第26話 女神の激怒
「このヘタレ! 弱虫! 意気地なし! 根性なし! 腑抜け! へなちょこ!」
戻るなり、鋭利な言葉の刃物が雨あられとなって、俺の全身に突き刺さった。
「ぐっはぁ!」
「女神さま、それは言いすぎですって!」
耐えきれず地に伏すと、アマテラスは頭上から更なる罵声を浴びせかける。
「なんじゃおぬしは! せっかくわらわが気を利かせてあの場を設けてやったというのに、それをものにできぬとは! 男の恥さらしめ!」
「性別は関係ないでしょ! っていうか、なに覗いてるんですか!」
「なにが凸凹コンビじゃい、なーにが欠点を埋め合うことができるじゃい! どうせなら神話的な意味で──」
「だー! タンマタンマ! 意味わからんけど意味わかる!」
「だいたいおぬしもおぬしじゃ。あそこまでいったなら、最後まで致せ!」
「ひーん、恥ずかしいですぅ……」
女神の暴言にたまりかねた俺は、とうとう反撃に転じた。
「まったく、これだから神々ってやつは。アマテラスさまって弟のスサノオさまと、人にはとても言えないことされてるんでしょう? 何人もお子さまが──」
「やめい、なにを言っておるか! あれは粘土をこねこねしただけじゃ!」
「いや、それも神さまっぽいけど!」
「そもそも、あんな乱暴者なんてまっぴらごめんじゃ。わらわがひきこもったのは、あやつを懲らしめるためなのじゃからな」
「人の世も考えて!」
攻撃をかわした女神は口元に手を当て、ほくそ笑むように言った。
「ははーん。そこまで話を逸らすところを見るに、おぬしらまさか、アレじゃな?」
サングラスを下げて、いたずらそうな瞳を覗かせる。
俺とミヤは同時に仰け反った。
「どっ、どっ、どっ、どっ!」
「しょっ、しょっ、しょっ、しょっ!」
「うぶじゃのお~、わかりやすいわい。なにも恥ずかしがらんでもよいではないか、誰にだって初めては──」
「どっせーい!!」
「しょったれー!!」
「うわっ、なんじゃー!」
圧に負けて、女神は座椅子ごと後ろ向きにひっくり返った。なぎ倒したパラソルに巻き込まれ、そのまま生き埋めになる。
「ああ! アマテラスさま!」
「大丈夫ですか!」
「うぅ……、わ、わらわならだいじょうぶじゃ……。ふたりともその勢いがあれば、何事も当たって砕けろ、なのじゃ……」
そこまで言うと、女神はパタと倒れた。
横たわりながら手だけを伸ばして、指先をぐるぐるとする。するとただちに周囲の空間が歪み、暗黒が渦巻きだす。
しまった。くだらない問答のせいで言いそびれてしまった。
クリアまで行きつかなかったゲームへの未練に加え、彼女を助けられなかったことが何よりの後悔だと言ってしまった手前、あのことが言い出せない。
俺が死んでも死にきれない、最大の理由は──。
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