第17話 PHASE2 その4 悩みぬいて

「実は、冬馬くんと逢った時の前から私にお見合い話があったの。

興味ないからずっと断ってたんだけどね。

でもね、冬馬くんの家に泊まっている間にね、勝手に話が進んでいたの。

私は嫌だって言ってたのに。 ホント、酷い話よね。」

「確かにな…」

これに関しては、流石に冬馬も同情した。


「相手側が私を気に入ったって事でね、

一度顔合わせしたいとの申し出があったみたいなの。

私はもう好きな人がいるからダメと言っているのに

全然話を聞いてもらえなくて。

冬馬くんの所に泊まった時も絶対騙されているって決めつけられて……。

あれからずっと父親と言い争いしてたんだ。

だからあれから連絡出来なかったの」


あまり見たくないが、夏子は思いつめたような顔をしていた。

「結局、お見合いなんか関係ないって言って、家、飛び出してきちゃった。

悪いけど、暫く泊めてよね」

少し考えて、冬馬は口を開いた。


「泊めるのは別に構わない。でも一つ約束してほしい。

夏子は両親と仲直りをする事。自分だけじゃ無理なら、

俺が夏子の家に行って両親と話してもいい」


「何で、そこまでしようとするの? うちの親が勝手にやっていることなのに。

何でそこまで首を突っ込むのよ?」


「夏子には自分みたいに両親に絶望を持ってもらいたくないから……」

冬馬の言葉には切実さを感じ取れた。


「何で、そんな事言うのよ……。グスン」

夏子の表情が歪む。そして泣き出してしまった。

そのまま冬馬に抱きつくと、何度も謝ったのだった。


(ずっと我慢してたのか?)

冬馬はそう思うと優しく頭を撫でてあげたのだった。


「わかった。俺が一緒に行くから、ちゃんと両親に話すんだ。いいな?」

「うん……」

夏子は泣きながらも頷いたのだった……。


2人で抱き合っていると、やがてどちらともなくキスをした。

それは深く濃厚なものだった……。

お互い舌を入れて絡め合い、唾液を交換し合った。それからゆっくりと唇を離す。

「冬馬くん……。ありがとう、私のことを思ってくれて……。嬉しい……」

夏子は涙を流しながら微笑んだのだった……。



それから暫くの間、2人は抱き合っていた。お互いの体温を感じながら……。

そういえば食事をとってなかったので、2人で夕食を食べる事にした。

夏子は食欲が無いとの事だったが、冬馬は無理やり食べさせてあげたのだった。


(後でちゃんと話をしないとな)

そう思いながらも食事を済ませた。その時は黙々と食べて会話はなかった。


「ごちそうさま」

夏子は少し元気を取り戻したようだ。

その後は、二人でテレビを見たり雑談をしたりしていた。

そして、夜も更けてきた頃だった。

「ねぇ…。」

夏子は冬馬に声をかけた。

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