第7話(3)対幹部怪人戦

 猛牛の頭をした怪人が現れる。残っていた戦闘員たちが歓声を上げる。


「バッファロー怪人様!」


「バッファロー怪人様が来てくれた!」


「お前ら、こんな見たことも聞いたこともない新米戦隊に何を手こずっている⁉」


「そ、それがこいつら……案外やります!」


「言い訳はいい! こうなったらこの俺自らが、鉄槌を下してやる!」


 バッファロー怪人が鉄の槌を振り回し、エレクトロニックフォースを威嚇する。


「強敵のようだね……」


「そうどすなあ……まとってはるオーラがもうちゃいますわ~」


 グレーの言葉にパープルが頷く。オレンジがハッとなって声をかける。


「シアン! ブラウン! うかつに飛び込むな‼」


「うおおっ!」


「やったるで!」


 シアンとブラウンがバッファロー怪人に向かっていく。


「ちょ、ちょっと待て!」


 オレンジが慌てる。


「無理な相談や、オレンジ! ここで退いたら切り込み隊長の名がすたるってもんや!」


「そんなこといつ決まった⁉」


「今!」


「今⁉」


 ブラウンの答えにオレンジが唖然とする。


「とはいえ、ただのキックでは効かなそうごっつい相手やな……うん? なんや、ちょうどええ感じのボールが転がってきた⁉」


 走るブラウンの側にサッカーボールくらいの大きさの茶色いボールが転がってくる。


「ご説明します!」


 通信機に真白の声が入る。


「真白さん⁉」


「ブラウンさん、あなたは強く念じたりすれば、ボールなどを呼び出すことが出来ます!」


「そうなんですか⁉」


「ええ! アップデートが間に合いました!」


「アプデとかあんの⁉ まあ、なんにせよありがたいわ!」


「む?」


 ブラウンが足元のボールを巧みに浮かせて、ボレーシュートを放つ。


「『エキサイティングシュート』!」


「うおっ⁉」


 ボールの直撃を食らい、バッファロー怪人がややのけ反る。


「どや! 少しは効いたやろ⁉」


「こうなったらシアン、畳みかけるんだ!」


 グレーが指示を出す。


「オッケー!」


 シアンが巧みに相手の懐に入り込む。


「むっ⁉」


「そこだ! シアン!」


 オレンジが声を上げる。


「うん! 『弱パンチ』!」


「!」


「はあっ⁉」


「『弱パンチ』!」


「くっ……」


「『弱パ……!」


「うっとうしいわ!」


「うわっ⁉」


「どはっ⁉」


 バッファロー怪人が鉄槌を振り回す。それによってシアンが吹き飛ばされ、ブラウンに当たって二人は倒れ込む。


「ご、ごめん、ブラウン……」


「い、いや……シアン、大丈夫か? あんなごっつい鉄槌食らって……」


「な、なんとか、直前でガードが間に合ったから……」


「ガ、ガードしたんか⁉ は、反射神経ええな……」


「シアン! グレーは畳みかけろと言っただろ! なんだ、連続弱パンチって⁉」


 オレンジが叫ぶ。


「様子見だよ!」


「よ、様子見⁉」


「そこからコンボに繋げようと思ったんだけど……」


「そんな余裕を見せている場合か⁉」


「舐めプをしたつもりはないよ! いきなりの大技はそうそう当たらないものだよ!」


「む、むう……」


「一応、それなりに筋は通ってますなあ~」


 オレンジの横でパープルが感心する。


「何をごちゃごちゃ言っている! 今度はこっちから行くぞ!」


「‼」


 バッファロー怪人が倒れているシアンたちに迫る。


「マズい! オレンジ!」


「ああ!」


 グレーの指示を受け、オレンジが銃を撃つ。銃弾はバッファロー怪人に当たる。


「! ふん……」


 バッファロー怪人は一瞬動きを止めるが、再び歩き出す。


「ほとんど効いていない⁉ なんてぶ厚い皮だ!」


 オレンジが驚く。


「ほんならわたくしが!」


 パープルが黄色の玉を4つ合わせる。バッファロー怪人に大きな雷が落ちる。


「うおっ⁉」


「倍々の雷撃のお味はいかがどす?」


「……マズいな。耐えられないほどではないが……」


「‼ 耐えはった⁉」


 パープルも驚く。


「ふ、ふん……」


「! 歩みは鈍くなっている! まったく効いていないということはないよ、皆!」


 バッファロー怪人の様子を見たグレーが声をかける。


「ふん! だからといってなんだというのだ……!」


 シアンたちに接近したバッファロー怪人が鉄槌を振りかざす。


「しまっ……!」


「ア、アカン!」


 シアンとブラウンの回避行動が遅れる。


「終わりだ!」


「⁉ あ、あれ……?」


「ふう、なんとか間に合ったようだね……」


 グレーが鞭を巧みにシアンとブラウンの体に巻き付け、高台の上に引き上げてみせた。


「あ、ありがとう! グレー!」


「お礼は後だよ、それよりも決定的な攻撃が欲しいね……」


「それならばこれを使って下さい!」


「‼」


 真白の声がしたかと思うと五人の上から大きなキャノン砲が降ってくる。五人はそれを慌てて受け止める。


「こ、これは……⁉」


「キャノン砲です。無料ダウンロードコンテンツです!」


「ちょっと待て! 有料のもあんのかい⁉」


 ブラウンが突っ込む。


「と、とにかく発射だ! オレンジ、指示を!」


 グレーがオレンジに声をかける。オレンジが真ん中に立つ。


「皆、それぞれの持ち手を掴め!」


 四人が二人ずつに分かれ、キャノン砲の左右についている持ち手を掴む。


「持ったで!」


「砲口を斜め後ろのバッファロー怪人に向けろ! ……ぶっつけにもほどがあるが……皆、かなりの衝撃が予想される。反動には注意しろ!」


「了解!」


「よし……3、2、1、『エレクトロニックキャノン』発射!」


「ぐおっ‼」


 バッファロー怪人が砲撃を食らって、後方に吹き飛ばされる。シアンが声を上げる。


「や、やったあ!」


「ふふっ、エレクトロニックキャノンどすか……」


 パープルが笑う。オレンジが照れる。


「な、なんとなく言った方は良いかと思っただけだ……」


「……うおおっ!」


「ええっ⁉」


 バッファロー怪人が咆哮とともに巨大化した。シアンたちが驚く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る