第2話 八つ当たりさせてくれてありがとう!

パーン!

スパーン!


わき出るモンスターのほとんどを拳のみで粉砕していく。


俺がモンスターを殴りつければ雑魚モンスターはこなごなになる。


"なんだこの脳筋野郎"

"武器使ってねぇwww"

"拳でおkってかwww"


その時だった。


「ギィィィィィィィィィ!!!!!」


やや大きめのゴブリンが姿を現した。


名前:ゴブリンエリート

レベル:54


ブン!


ゴブリンが棍棒を振り下ろしてきた。


「遅いな。ナメクジにでも当てるつもりか?」


右手の拳で棍棒を粉砕しながら顔面を貫いた。


【ゴブリンエリートを討伐しました】


"ふぁっ?!今のはやばすぎだろwww"

"つよwww"

"いやいや待てよ、きついのはここからだから、こっからなんだって"


ゴブリンエリートを倒したことで次に繋がる階段が出てきた。

それをのぼっていく。


背後で扉の閉まる音が聞こえた。


これでもう簡単には戻れない。


コメントが盛り上がっていく。


"それにしてもこの人やばくね?さっきから全部【弱点】を正確に殴ってる"

"ただのパンチのはずなのに威力高ぇなっておもったらそういう事だったのか"

"ゴブリンエリートの弱点は【頭】だもんな。たしかに弱点狙ってるわ"

"戦闘中に正確に弱点狙うのってキツイんだけどなぁ"


そのときだった。

目に止まったコメントがあった。


"なんでこんな無謀なチャレンジしてんの?日本人なら動画タイトルの行動がどれだけやばいか分かるよね?いやなことでもあった?"


俺は答えた。


「幼なじみに振られた。あいつパパ活してやがった。俺には手すらなかなか触らせなかったくせにお金払うだけでやり放題だってさ。さらには内心俺の事ずっと見下してたんだってよ」


"心中お察ししますわ"

"うわっ……きつっ……"

"悲惨すぎて笑えんな"


そのときだった。

ピコン。


メッセージアプリ【JINE】にメッセージがきた。


ビチ子:レベル2のよわよわ冒険者くん?元気かな?ちなみに君から貰ったプレゼントは全部換金してました!


そこで見るのをやめてブロックした。

こいつのメッセージは見るに耐えん。


でも配信には読み上げて載せてやった。


"人間のやることじゃないわ"

"死ねよクソ女"

"主がこんな無謀なことする意味ないよ"

"いい人見つかるよ!てか私がいい人になったげる!"



そんなコメントがあったかかったけど、もう戻れない。


「気持ちはありがたいけど戻れないよ。背後で扉が閉まったからね」


1部の高難易度ダンジョンでは階層戻りに制限がかかる。

今回はそのタイプだ。


だから、簡単には戻れない。

もう前に進む覚悟を決める必要がある。


そうして歩いてたらやがてどんどん階層をぬけて行けた。


"すげぇ、めっちゃサクサク進むなこの人"

"トップのパーティみたい"

"こんなにサクサク進む人なかなか見ないよな"

"しかも武器が己の拳のみはカッコよすぎwww"

"すまんモンスター倒すのに武器使ってるやつおる?時代は拳だよ"


俺が進めば進むほどコメント欄の悲愴な空気は消えていった。


でも、そろそろまた落ち込むだろう。


俺の目の前に現れたこいつのせいだ。


扉が俺の目の前にある。


【ミノタウロスのフロア】


そこにはそう書いてあった。


"まだ突破者ゼロのとこだっけ?"

"そうだね。まだここを誰も抜けてない"

"でもこの主なら期待できそうなんだよなぁ"

"せやせや!やっちまえ!"


ここで葬式モードになるかと思っていたが意外と俺に期待してる人が多いらしい。


重そうに見える扉だけど意外とすんなり開く。


扉を開けたその先には


「怯むなぁ!押せ!押せぇ!」


先客がいた。

ミノタウロスと戦う冒険者たち。


「ブモォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」


ブン!

ミノタウロスがバカでかいアックスを横凪に振った。


キン!


