他人に被害を与えたら、その命。消えてもいいですよね?

20✖︎✖︎年の日本が舞台のホラー小説です。
65歳以上の高齢者が『老害』だと認定されたら、銃殺されてしまう社会。
老人を告発するのは、市民。
ネットで投票して、老害認定をするのも市民。
つまり名前も顔も出さない市民たちが、老人の命を裁くのです。

匿名のネット住民が人を死に追いやった事件を知る人は多いでしょう。
匿名であることの無責任さ。軽率さ。憂さ晴らし。いい加減な盛りあがり。
人間の持つ闇(病み)が、この作品にもふんだんに描かれています。

人は誰でも老いる。いつかは65歳を迎える。
わかってはいても、「審判」というお祭りの前には霞んでしまうのかもしれません。
また、すべての人間が理性ある言動を取れるわけではありません。
人の不幸が好きな人もいるでしょう。

この作品はまだ始まったばかり。
老人対策法が施行された日本社会の向かっていく先が、歪みなのか、または正しいものを取り戻すためなのか、それとも……?
先の展開は読めませんが、次々に人が死んでいく予感がします。

人の命とは?
老害とは?
正義とは?
匿名社会のあり方とは?

疑問を自身に問いながら、ダークな世界をお楽しみください。

その他のおすすめレビュー

遊井そわ香さんの他のおすすめレビュー757