第34話 絶好の買い場
2013年時点
全財産22兆6000億円
年間配当金320億円
現金1600億円
M&Sデバイスの登場で、人々の生活は激変した。さらに、スナップドラゴンの登場により、企業の在り方もガラリと変わった。
人類は魔法とテクノロジーの恩恵を存分に享受していた。
だが、その反動は大きかった。
スナップドラゴンの使用電力量はバージョンアップ毎に飛躍的に上昇。また経済発展と共にクリエイティブAIを導入する企業が増えた結果、世界は深刻なエネルギー不足に陥った。
このエネルギー需要増加を好機と見た産油国からなる「石油輸出同盟(OEPEC)」が、石油の減産を発表。
少なくなった在庫をさらに少なくして大きな利益を上げようとする狙いだ。
石油減産により、わずか1年で原油価格は1バレル50ドルから1バレル800ドルへと急騰してしまった。
石油が不足したことで航空機、船舶、自動車といった輸送機器が機能停止。世界中の流通が止まってしまい、輸入に頼っていた国々は食糧危機に喘いだ。
このエネルギー危機の最中、2012年に発生したマグニチュード9.2のインドネシア沖大地震も相まって世界中がさらなるパニックに陥った。船舶も航空機も動かない状況で救助が遅れ、死者数は160万人を超えた。
それでも石油輸出同盟(OEPEC)は頑なに石油輸出量を制限。先進各国はOEPECの強行姿勢についに根負けし、向こう10年間、現在の価格の1.2倍で取引することを条件に石油の供給がスタートした。
倫理的に見れば石油輸出同盟(OEPEC)は悪者に映るだろう。
だが50年間、先進各国は中東諸国に技術支援という名目の奴隷契約を結び、安い価格で石油を買い叩いていたのも事実だ。それでも最後まで石油の利権を手放さなかった石油輸出同盟(OEPEC)の勝利だとも言える。
一方で俺が購入したエクサンモービルは買値から480%も上昇し、配当金も5倍に増配してくれた。
あの時買っていて本当に良かった。ただ世界的な株安の影響でM&Sの株価は50%以上も下落した。資産の大半がM&Sで占められている俺の資産もかなり減ってしまった。
そんな暴落の中でも石油株を買って保険をかけていたのは正解だったと思う。
だが投資家にとって本当の勝負はここからだ。
全世界的な株安の最中でも米国長期国債ETFの価格は上がり続けていた。2002年から10年に渡って毎年100億円ずつ買い続けてきたTLTの含み益が+190%になっていた。合計2900億円。これを全て売却する。
そして、手元資金1600億円と合わせた合計4500億円で下がりまくった株式を購入する!
永久保有銘柄のコクコーラ、マルドナルド、ユニックスヘルス、ユニオンアトランティック、S&Tグローバルにはそれぞれ300億円ずつ。
さらに、値下がりしたソシエダート・チリを800億円分。
加えて、今回新規で2銘柄購入する。
①ガンマ航空
②モリタ
①ガンマ航空
エネルギー危機の影響を最も大きく受けた企業だ。2013年アルファ航空、ベータ航空との経営統合により誕生した世界最大の航空会社だ。
もし、今後エネルギー問題が解決した時に、1番力強く株価を戻すだろう。
②モリタ
俺が昔お世話になった自動車メーカーの株だ。コンパクトカーの登場で日本をバブルに押し上げた立役者。だがバブル崩壊以降、株価はパッとしなかった。
それでも経営状態は悪くなく、年間営業利益は1兆円を超え、PBRも0.6と割安な株価で放置されていた。さらに追い討ちをかけるようにエネルギー危機がやってきて、株価は高値から1/30に下落。1970年代の水準まで落ちてしまった。だが、他の自動車メーカーが破綻してもここだけは最後まで残ることができる財務体質だ。
いずれにせよ、エネルギー問題が解決することが前提だ。
"仕込み"は完了した。
ここまでボロボロになっちまった世界を、救ってくれ。アレックス!
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