第8話(3)ツインアタック連発

「こ、これは……!」


 二つ増えたゲートから、それぞれの影が現れる。深海が戸惑う。


「こちらからは、火の玉のような影が!」


「あちらからは、大型トカゲのような影が!」


 葉と雪が戸惑いながら報告する。


「ブオオン!」


「おっと! まだバイクの影もいくつか残っていますね~」


 天空が告げる。


「危険度……B!」


「Cではないのですか⁉」


 通信手に対し、深海が問う。


「単独ではCですが、このように集まるのならば……危険度は上昇します!」


「ふむ、そうなりますか……」


「はい!」


「……他の地点は?」


「危険度はそこまででもないですが、イレギュラーの数が多く……」


「すぐの応援は期待できないということですね……」


「そうなります……」


「了解しました。こちらでなんとかします」


「お願いします!」


 通信が切れる。


「さて……」


「深海隊長、どうしましょうか⁉」


「イレギュラーは三方向からこちらに迫っています!」


「やはり各個撃破でしょうか⁉」


 雪と葉が指示を仰ぐ。


「……」


 深海が目を閉じる。


「それが一番分かりやすいんじゃないの~?」


 天空が腕をぶんぶんと振り回す。


「ふむ……」


 目を開いた深海が頷く。それを見て、天空が走り出そうとする。


「よっしゃあ!」


「雷電隊員、ストップ!」


「⁉ ま、また⁉」


 天空が動きを止める。


「……ツインアタックの使用を許可します」


「!」


「まずは、前方から来るバイクの影に! 佐々美隊員、雷電隊員!」


「はい!」


「は~い♪」


「お願いします!」


「はっ! 掛けまくも畏き……」


「えっと、佐々美隊員、何やるか聞いてないんですけど……」


「………」


「あ、聞いてないですね、分かりました」


「恐み恐み申す!」


「うおっ⁉」


 天空が体ごと飛ばされ、バイクの影の群れに落下する。


「ブオオン⁉」


 バイクの影たちが霧消する。葉が呟く。


「『神之如雷』……」


「雷電隊員を雷化させるとは……まさに神の所業」


 深海が頷く。


「あらかじめ言っておいて欲しかったな、神様……」


 天空が後頭部をポリポリと搔きながら、素早く戻ってくる。


「次は、東側から迫ってくるトカゲの影の集団です! 宙山隊員! 雷電隊員!」


「了解!」


「ほ~い♪」


「重ね重ね……非常時なのでご勘弁を!」


「ギエッ!」


 雪が右手を振ると、ダムの水がいくらかトカゲの影にかかる。


「雪っぺ! かき消すには水量が足りないんじゃないの⁉」


「あんまり大量には使えないでしょう⁉」


 天空に対し、雪が言い返す。


「それはそうかもしれないけどさ!」


「これで良いのよ!」


「へっ⁉」


 雪が左手を天空の頭上で振る。


「よし!」


「何が⁉」


 天空が首を傾げる。


「あっちに向かって拳を叩きつけて!」


「おおっ!」


「ギエエッ⁉」


 天空が拳を地面を叩きつけると、電気が走り、感電したトカゲの影たちが霧消する。


「『雷水魔法』です……」


「ふむ、水に濡れさせて感電しやすくしたのですね……」


 深海が感心する。


「電気を帯びるのって変な感じだな……」


 天空がくすぐったそうにする。


「西側から向かってくる、火の玉の集団です! 佐々美隊員! 宙山隊員!」


「はっ!」


「了解です!」


 葉と雪が前に進み出る。


「宙山隊員!」


「ええ!」


「ボアアッ⁉」


 葉が右手を突き出し、雪が左手を突き出す。二人は手を絡ませるようにすると、強風が吹き荒れ、火の玉は吹き消されるように霧消する。


「名付けて……」


「『神魔融合』です!」


「これほどの強風を吹かすとは……もはや天変地異レベル……」


 深海が感嘆とする。


「二人は怒らせないようにしよう……」


 天空が小声で呟く。


「ご注意を! ゲートはどれもまだ消えていません! さらに増援の可能性が!」


「⁉」


 通信が再び入る。通信手の言葉通り、まだまだ影が飛び出してくる。


「くっ……さすがに数が多すぎる……」


「お困りかな~?」


「間に合ったようだな……合同訓練予定の場所に近いのは幸運だったな……」


「‼」


 深海たちが視線を向けると、夜塚率いる石川隊と三丸率いる福井隊が駆け付けていた。


「応援に来たよ~」


「深海隊長! 号令を!」


「ええ、三隊合同訓練です!」


 深海が声を上げる。石川隊、富山隊、福井隊、三隊初の揃い踏みである。

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