第7話 加奈子の不都合
俺は、自分の家の近くに来た所で加奈子のお母さんに会った。
「あら、雄二君。今日も加奈子と一緒じゃないの?」
「はい、約束していません。明日も会いません」
聞かれそうなので先に言っておいた。少し驚いた顔をしていたけど。
「雄二君、少しお話出来ない。雄二君の事、加奈子から聞いても埒が明かないのよ。私とお父さんは雄二君とうちの加奈子が仲良くしてくれるといいなと思っているの。あなたのお父さんの思いもあるわ」
「俺の父さんとの思い?」
「少しでいいの。うちでお話聞けないかな?」
「分かりました」
父さんの思いって?
深山家に入ると加奈子のお父さんも居た。俺はリビングに通された後、お母さんがお茶を持ってきたところで、お父さんが口を開いた。
「雄二君、最近、加奈子から君と会っていないと聞いている。事情を聞くと連絡先もブロックされ、学校でも話せない状況だと言っていた。理由を聞いても、私も知らないと言っている。何か加奈子にいけない所があったのか?」
「その前に聞きたいのですが、俺の父さんの思いとは、何ですか?」
「それか。
私と君のお父さんとは、ここに越してからの付き合いでな。まだ加奈子も君も生まれる前から、懇意にして貰っていた。
うちの母さんと雄二君のお母さんが同時に妊娠した時、二人共初めての事も有って色々相談し合いながら二人を産んだんだ。
そして加奈子と雄二君が生まれた時は、高槻さんからもしこの二人が結婚したら親戚にもなりますねというってくれた位、付き合いは深くなっていた。
だけど、お互いどうなるかなんて分からない。だからどちらの家族に万一が有っても助け合っていこうと約束したんだ。
だから、君のご両親と妹さんが亡くなったと聞いた時、俺が君を引き取ろうと思ったが、親戚筋が居るというので口出しをしなかった。
しかし、半年もしないうちに君が帰って来た時は、見る事も出来ない位憔悴しきっていた。可哀想な状況だった。
だから事故の時に知り合った前田弁護士に頼んで君を助けて貰った。そして私の養子に出来ないか頼んだ。
もちろん、君が無一文で生活に困るだろうからという気持ちからだ。
後からだが、高槻さんが君に残した遺産が多額の為、君を養子にするのは世間的に色々ハードルが高いという事も有って、君を養子にするのは止めた。
だが、それなら加奈子が、落ち込んでしまった君の心を支えられればいいと思ったんだよ。
もちろん、未来永劫続くとは思わないけど…。そこに今回の件だ。私としては君が加奈子を拒絶した理由を知りたくてね。
加奈子の言う通り、君に好きな子が出来たならそれでもいいと思っている。君と加奈子がどこまで進んでいるのか知らないが、それは仕方ない事だ。
だけど、それでも一方的に連絡先をブロックするならそれなりの理由があるのではないかと思ってね」
そういう事か。
「まず始めにですが。父さん達と懇意にして頂いていた事ありがとうございます。次にですが、加奈子とは手を繋いだ程度です。キスも結婚してからと言われていたので。
自分でもどうしようも無かった俺の心を加奈子は言葉や優しさで、少しずつですが、氷が解ける様に開いてくれました。
そして彼女は清廉な心を持つ人だと思ったので、この人ならと考えた事も有ります」
「そこまで、思ってくれているなら、なぜ連絡先をブロックしたんだ?」
「これです」
俺は、加奈子の両親に見せるとは思わなかったけど仕方ない。俺は、二人がラブホに出入りした動画とビルの隙間でしていた動画を見せた。二番目の動画を見せた時、お母さんの顔色は青ざめていた。
「ま、ま、まさか、あの子がこんな事を」
「お母さん落着きなさい。雄二君、申し訳ない。加奈子は君の心を踏みにじる様な事をしていたようだ。加奈子の親として謝る。この通りだ」
ソファに座りながらだが、加奈子のご両親は思い切り頭を下げた。
「頭を上げて下さい。ご両親が謝る事ではありません。俺も加奈子がこんな事をする子だとは思っても居なかったので。
とにかくこういう理由なので。もう口も聞きたく無いんです。理由も聞きたくありません。それだけです。もう失礼して良いですか」
加奈子の両親は俺を呼び止めてから大分時間が経った事を忘れていたようだ。俺は直ぐに深山家を出た。万一加奈子と鉢合わせでもしたら冗談じゃない。
私は、隆と会っていた。とても楽しい時間を今日も過ごさせてくれた。もう隆の赤ちゃんを産んでもいいと思う位。
彼はイケメンで優しい。いつも私を大切にしてくれる。洋服を買ってくれたり、美味しいご飯を食べたり、ラブホでは私を夢の世界に連れて行ってくれる。最高の彼だ。大学に行くより彼の妻になった方がいいんじゃないかしら。
大学なんて就職する為の便宜なんだし、大学で隆以上の男が見つかるとは思えない。今度両親に会って貰おうかな。
とても気分よく、午後八時に家に帰った。このままお風呂に入って寝よう。明日も隆と会うから。
「ただいま」
玄関を開けて中に入ろうとした時、お父さんとお母さんが仁王立ちしていた。
俺は、深山家に寄ったおかげで遅くなった夕食を摂ると、シャワーを浴びて体を拭いてから冷蔵庫から缶ジュースを一本取り出して二階の自分の部屋に行った。
カーテンを閉じようとして外を見た時加奈子が家を飛び出していく姿が有った。
俺にはどうでもいい事だ。
―――――
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
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