ほとんどのメンバーが武器とかで受け止めていたけど


「ぐあっ!」

「きゃっ!」


力負けして吹き飛びされる。


「ブモォォォォォォォォォ!!!!!」


そしてミノタウロスは1人の女性に目をつけた。

見た目からしてサポート役の聖女だと思う。


ヒーラーポジションを先に潰そうとしている。

ミノタウロスがアックスを振り回して一目散に走る!


それを見て俺は呟いた。


「【縮地】」


トッ。


地面を思い切り蹴った。


ボコォッ!

へっ込んだ地面。


右足による蹴りをミノタウロスに向けて放つ。


「【ギガント・インパクト】」


ドゴォッ!


「ブモッ!」


俺の蹴りを受けて【く】の字に体を曲げて吹っ飛んでいくミノタウロス。

壁にたたきつけられた。


先客たちに声をかける。


「続きは俺が引き受ける。下がれ。全員戦えるような状態じゃない」

「だ、だが……」


ギロッ。

口答えしたリーダーらしき女を睨むと頷いていた。


「退却!退却だ!」


そう言って退却を始めたが、聖女らしきやつだけ残っていた。


「サポートします」


それには何も答えずに俺はミノタウロスと向き合った。


正確には答える暇がなかった。

既にミノタウロスが起きていたから。


【状況把握】スキルを使い状況判断を行う。


(【今の】本気でミノタウロスをぶん殴って10発必要かどうかってところかな)


正直言うと10発も殴るのは面倒なので


(【真の】本気を出そうか)


そのとき俺に【完全版ステータスチェッカー】を向けてくる聖女。

おそらく、俺と共闘するにあたって基本能力を知っておきたかったのだろう。



ピッ。


『ステータスをスキャンします』


【完全版ステータスチェッカー】が俺の能力を測定した。



名前:白銀 修也

レベル:1002


「なんなんですかこの数字は。レベル1000超え?!見たことないですよこんなレベル!」


その数字を見てミノタウロスが笑った。


「ブモッモッモッ!(たかがレベル1000?!軟弱だなぁ人間は!)」


俺の鑑定スキルは既に限界を迎えており、なんとなくだがモンスターの言葉が分かるのだ。


「ブモー?(レベル1500の俺様に勝てるかな?)」


俺は制服を脱いだ。

腕にはリストバンドのような装置が巻き付いている。


"り、リミッター?"

"リミッターってなに?"

"力を制御するアイテムだよ。ほら冒険者って全力出すと日常生活に影響出ちゃう人もいるから"


俺はリミッターを取り外した。


【力の制限を解除します。本来のレベルに戻ります】



『対象のステータスが更新されました。フルスキャンします』


それに伴って聖女が持つ【完全版チェッカー】も俺の本来のステータスを表示する。



名前:白銀 修也

レベル:9002

状態:なし

スキル:

格闘術Lv999

状況把握Lv999

剣術Lv999

鑑定Lv999

槍術Lv999



聖女の声が聞こえた。


「なに?このデタラメな数字は。チェッカー壊れた?」


俺はミノタウロスを見て宣言する。


「一撃で十分だな」


プルプル。見下された怒りで震えてるらしい。


アックスを振り回して突撃してくる。


「ブモーーーーー!!!!!(舐めるなよ人間が!)」


次の瞬間俺は空中に飛び上がりミノタウロスの顔の横にいた。


「それで全力?あくびが出るよ」


メキョッ。

ミノタウロスの顔面にパンチをぶち込む。


ミノタウロスの体は回転しながら吹っ飛んで壁に叩きつけられて。


そのときの衝撃でミノタウロスの体は破裂した。


「誰も最初のボスするクリア出来ない高難易度ダンジョンって聞いて期待して来たんだけど、話にならないな」


モンスターが弱すぎて普通のダンジョン攻略配信になってしまった。


本当はモンスターに殺してほしかったんだけど、八つ当たりしたら胸にたまってたものがましになった。


(あんなやつのために嫌なこと考えちゃったな)


よし、もう気持ちは切り替えた。


(この先の【中断スポット】で家帰って寝よ)

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