3章第6話 告白される

 私とウィンドウはアマクサ王子の案内で拠点というかアマクサ王子のお城(仮)に案内してもらった。


 そこを修復しようと巨体の大男がいる。大工さんなのかと思った。


 アマクサ王子がその大男に声をかける。


「おーい! ゴーケツ! 建物はどうだ?」


「兄貴! まだ作業中ですぜ。木材とかレンガとかほしいですぜ」


「そう言うなよ。俺は目的を果たせたんだからな」


「目的ですか? なんでしたっけ?」


「何って、お姫様だよ。ほら、ここに!」


 ゴーケツという大男は私を見るとアマクサ王子に質問する。


「兄貴、どこの国のお姫様誘拐したんですか?」


「えっ? そういえばどこの?」


 これに対してアマクサ王子は私に話かける。仕方ないと思うが私はゴーケツに説明する。


「あの、私はレーモンって言います。単なるの一般市民です」


 これにゴーケツは反応する。


「一般市民じゃないですよね。そういうのは名家の人ならだれでも使う嘘ですよ。俺はこの国でそんな嘘で人を騙してきた王族や名家を嫌というほど見てきました」


 おそらくゴーケツはこの私を疑っているのだろう。この国が滅んだ理由に関係しているのかもしれない。人を騙すことで信用を無くしたり自殺したりなどが相次いで結局腐敗政治となり国が滅んだ。


 そんなところだろうか。ゴーケツは私の事を裏で何を考えているか分からないクズ人間のように見ているようだ。


 私は誤解を解くためにゴーケツに話す。


「あの、私はこちらのアマクサ王子がどうしても王子だとは思えません。何しろ上半身裸でこのような古びた屋敷にお住いなんて」


「ああ、それね。それは兄貴の趣味なんで。あと王子は自称ですぜ。こんな人もいない場所で王子なんか名乗っても意味ないですから」


 これにはアマクサ王子も動揺する。


「おい、それ俺かばってねえだろ。むしろ疑惑を膨らませるだろ」


「俺は本当のことを言っただけです。それともマジモノで王子だと思ったのですかい?」


「それは……王子だろうが! この国の国王の血筋で生き残りだぞ!」


 アマクサ王子が王子かどうかは分からないが、彼が私達を助けようとゾンビ100体と戦ったこともある。


 もし助けるつもりがなければ私とウィンドウを見捨てて逃げているはず。


 だから、私はアマクサ王子を信用している。それに裏がありそうな人じゃない。


 そんな人が上半身裸で滅んだ町に住みついて生活などしない。


 とはいえ、私も誤解がないようにゴーケツに話しかける。


「このティアラとドレスは私の自腹です。それと今はお姫様ではありませんが、私はいつかお姫様になりたいなって思いでこんな格好しています」


 こんな話で信用するとは当然思っていない。何しろ白猫の亜人のウィンドウの存在もゴーケツは疑っている、


「そうか、それで白猫の亜人は?」


 これはウィンドウ自ら説明した。


「私はスプリング王国のストーム王子の部下、ウィンドウ。この方はストーム王子の命令で護衛しているだけ」


 これにはアマクサ王子とゴーケツも驚いた。この話に入ってきたのはアマクサ王子だった。


「マジか、ストーム王子が闇組織だった亜人や人間を重用しているという噂は本当だったか」


 これに対してゴーケツも反応する。


「もしそうなら、スプリング王国に行ってみたいです。亜人があたりまえのようにいて闇組織が夜中は活躍しまくりで争いごともあるから危険という噂もあり」


 これにはウィンドウが反応する。


「亜人と人間のトラブルはある。でもそれはストーム王子の従弟、ガーゴイル様の領土で起きている事。ストーム王子の統率力はすごい」


 この話にアマクサ王子とゴーケツは納得し、さらにアマクサ王子はレーモンにまさかの発言をする。


「レーモン! 俺と結婚してください!」


「…………」


 全員が10秒黙り込んで、即座に驚く。特に私は顔を真っ赤にしてどんな返答をしていいか分からなくなる。


 ゴーケツは驚きを隠せずアマクサ王子に反論する。


「兄貴、一体どういうことです⁉」


「分かるだろ? 告白だよ」


「それは分かります。何故出会ったばかりの良く分からない方を結婚相手にしようと考えるのですか?」


「こういうのは速い方がいいだろ。それにこの国にいるってことはこれから仲良くしようって意味だし」


「理解出来ないですぜ」


 今日出会ったばかりの人が突然結婚の告白などすればそれは怖い。だから私もこういうのはうまく返答できない。しかし仮にも王子様の告白と考えればこれは受け入れるのが正解なのだろう。


 しかし、結婚はアマクサ王子の事を良く知ってからの方がいい。私はそんなつもりで返答する。


「あの、結婚なのですが、私はまだアマクサ王子のことが理解出来なくて……その、お友達からはじめるというのは……」


 これにアマクサ王子は返答する。


「お友達か。悪くねえな。友達が出来るのは良い事だ。これからよろしくな、レーモン」


「はい、よろしくお願いします。アマクサ王子」


 さっきまでツンデレな感じだった私もこういう時は素直になる。


 でもその方がアマクサ王子も喜ぶだろうしいいことだろう。

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