災厄殺しの剣姫

代永 並木

第1話

「これが……龍……勝てないとは分かっていた……けど……ここまで通じないなんて……」


龍を前にしてBランク冒険者であった少女は刃の砕けた剣を地を落とす

戦った中には有名な実力者も居たが傷1つ付けることも出来ずに皆地に伏した

戦いにこそ参加したが討伐は勿論時間稼ぎすら叶わなかった

彼女は村が焼かれ滅ぼされる様を見ている事しか出来なかった

後にこの事件は災厄の一体に数えられる龍の起こした最初の悲劇として世界各国で語り継がれる事となった


「この国で有数の実力を誇る冒険者達が亡くなってしまった今Bランク冒険者である貴女にまで辞められたら国の防衛にも影響が出かねません!考え直しをキッカさん」


龍の事件から数日後少女はギルドへ冒険者登録の解除を申請しに来ていた

周りの冒険者からの視線が痛い

唯一の生存者という事もあって戦わずに逃げたなどと影で言われていた

中には同情する声もあったが否定的な言葉の方が多い

龍によってAランク冒険者を含む冒険者ギルドに所属する有数の実力者を失った

Bランク以上の冒険者は国が危険に陥った際や陥る危険性がある場合は戦闘参加する事を義務付けられている


「実力者が減ったとはいえ私程度であれば十分居る筈では?」

「いやBランク冒険者はそう多くはありませんよ!それも若くしてBまで上がれた冒険者はその中でもほんのひと握り、貴女はすぐにAランク数年後にはSにすら届きます!」

「買ってくれるのは嬉しいですが……残念ながら私はもう剣を振るうことが出来ません」


新しい剣を持とうとしたが手が震え持つ事すら出来なかった


「……分かりました但し登録の解除は今日から3年間一度も依頼を受けなかった場合解除します。その間の緊急依頼に対する参加も不要です」


一つの紙を取り出して素早く字を書いている

『Bランク冒険者キッカ・アルクティス、緊急依頼の拒否により一時的にCランクへ降格』と書いてある

Cランクに降格した事で緊急依頼を受ける義務が無くなる


「分かりました、今までお世話になりました」

「またのご利用お待ちしております」


冒険者ギルドを後にする

その際知り合いの冒険者に声をかけられたが無視をする

知り合いと言っても仲が良い相手ではないからだ

(比較的に魔獣の出現が少ない村に行こうかな、この国から離れれば私の事を知ってる人はいないし後衛都市側に……)

前衛都市と呼ばれる複数の国とそれらを繋ぐ大きな壁で世界は二分されている

その壁から西は魔王領、東は人間を含む多種族がそれぞれ領地を持っている

長きに渡り魔王軍との戦争をしている為国々を協力しているが国家間の争いは絶えない

後衛都市と言うのは前衛都市を除く他の国々の総称である


「移動手段は商人の護衛は無理だからお金はあるから付いていこう」


馬車の待機場に向かって護衛を雇ってる商人の馬車を探す

荷物用の狭い荷車に乗る事になるが金さえ払えば護衛付きで比較的安全に行ける

最も商人は金目のものを多く持つため盗賊に狙われやすいがそれを加味しても護衛無しよりは心強い


「すみません席は空いてませんか?」


護衛の居る商人の馬車を見つける


「おやおや、丁度一席分空いてますよ~、お客さん運が良いですね!」

「そのようですね」


笑顔で受け答えをして金を差し出す


「見た感じ冒険者の様ですが護衛では無く乗客としてですか?護衛なら受け付けておりますよ?」


キッカは防具や武器を付けていないのに冒険者だと一目で見抜かれた

(流石商人)


「訳あって冒険者を辞めたのでそれに護衛の皆さんのように私は強くないので」

「おや、そうですか……そろそろ出ますのであちらの馬車にお乗り下さい」


指示された馬車に乗ると数人乗っていた

様々な職業の人が乗っている


「出発します」


その合図と共に馬車が動く


少女はこの2年後再び剣を握る

これは少女が災厄の龍を滅ぼし英雄となる物語

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