〜地下迷宮レストラン〜 忘却編


〜地下迷宮レストラン〜 忘却編


「あの、店長!すみません!」


先々週から入ったウェイターは、青ざめたような表情をしている。


「どうしたの?料理を運んで戻ってきてくれたのよね?」


店長は、新入りのウェイターに、微笑みとともに答えた。


「それが、食器を下げて来たのですが、テーブルにタブレットを忘れてきてしまって、どこに置いたのか、忘れてしまって。」


「えっと、落ち着いて。大丈夫よ。確か、料理を運んでくれたのは、19階の3区の212のテーブルよね。」


店長は、料理場に設置してあるディスプレイを見ながらドギマギしているウェイターに言った。


「そうなんですが、戻る途中で、皿を下げようとして、3卓回ってきて。」


「その途中で、タブレットをどこかに置き忘れたのね。」


「そうなんです。申し訳ありません!」

ウェイターは、深々と頭を下げた。


「大丈夫よ。食器下げたテーブルは、19階?」

と冷静な店長。


「それが、上に登りながら、お客さんが帰られたテーブルを探しながらでしたので。わからなくて。」

バツが悪そうなウェイターは続けた。

「たぶん、18階、17階、16階辺りかと思います。」



「わかったわ!あとで、探しましょう。」

と明るい表情の店長。


「すみません。」

言葉に詰まるウェイター。


「こめんね。あのね。今日、シフトが終わったら、予定ある?」


突然の質問に、驚くウェイター。

「ど、どうしてですか?」


「今日はシフトは、クローズまででしょ。店が閉まるまでに見つからなかったらね、店のきまりでタブレットが見つかるまで、一緒に探してもらうことになるからよ。」


「そ、そうなんですか?」

さらに驚くウェイター。


「そうなの。ごめんね。」


配膳を終えて帰ってきたウェトレスに、店長は振り向いて聞いた。


「エリス、あなたが新人の頃、タブレットをテーブルに忘れた時あったじゃない?」


「ありましたね!懐かしいというか、アイタタって思い出ですよ。」

「店長、見つかってから、夜遅くアイスクリームおごってくれたの憶えてますよ!」


「そう、そう。」

目を細めた店長は続けた。

「あの日、どのくらい残業したか、憶えてる?」


ウェトレスは、微笑みながら、

自虐的に答えた。

「確か、2フロアー探して、

残業4時間くらいでした。タブレット探すの結構大変でした。」


店長は、ウェトレスに、

「今日は、シフトはクローズまで?何か予定はある?」と、

いたずらっぽい目をしながら尋ねた。


ウェトレスは、急に真剣な顔になった。














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