第2話 蛇

 のんびり生きてちゃ、危機が訪れた時、逃げられずに死ぬんだ。

 だから、どんなに平和な毎日を送ってたとしても、心のどこかで危機感を持っておけ。

 絶対に、それを手放すな。


 これ、誰から聞いたコトバだったかな……夢の中で聞いたんだっけ?


 もう、覚えてないや。


 だけど、心にうっすらと残るこのコトバのお陰で、俺は生き延びることができた。


 そう思っている。


 あの女。


 御主人様の妻であるあの女に掴まれて、必死に逃げようともがく仲間の姿。


 やばい。


 ここにいたら、いつあの女に平和な日常を奪われるかわからない。


 嫌だ。俺はあの女から逃げる。


 俺は他の仲間にもテレパシーを送り、一緒に逃げようと提案したが、断られた。


 外の世界が安全かどうかなんて、わからないじゃないか。それとも、君がそれを保証してくれるのかね?


 わからない。


 確かに、この部屋で大人しく飼われていた方が、最期まで穏やかな生を送れるのかもしれない。


 だけど俺は、あの女に値踏みされるような視線を向けられるのは、もうゴメンだ。


 俺は一匹ひとりケージを抜け出し、僅かな隙間から部屋を出たのだった。

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