骨折り損のくたびれもうけ

「姫、ようこそ来てくださいました。ではこちらのベッドへどうぞ。今日はどちらからにしますか? 右手からですね。承知しました。では失礼します。んしょっと、重たくないですか。ふふ緊張してますね。心臓の鼓動が今も激しくなってますよ。私の骨張った身体でも悦んでくれて嬉しいです。少し暑いですね。冷房を入れましょうか……いいのですか。それにしてもいつも思うのですが、綺麗な手ですね。手の甲はスベスベですし掌のしっとりとした柔らかいお肉も私好みです。私の指も好き? どこが好きか聞いてもよろしいですか。えぇ触手みたいにまとわりついてくるところですって? それ褒め言葉として受け取っていいのでしょうか、なんてどんな言葉でも褒めてくれて嬉しいです。じゃあ早速始めましょう。まずは小指の第一関節から、ん!次は第二関節、んっ! そして根本っと! 気持ち悪くはないですか。その息遣いの荒さ、見てるとゾクゾクしてきます。次は薬指の根本からっ! 次に第二関節、そして第一関節。ふふっそんな急かさないで。快楽をしっかり噛み締めて。中指には道具を使うとしましょう。このペンチで根本をしっかり挟んで、ふふっ冷たいですか? でもすぐ火がついたように熱くなります! よっ! 見事に引っこ抜けました。でも本当は一回で引き抜きたかったのですが、私もまだまだです。次までに練習しておきます。人差し指には最近習得したテクニックをお見せしましょう。

 まず第二関節を折って、次に第一と第三を折って固定すれば、はい。くの字の完成です。ふふふ、ありがとうございます。最後に親指ですがリクエストありますか。はい、分かりましたじゃあ失礼して、あーん。いいあすよ! 最後に根本の関節を咥えて、いいあす! はい。右手は全部終わりました。次は左手ですが、一休みしますか? 分かりました、では続けますね」


「お疲れ様。王子様」

「お疲れ、休憩中に王子はやめてよ」

「ごめんごめん。今日もいつものお得意様?」

「うん。初めて口使ったから顎が疲れたよ」

「鍛えておきなよ。毎回指名してくれてるんだし」

「分かってるよ。そっちも忙しかった? 何か血の匂いと変な匂いがするけど」

「新規の人だったんだけど、はらわたに飛び込んで欲しいって注文されてさ。もちろん笑顔でダイブしてあげたわ」

「まさしく腑に落ちるってやつだね」

「うまいこと言ってんじゃないわよ。あらそのお財布は彼から?」

「うん。今日貰ったんだ」

「それこそ骨折り損のくたびれもうけじゃない」

「何で?」

「だって前回までブランド物だったのに、今回のソレ、手作り感満載でフランケンシュタインみたいよ。んー、ごめんもう一回シャワー浴びてくる」

「いってらっしゃい。こんなのでも欲しかったんだよね。次はーー」


 次回行く時のプレゼントが決まった。

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