授乳奮闘記

ニ光 美徳

第1話 妊婦の時

 最初に…


 私は医療の知識がありません。


 医療に関する記述は、当時私が医師等から説明を受けた事柄を、記憶を辿って書いています。なので、全く正しく無いことを書いてる場合もあると思います。ご了承下さい。




***



 第一子を妊娠して、中期になるかならないかの頃、エコー検査を受けている時、

「あーれー?」

と、エコー担当の先生が呟く。


 初めての妊娠、何でも敏感に受け取る私は、先生の微妙な“”ももちろん聞き逃さない。


「何かあります?」と聞くと、

「うん…まあ、まだ早いんだけどね、今のところ胎盤の位置がね…。」と言う。


 胎盤の位置。


 それはネットでも見かけた事があり、初めてのワードではない。


 もう少し詳しく聞いてみると、

「胎盤が、産道を塞いでるところにあるんだけど、このままの位置なら帝王切開になるね。でも、まだ早い段階だから分からないんだ。お腹が大きくなってきたら胎盤の位置も上がってくるかもしれないから、過度な心配はしなくていいよ。」

との事。


 私は、赤ちゃんに何が心配なことがあったんじゃなくてホッとした。


 でも、胎盤かぁ…。

 よく分かってなかったので、そこまで心配はしてなかったけど、ちょっと懸念材料ができてしまったな、という感じだ。


 その後、検診でエコーする度に胎盤の位置がどこにあるか聞いていたけど、全く変わらず産道を塞ぐ位置に鎮座していた。そしてそのまま『全前置胎盤』という診断が下りる。


 ちなみに前置胎盤は、一部塞いでる部分前置胎盤と、全部塞いでいる全前置胎盤とあるそうです。


 前置胎盤だと、出血が起こった場合、大量出血になりとても危険になるとのことで、出産予定日の2ヶ月前から管理入院となった。


 全前置胎盤の場合、いつ出血するか分からないとのことで、入院する少し前の、通院の段階から貯血が始まる。


 『貯血』とは、この先輸血する必要がある時、自分の血液を戻すことができるように貯めておく血のこと。


 大量出血に備えて出来るだけ沢山の血液を貯めようと始まったけど、私は元々血が出てこないタイプなので、かなり苦労した。

 血管も出ないし、血も出ない。血中の鉄分(ヘモグロビン値)が低くてキャンセルになることも何回かあり、超ベテランの看護師さんを随分と困らせてしまった。

 入院してからも数回、貯血のための採血があったけど、最終的に予定の半分ほどしか血を貯められなかったみたい。


 入院生活は、「動くと出血するよ」と、口酸っぱく言われ、基本病室のベッドから動くなと言われた。トイレと、用事がある時だけ病棟専用の多目的スペースに行ってもよくて、検査で病棟を離れる時は介助の方に車椅子で連れていってもらった。


 実は、入院の直前まではっきりと『いつから入院』と言われていなくて、妊婦検診で『全前置胎盤』と確定診断されてすぐ、「明日から入院ね。」と言われたので、かなり面食らったのでした。


 それまで私は育児グッズも全然揃えてなくて、もうそろそろ見に行こうかなとのんびり構えていたので、それを全部夫に任せることになったので、夫も困惑してた。


 その日家に帰ってから、自分の入院準備は何とかできたけど、正直もう少し早い段階で『入院準備しといてね』と言って欲しかった。


 それより、何で『全前置胎盤になったら』というのを真剣にネットで検索しなかったのかと、自分に対して呆れた。


 こんなに早く入院になるのなら、もっと早くベビー用品揃えてたのに…。

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