第10話 なんで意識しちゃうの…?【片瀬】
一ノ瀬とぶつかったあの日、私はより一層感情がおかしくなってしまった。
たまに、一ノ瀬と昼食を食べているのだけど、ずっと顔を見ていたいと思うし、
私の口にご飯粒がついてそれを取ってくれる一ノ瀬にドキドキしてしまう。
「(なんなのこの気持ち…。私らしくないじゃない…!!!)」
「かーたせっ!おはよっ」
「お、おはよう…」
あーだめだだめだ。一ノ瀬の顔を直視できない。
「片瀬?顔赤いけど…また熱?おかしくなる前に早退した方が良いと思う。」
もっと顔赤くなるからやめてもらえないかしら?あのときのこと、記憶に残ってないわけじゃないんだからね?!思い出しちゃうじゃないの!!
「だ、大丈夫…。でも、一応保健室行ってくるわ…。」
「熱あって、もし倒れたらやばいから俺が運んでくよ。なあ、
広登と呼ばれた人が、おーわかったーと返事をしていた。
でも運ぶってどうやって?と思っていたら、いきなり体を持ち上げられた。
「え?!なに?!」
「なにって…お姫様抱っこ?(笑)」
「笑わないでよ!恥ずかしいんだけど!」
「別にいいじゃん?今から、俺の姫ってことで。あ、あと、重くねえから安心しな!」
「そういうのいちいち言わなくていいから!!!」
まったくもう…。デリカシーってものは捨ててきたのかしらこの人。
でも、一ノ瀬の顔ってやっぱりかっこいいなあ。うっとりしちゃいそう。
私は長いこと一ノ瀬の顔を見ていたらしく、一ノ瀬に気づかれてしまった。
「ん?なに?片瀬。そんなに俺の顔見て。なんか付いてる?」
「い、いや?!別に何も…」
そうだわ凛香。私、一ノ瀬と勝負してるじゃない…!惚れちゃダメなのよ!今の私結構危ない線まで来てる気がするわ。警戒しないと。
「もうすぐで着くから待っててな、凛香。」
ぼっ。私の顔から火が出そうだ。今、真っ赤だろうなあ。
「せんせーいますかー」
ちょっと!そんな大きな声で言ったらまた怒られるかもしれないわよ?!
「その声は一ノ瀬くんね?今日はどうしたの?ってあらま。ついに片瀬ちゃんを彼女にしたの?」
「そんなんじゃねえって。片瀬さ、ちょっと具合悪いかもしんねえから、ベッド借りて良い?」
「具合悪いんだったらそんなことに許可とらないでちょうだい。病人のためのベッドなんだから。でも一応、熱測らせてもらうわね。先にベッド行っててちょうだい。」
「うーっす。」
一ノ瀬はベッドに連れて行ってくれた。そして私をそっとベッドに寝かせてくれた。
「ちょっとは楽になったか?」
「う、うん。ありがとう、一ノ瀬。」
カーテンがシャッと開いた。
「これで熱測っといてね。終わったら呼んでね。」
「わかりました。」
カーテンがシャッと閉まる。
ピッ。電源を入れて脇に挟む。
すると、一ノ瀬が小さな声で私に言った。
「なんにも声出さないでね。」
私は、え?と思ったが理解するにはもう遅かった。
一ノ瀬の唇が私の唇と重なる。そして、私の唇を食べるかのようにキスをされた。
前は突き飛ばしていただろう。何故か今は、ずっとこのままでいたいと思ってしまった。
ピピッピピッピピッ
音が鳴ると一ノ瀬の唇が離れた。
私は体温計を見る。37.5℃だった。
「せんせーちょっと微熱だった。早退できるレベル。」
カーテンがシャッと開く。
「だからね一ノ瀬くん。他の患者さんもいるのよ?あなた、保健室出禁にするわよ。」
「ごめんって。もうしないから。」
「さあどうかしらね。片瀬さん、今日はもう帰る?それともちょっと寝てから授業戻る?どうする?」
どうしたらいいのだろうか…私は生徒会長だ。生徒の中でもトップな地位にいるとしても、単位が取れなければ卒業ができない。学費はお母さんに頑張って払ってもらっているけれど、家に帰るという選択肢は今はしたくない。
「俺んち来れば?家に帰りたくないんだったら。」
「何を言ってるのよ一ノ瀬くん。親御さんに電話して家に真っ直ぐ帰るべきでしょう。」
「まあ、片瀬も片瀬で家に帰りたくない事情があるんだよ。でも、熱はある。じゃあ、俺のとこに来るしかなくね?」
先生はため息をついた。反面、私はそうなったらどうしようとまた心臓がバックンバックンしている。
「もう高校生だものね。事情は誰にもあるわよね。片瀬さんがいいなら私はそれでもいいわ。どうする?」
***
結局お邪魔させてもらった。ついでに、今日は一ノ瀬は学校を休むことにしたらしい。
「ねえ、一ノ瀬…?単位、大丈夫なの?」
「やべえけど、俺は勉強より、片瀬の方が心配だからどうってことねえよ。」
「どういう理論よ全くもう…」
「それに、今なら片瀬のずっと近くにいられるだろ?」
「え?」
ちょっと待って。それ…どういう意味?
「これで、他の男が寄ってくる心配はねえよって。俺以外の男子は怖くて無理なんだろ?」
それはその通りだ。初めて男子に恐怖心を抱かなくなった男子は一ノ瀬だけだ。
「じゃあ、安心だな!」
一ノ瀬はニコッとした。そしてまた、その優しい笑顔にドキドキしてしまった。
「あ、ちょっと、冷えピタ持ってくるからちょっとまってて。」
そう言って部屋から出た。
「もう…私の気持ちも知らないで…」
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