第13話 生徒会長とデート大作戦【一ノ瀬】

よし。俺は覚悟を決めた。今日俺はデートに誘う。誰を?もちろん、生徒会長だ。

今は昼休み。まずは生徒会長を探さないと。


「あ!生徒会長!」


生徒会長は体をビクッとさせて俺の方を振り向いた。


「は、はい。なんでしょう。」

「一緒にデート行きましょう。」

「はい?」

「デート!行こう!」

「いつですか」

「今日の放課後!」


生徒会長は目をまん丸くして驚いた。そしてスマホを取り出して日程を確認した。


「大丈夫でした。行けます。行き先はどこですか?」

「行ってからの秘密です。」


生徒会長は、ちょっと困った顔をしていたが、自己解決したのか、普通の顔に戻った。



***


今日は今までにないぐらいだるい授業だった。

数学だったし、英語だったし、国語だったし…

唯一の俺の楽しみは、体育だったよ。今日の体育は、バレーボールだった。

球技は男にしては苦手な方で、野球やサッカーすらできないのだが、唯一バレーボールは得意であった。


「なあ一ノ瀬。お前さ、まじでさなんでそんなにバレー得意なんだよ??俺、バレー部なのに負けたぜ?」


「チッチッチ。部活に入ってる入ってないの問題じゃねえよ広登。才能があるか、否か、だ。俺には才能がありすぎたんだよ。」


「野球とサッカーはできないお前がよく言うよ。何が才能だよ?なんだ?神様はバレーボールの才能を与えたのか?だとしたら、かなりの不公平だなっ!」


なんかすげえ腹立つ言い方されたんだが?まあ多分俺も相当だったろうな。


「今日一緒に帰ろうぜ。」

「いや、すまんな。今日は先約がいるんだ。」


広登はははーん?と言った。


「さては、生徒会長とデートだな?お前らラブラブでいらつく。爆ぜろまじで。」

「お前何か勘違いしてるぞ?別に俺らは、。ただの…」


ここは幼馴染だと言うべきなのか?それとも否か?いや、ここは否だな。


「なんでもねえ〜!」

「はあ?!そこまで言ったなら全部言えよ!もやもやするじゃんか!」


俺はじゃーなーと言って生徒会長のもとに駆けていった。


***



「生徒会長〜〜おまたせしました〜」

「もう、一ノ瀬遅いわよ。早くいきましょう。」

「あれもしかして、楽しみですか?」

「うるさいわね。その口を今すぐ閉じなさい。」


これ絶対楽しみなやつじゃん。なーんだ。俺だけじゃなかったんだ。一緒だったんだ。


俺は今日、もう一つ楽しみなことがあるんだ。


なにかって?


告白だよ、告白。


そろそろ告白しようかなって。だから今日のデートにも誘ってみたんだ。


「生徒会長、今日一段とお綺麗ですね。」

「そんなこと言っても何も出ないわよ。」

「別にそういうつもりで言ったんじゃあありませんよ(笑)」


他愛もない話をしていたらついに、その時がやってきてしまった。


「生徒会長、ここです。」


俺が指を差したその先は、片思いの恋が成就すると噂のテーマパーク。

俺がここに来ることなんてそうそうないだろうと思ってたけどこのタイミングでまさか来るとは思わなかったな。


「あら。遊園地なのね。楽しそうね。」

「これワンデイパスなので、ギリギリまでいれます。だけど、そんなにいないですよね」

「まあそうね。そこまでは流石にいないわね。」

「ささ。入りましょう。」


俺たちは早速門をくぐり、テーマパークに入っていった。



***



夜、19時。そろそろ、ライトアップの時間だ。俺はこのライトアップの時間に観覧車に誘って告白をする。俺はとっくに、ルールなんて破っていたさ。とっくにというか、ルールを決める前から、ね。


「生徒会長。ライトアップを上から眺めるために観覧車乗りましょうよ。」

「そうね。いいわよ。」


第一ミッションクリア!次が本番だ。


「こんにちは。2名様でよろしいですか?」

「はい。」

「では、これに乗ってください。」


受付のお姉さんは俺たちを案内してくれた。ようやく乗れた。頂上で頑張れよ、俺。

今日が決勝戦だからな。


「生徒会長って、好きな人いるんですか?」

「え、今その話なの?まあ、いるわよ。というか、前にも言わなかったかしら?」

「すいません何度も言わせちゃって。」

「テーマパークを上から見下ろすとこんなにも広いのね。感動だわ。」

「喜んでいただけて何よりです。」


そろそろ頂上だ。大丈夫。落ち着け…!


「そ、そろそろ頂上ですね。」

「そうね、半周ってこんなにも短いのね。」

「生徒会長、俺、あなたに隠していたことがありました。」

「隠していたこと?なに?」


「俺、生徒会長のことが好きです。付き合ってもらえませんか。」


よく言った俺!頑張ったぞ!さて、生徒会長からどんな言葉が返ってくるのだろうか。


「ごめんなさい。」

「え?」


あ、俺、フラレたんだ…?あ、ああ、成就しなかったのか。あー…なる…ほどね?


「あ、別に大丈夫ですよ。すいません変なこと言って。」

「違うの。もう我慢できないから私の返事を感じて?」


そう言って、生徒会長は立ち、俺の方へ寄ってきた。そして、俺の顔を両手でおさえて、唇をつけた。


お、俺、今キスされてる??


生徒会長は唇を離し、言った。


「私も一ノ瀬が好きよ。ルールを破っちゃってごめんなさい。でも、あなたも破ってるからお互い様よね。これからもよろしくね、。」


俺は嬉しすぎて涙が出てきた。


「え、なんで泣いてるの?!」

「ありがとう、生徒会長…」

「質問に答えなさいよ!あと、凛香でいいわよ!」

「嬉しくて泣いてるんだよぉ…凛香ぁ…」


もう、仕方ない男ね、と言って俺を抱きしめた。


「…ははは。俺のデート大作戦、成功したね。」

「成功…しちゃったわね。あんた本当にずるいのよね。この私をあんたに惚れさせるってすごいことなんだからね。」

「へえ?惚れたんだ?」

「ほ、惚れたわよ!なにか悪い?!」

「いいや?可愛い」

「う、うるさい…」


うるさいって口では言ってるけど、顔は正直にニッコリしてるよ。嬉しかったんだね。


これからは俺が凛香を支えてあげないとね。俺は、観覧車から降りるまで、そう誓った。

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