チートスキルの恋愛事情〜絶対防御ちゃんは絶対貫通くんに貫かれたい〜

あゆう

第1話 絶対防御ちゃんは絶対貫通君に貫かれたい

──ここは【スキル】が住む街。その片隅で物語は始まる。


━━━━


 パリィィン! という音と共に男が吹き飛び、地面にみっともなく転がる。

 その男を蔑むような目で見下ろすのは、少し露出過多な格好をした気の強そうな少女。


「絶対貫通マジうざ」


 少女はその一言だけを呟くと、男に背を向けて歩き出す。


「パ、パリィちゃん! ま、待って!」


 そのうしろ姿を見た男は飛び起き、少女の名前を呼ぶと、少女は心底嫌そうに振り返り、冷たい声を出す。


「なに? あーしにはもう喋ることなんて無いんですけど」

「教えてくれよ! なんで俺じゃダメなんだ!?」


 冷たくあしらう少女に対してひるむことなく詰め寄る男。

 街中なので周りには人が集まってきているが、男はそんなことも気にしていない様子だった。


「はぁ……いい? あーしはパリィなの。あーしのことを覚える人はみーんな血の滲むような努力してんの。なのになに? 絶対貫通? そんな努力を踏みにじって楽に攻撃当てようなんてふざけんじゃないわよ!」

「で、でも俺は任意発動型だから、発動さえさせなければ……」

「あんたさぁ、自分を使ったマスターのこと思い出してみたら? みーんな「あれ? もしかしてやっちゃった?」って言ってるじゃない」

「うぐっ……」

「それにあーし、カウンターさんが好きなんだよね。じゃ、そゆことで」

「そ、そんなぁ……」


 男は項垂れ、少女はそんな男を睨みつけるとどこかへと去ってしまった。


「よう絶対貫通。またフラれたなぁ?」

「……威圧か」


 しゃがみ込んでいた絶対貫通の肩に手を置き、ニヤニヤと笑う威圧と呼ばれたガタイのいい男。

 その後ろには麻痺針と毒息の二人の男が立ち、威圧と同じように絶対貫通を見下ろしながらニヤついていた。


「いい加減パリィちゃんは諦めろって。まぁ、可愛いのは認めるけどよ? あの気の強さはヘタレのお前にゃ手に負えねぇよ?」

「うるせぇな。別に俺が誰を好きになろうがお前らには関係ないだろ」

「おー怖い怖い。穴開けられちまうぜ」

「ちっ」


 ヘタレとバカにされ、更にからかわれた絶対貫通は威圧の手を振り払い立ち上がり、そのままその場から立ち去ろうとするが、再び威圧から絶対貫通へと声がかけられた。


「お前にはもっとお似合いの奴がいるだろう? ほら、さっきからずっとお前のこと見つめてる奴がよ」

「は? 誰だよ……って、アイツか」


 絶対貫通が威圧に言われた方を向くと、一人の少女が近くの建物の陰からこちらを見つめている。


「かんちゃん……」


 絶対貫通の事をかんちゃんと呼ぶその少女の名前は絶対防御。絶対貫通とは幼馴染である。

 着ているのは色味のない地味なワンピースだが、その上からでもわかるスタイルの良さが妙な色気を出している。

 しかし髪は跳ねてボサボサ。オシャレのつもりで付けている盾の形のヘアピンで前髪を止めてはいるが、他の人からは片目だけしか見えていなかった。


「かんちゃんって呼ぶなって前から言ってるだろ」

「だってぇ……」

「泣くなよそんくらいで!」

「だってぇ……かんちゃんはかんちゃんなんだもん……」


 絶対防御はそう言われた途端に目尻に涙を溜め、ウルウルと絶対貫通を見上げてくる。

 それを見ていた威圧は不思議そうな顔で絶対貫通に問いかけた。


「お前さぁ、なんでそんなにアディに冷たいんだよ」


 もっともな疑問である。

 しかし、絶対貫通はそんな疑問に声を大にして答えた。


「それだよ! お前が今言ったソレだよ! 俺は【絶対貫通ぜったいかんつう】なのに、なんでこいつの名前は【絶対防御】って書いて【アブソリュートディフェンス】って読むんだよ! 同じ絶対系なんだぜ? なんだそれ。カッコよすぎだろ。しかも愛称もアディって可愛いすぎんだろ。ズルくね? なぁズルくね? ズールーいーだーろー!!!」

「お、おい、落ち着けって」

「落ち着けるかぁ! 俺も……俺もそんなカッコイイ読み方が欲しかったぁ……ぐすん」

「なんかゴメン……」


 強面の威圧も謝ってしまう程にしょーもない理由だった。


「かんちゃん今可愛いって……私の事可愛いって言ったぁ……」


 そして絶対防御アブソリュートディフェンス──アディは赤くなった顔をあげて絶対貫通に向かって叫んだ。


「私、かんちゃんの名前カッコイイと思うよ! 貫通ってなんか強そうだし! そ、それに……」


「……なんだよ」


「絶対絶対ぜ〜ったい! これから先、私のことを貫けるのはかんちゃんだけだもん!」


 アディが顔を真っ赤にしてそう言った瞬間、辺りが沈黙に包まれた。





[あとがき]

ファンタジー書くの苦手だけどラブコメ風味で頑張ってます。

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