第2話 初体験早くない!?

 俺の誕生日に姉ちゃんが用意したプレゼント。それは将来に向け、女に慣れてもらう事だった。


そのために姉ちゃんは、家に友達の玲奈れいなさんを呼んだ。どう見ても清楚系なのに、まさかの〇ッチであることがわかり俺は意気消沈した…。


次は“彼女”を部屋に入れる予行練習をすることに。俺は姉ちゃんと玲奈さんを、部屋に招き入れる…。



 「ここが貴弘たかひろ君の部屋か~♪」

玲奈さんは部屋をキョロキョロしている。


「意外にキレイだし、イカ臭くないじゃん」

姉ちゃんがつぶやく。


「意外って何だよ? いくらなんでも失礼だろ!」


「ごめんごめん。でも、イカ臭い部屋も悪くないよね? 玲奈?」


「うん。あのニオイ嗅ぐとテンション上がるよね~♪」


「わかる!」


俺にはサッパリわからないぞ。もしかして女全員そうなの?



 「あれ? 貴弘君、ゲーム中だったんだ?」

玲奈さんがテレビを観て指摘した。


「まぁ…」


今、テレビにはゲームのポーズ画面が映っている。トイレ休憩するためにそうしたんだが、姉ちゃんのプレゼントのせいで長い間放置してしまった。


「今から続きをして良いよ。安心して、邪魔しないから」


「貴弘。あたし達の前でカッコいいところ見せなさい!」


無茶言わないでくれ、見られながらできるかよ。俺はゲーム機の電源を切る。直前にオートセーブ済みだし、まったく困らない。


「このヘタレ!」

姉ちゃんは明らかに不満そうだ。


「男の子は、情けないところを見せたくないよね」


別に下手じゃないと思うが根拠がないので、玲奈さんにツッコむことはしなかった。



 「ねぇ綾。貴弘君に女に慣れてもらうのは聴いてるけど、今後どこまでして良いの?」


女慣れの話って、今日限りだろ? 誕生日プレゼントの一環なんだから。


「〇ックスしなければ良いよ。それは本命の彼女にとっておくべきだし」


「そうね♪」


…このままだと訊くタイミングがなくなる。今の内に切り出さないと!


「姉ちゃん。なんてないだろ? 今日で終わるんだから」


「はぁ…」

深いため息をつく姉ちゃん。


「あんた、1日で女に慣れると思ってるの? 玲奈にまともな挨拶すらできなかったのに?」


「貴弘君。私はいつまでも付き合うから、頑張っていこうね♪」

玲奈さんはそう言って、俺の手を握る。


女の手ってこんなにスベスベなのかよ。男とは別次元だぞ。


「え…あの…その…」


「手を握られた程度でパニクってんの? 今時中学生でもそこまでひどくないって!」


姉ちゃんの話が本当なら、今の中学生は進んでるな…。


「私が中学生の時、“初体験”の話をあちこちで聴いたから綾の言ってることは間違ってないと思うよ。私はもっと早く済ませたけど♪」


「…は?」

中学生でも早いと思うのに、さらに早いだと?


「私、小6で済ませちゃった♪」


「あたしは中2」


衝撃の事実を知り、頭がぼーっとする。違う世界の話を聴いてるみたいだ。


「貴弘。あんたのクラスの女の大半はと思ったほうが良いよ。高2で処女は少数派だと思うな~」


「私もそう思う。片手で数えられるぐらいかな」


この2人が本当のことを言っているとは限らないが、嘘を付く理由がない。真に受けず、頭の片隅に置くぐらいで良いか。



 突然、聞き慣れない着信音が部屋に響いた。その音を聞いた玲奈さんは携帯を観る。


「…浩平に誘われたから、今日は帰ろうかな。貴弘君も疲れたでしょ?」


「はい…」

終始振り回されたな…。メンタルのダメージが大きい。


「あたしも暇そうな〇フレに声かけるわ」

姉ちゃんも携帯を操作し始める。


「貴弘君。連絡先を交換しようよ♪」


「え…?」

何でそんな話になる?


「私は君の先生みたいなものだからね。綾に訊きにくいことは私に訊いて♪」


「でも、さっき彼氏に誘われたんですよね? 交換して良いんですか?」

変なトラブルに巻き込まれるのは勘弁だ。


「浩平は同じ大学生で〇フレだよ? 彼氏じゃないから心配しないで♪」


「そ…そうですか」


〇ッチの考えることはよくわからないが、心配無用なら交換しようかな。……俺と玲奈さんは連絡先を交換した。


「もし女の友達が欲しかったら、私の妹を紹介してあげるからね♪」


「妹…ですか?」


「うん。貴弘君と同い年。私と違って真面目だから、仲良くなれるかもよ?」


〇ッチの妹なのに〇ッチじゃないのか…。似てない姉妹もいるんだな。


「大輔がつかまった~!!」

携帯を操作していた姉ちゃんが喜びの雄たけびをあげる。


「貴弘。あたしはこのまま出かけるからよろしく」


「バイバイ♪ 貴弘君♪」


俺に小さく手を振った玲奈さんは、姉ちゃんと共に部屋を出て行った。



 「疲れた~」

1人になってすぐ独り言を漏らし、俺はベッドにダイブする。


〇ッチとはいえ、玲奈さんは家族以外で初めて連絡先を交換した人になる。とても優しそうで良い人だし、俺もなるべく力になりたいな…。


…ヤバい、疲れがどっと来た。俺は睡魔に勝てず目を閉じた。

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