうした? 早く通らないか」


「あ、はい!」


 兵士に促される格好で僕らは関所の門を潜り抜け、その場を早歩きで去った。


 自分たちが姿を変化させてるのもあってか、誰かがあとをつけてきている気配は今のところない。


 関所からしばらく歩いたのち、ユイが酷く疲れた様子で座り込む。その気持ち、凄くわかるなあ。


「――ふう……。クルスさん、心臓に悪かったですね。もう大丈夫でしょうか……?」


「今のところはね。でも、油断大敵だよ」


「は、はい……」


 なんせ、右列の中には隠蔽能力に長けたスキルを持ってるやつがいるかもしれないんだ。そう思うと油断はできない。オルトン村には大したことのないスキル持ちばかりいたけど、逆に言えば当たりスキル持ちはどこか別の場所にいるだろうってこと。


 ガリュウが右列の中でも特に有能なのを呼び戻して、僕たちを追跡させる可能性だってある。


 そんな事情もあって、僕とユイは次の町までなるべく急ぐことにした。


 あ、そうだ。村の外れにぽつぽつと家が立ってるのが見えるから、そこの住人から次の町までどれくらいかかるのか聞いてみよう。


 もちろん、その前に人柄を調べるのを忘れない。下手したら危害を加えられる可能性もあるわけだし。うーん……今のところめぼしい人がいないなあ。


 ん、なんか一軒だけ凄く離れてるところがある。あそこで聞いてみるか。



「――は、二十日……⁉」


「ああ、そうさ。それくらい日数を跨いで歩けば、オルトン村に最も近いクラインの町が見えてくるだろうさ。もちろん、あんたが目指してるっていうエルフの国へも近づくよ」


 ぽつりとある一軒家前、人柄Aのおばあさんに道を尋ねたらそう返ってきた。ほかの人たちはみんなEとかDばかりだったので彼女に聞いたってわけだ。


 なので嘘はついてないと思うけど、それにしても歩いて二十日もかかるって……。


 僕は【互換】スキルで知力を100にして、クラインの町までの距離を計算してみる。すると、徒歩で二十日かかるというのは距離にして大体1000キロくらいだと判明した。


「はあぁ……。クルスさん、これから私たち、いっぱい歩くことになりそうですねえ」


「だね……」


 1000キロも歩かないといけないなんて、ただでさえ心が折れかかってそうなユイには言えない……。


 それでも、エルフの国を目指す上でクラインの町はオルトン村から最も近い場所にある町なんだそうだ。だからそこまで頑張って歩くしかなさそうだね。食料はある程度魔法の袋に入れてあるから持つと思うし。


 俊敏値100にして、ユイを引っ張って一気に走ることも考えた。ただ、罠とか仕掛けられている可能性を考えたら慎重に行動せざるを得ない。


 あんまり時間がかかりすぎると包囲網を敷かれちゃいそうだから、それはそれで凄く困る。


「あ……」


「クルスさん、どうしました?」


「そうだ。山道を進めば最短でいけるんじゃないかな?」


「な、なるほど! クルスさん賢いです!」


 念のためにさっきのおばあさんに聞いてみると、それなら歩き続ければ七日くらいでクラインの町へ着けるだろうって。でも、山道は険しい上に強力なモンスターや山賊が出るからやめといたほうがいいよとのこと。


 それでも僕たちは行きたいと伝えると、山に詳しいおばあさんは地図を書いてくれた。ありがたい。しかも食べられるキノコまで分けてもらった。さすが人柄A。頼りになるなあ。


 ただ、調子に乗ってエルフの国についても質問したら、おばあさんですらも口を噤んでしまった。箝口令でも出されているかのようだ。


 もしかしたら、それを具体的に言うことでエルフと内通していると疑われ、兵士に連行される恐れがあるのかもしれない。

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