第10話 一時の平和

「着いたぞ」


「ここは何だ?」


「いいから着いてこい」


三人はミライに会い、状況を報告する。ミライは少し悩ましげな表情で話を聞いている。


「ん〜...それでキャバ子ちゃん、君は奈落ではないみたいだね?説明してくれるかな?」


「俺奈落じゃないのか?!まぁ薄々勘づいていたが、お前らとは何か違うような気はしていた!」


「ふぅん...記憶がないの?こっちの世界に転生してきた時の記憶とか」


「ない!でも強い使命感の様なものがあってな、でも何の事だか思い出せず、ひたすら走り回っていた!」


「今推測出来る事は、キャバ子ちゃんは奈落ではなく、きっと天子だと言う事だね」


ライガーの目の色が変わり、戦闘態勢に入った。


「天子?!なら俺達の敵じゃないですか!こいつどうします?!」


「落ち着いてライガー君、キャバ子ちゃんは殺さない。むしろ友好的な関係を築いていきたいの」


「何故ですか?!常に危険が生じますよ?!」


レイは不思議そうに問う。


「何で天子だったら敵で危険なんだよ?」


「そうだ!何でだロン毛!」


「俺の名前はライガーだ!名前くらい覚えろ!」


「レイ君には教えなきゃ行けないことが沢山あるね。私達奈落にとって天子の存在は、唯一の弱点なんだ。私達は血肉あるもの、特に人の血肉が力の源で、人の血肉を食べればより強い奈落になれる。だからエクソシストは天子と契約して私達奈落と戦うんだよ」


「ふぅん、見事な三角関係だなキャバ子!」


「その様だな!確かに女に噛み付いて血を吸った時は逆に喉が渇いて力が抜けたが、レイの時は力が漲ったな!」


「天子は本能的に人の味方だからね、奈落のレイ君は例えるなら贅沢なご馳走だね。だから私達は人や動物の血肉から栄養を取る必要があるけど、キャバ子ちゃんはレイ君から血を貰ってくれるかな?そうすれば共存出来るよ」


「えー!痛いのに!」


「レイの血は格別だったなぁ!これからもよろしくな飯よ!ガハハハ!」


「...ミライさん、何でそこまでしてキャバ子を仲間に?」


「う〜ん、勘だよ」


「勘って...」


「私の勘はよく当たるんだ」


「そうなんですか...」


「キャバ子ちゃんの戦闘能力を知りたいから、レイ君と暫く稽古してね」


「良いぞ!お前らなら楽勝な気がする!」


「言ったな?!今から稽古すっぞ!着いてこいよ!」


「お〜!」


二人はそそくさと出て行った。


「ところでミライさんに報告がまだありまして」


「ん?どうしたの?」


ライガーは帰還する際に追撃された事を話した。ミライの目つきが変わる。


「そっか、やっぱり仕事が早いね。でも暫くここを出ていく事は出来そうにないから、大人しく過ごそうか」


「戦わないんですか?」


「なるべくなら争いは避けたいかな。きっとかなり強いエクソシストが派遣されて来るだろうからね。出来たばかりの仲間を失いたくないよ」


「そうですね。では失礼します」


ライガーは部屋を後にした。


ミライは窓の外を眺め始める、日が沈み、空が真っ赤に染まり、街を不気味に照らしている。


「ブレイクマンは私達が必ず手に入れる」


数日後


「あ〜ん...んん!うっめえええ!!!」


「おいレイ!キャバ子にもよこせ!」


「キャバ子は俺の血あんだろーがよ!」


「ケチ!おいロン毛!お前の血もよこせ!」


「人の血に集るな」


レイはスーパーで買った豚肉を食べている。キャバ子はレイから取った血を点滴袋に入れてストローで飲んでいる。ライガーは二人の見張り役だ。


その後も色んなショッピングモールを探索したり、ゲーセンで遊んだり、ビルに帰れば稽古の後は風呂に入り寝袋を敷いて寝る生活を送っていた。


「キャバ子ぉ、もう寝たかぁ?」


「グガーーー!」


「ライガーはぁ?」


「.....」


「そうかぁ、俺はよぉ、何だか今、充実してるんだよ。ポンタがいなくなってからは常に寂しかったけどよぉ、なんだかキャバ子と先輩と楽しくしてるうちに満たされちまったんだ。これってひでー事なのかな...」


「...人はそんなもんだ」


「何だよ、先輩起きてたのかよ。人がそんなもんなら、ひでー事じゃないのか?」


「......。忘れる事とは違うぞ。常に失ったそいつを心の何処かには居させてやるんだ。そして思えば良い。「今も幸せだ」ってな」


「そうか...今も幸せだぜ、ポンタぁ.....グゥ〜...」


「そう...幸せだと思えるように、戦い続けなくちゃいけないんだ」


静寂が部屋に広がる。


「このビル怪しいねぇ、下からは侵入出来そうにないけどぉ、そう言う場所こそ怪しいよねぇ」


何者かが外の夜闇の中にいる?

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