1章第2話 3歳にして読書重視
私はお母さんが大丈夫かを確かめる。
「お母さん、大丈夫?」
「大丈夫よ。いつものことだし」
「どうして姉貴はあんなことを」
「姉貴じゃなくて、お姉ちゃんでいいわよ。あの子はきっと仕事が出来ないことでイライラしているのかも。もっとお父さんが優しくしていたら」
確かに仕事をすることで厳しさは必要だしダラダラと仕事をしてはいけないとは思う。
しかし、楽しく苦労ない仕事などない。それで辛い暴言を吐かれるわけだから仕事などしたがらないはず。
私の転生前にもニートになったり会社を辞めたりする人は多いが、きっと人間関係がそのようにさせているはず。
きつく当たり散らす人が多ければ多いほどニートになってく人間が現れてしまうことが理解できない人は多い。
とはいえ、そんな奴は自業自得。パイナもああなってしまうのも彼女の弱さとそういったことに気づくことが出来なくてただ単に仕事をさせようとする両親の愚かさだ。
私はそんな状況を作らないためにも、この環境を正しくさせなければいけない。
檸檬畑の収穫を終えた私は井戸での水浴びを終えて自由時間に入る。
この世界の農民には風呂は贅沢で体を洗うときは水浴びしかない。
川で洗濯や汚れを落とすなんてのもあるが、シャンプーやリンス、石鹸がない以上体の汚れは完璧に落とせていないだろう。
だから今の私も泥などで汚れているし肌も綺麗じゃない。
風呂を作るための対策を、本を読む。この世界にはゲームはないしネットも携帯もない。だから今3歳の私に出来ることは本を読む事だけだった。
新聞も本もないため外の情報は分からないが、いつかそういうのが出来たらと願っていた。
むしろ異世界に来たのだから自分でそういうのを作れば貢献になるとも考えていた。
最初は文字の勉強。言葉は3歳になって大体わかってきたが文字も分からなければ意味はない。
こういった事を学ぶために本を読み続け、両親の畑仕事を手伝い2年経過した。
5歳になって私はこの世界の文字と言葉をほぼ完璧に覚えた。
それにより、いよいよ本を買うようになる。
私は最初にやりたかった風呂に関する本を家から少し離れた小さな町の本屋で買った。
そこの店主とは長い付き合いになりそうなので幼いうちに交流は深めておく。店主はおばさんだ。
「こんなに小さいのにこんな難しい本でいいのかい?」
「うん、これからの私に必要だから」
「頑張り屋さんだねえ」
こうして風呂に関する本を買って読んで見たところ、そういうのはやはり貴族や王族といった身分が高い者にしか入れないものだった。
身分の低い者が入れない理由は火について温度調整が出来ない事や釜風呂のような技術がないから。しかも温かい温泉は王族が独占し、農民には与えられない。
しかも水が大量に必要なこと。この世界の水は少なく、水浴び用や畑に必要な水、水分補給出来るくらいの量しかない。
風呂とはこの世界ではそれだけ贅沢なものだった。
まずは水の確保だろう。とはいえ5歳の少女にそんな無謀なことはできない。だから今度は水の確保の方法が必要だ。
私は畑仕事をしつつお母さんと相談する。
「お母さん、もし水が急遽必要な時はどうすればいい?」
「井戸の水が無くなったらとか?」
「そう、水が無くなったら大変じゃん」
「そうねえ~」
考えるお母さん。そんな時にこんな話を聞いた。
「そういえばだけど、隣町を完全に滅ぼしてねぐらとしているスライムはお金だけではなくておいしい水というアイテムを持っているとか」
「スライムが持っているんだ」
「スライムは最弱の魔物で農民の私達でも倒せるわ。でも群れで襲ってきたら王族の兵士でも死ぬレベルだから。レーモンもむやみに隣町跡地に行ってスライムと戦うなんてことは考えないで」
そういえば町で水は高値で取引されていた。水不足な証拠だろう。そんな貴重な物をスライムを倒すだけで手に入るのは素晴らしい。
でも、お母さんの言うとおりで今戦闘に行っても戦いの経験がないのと5歳の少女の体ではスライムに対抗できないだろう。
だからしばらくは畑仕事と戦闘訓練が必要だ。
戦闘訓練であれば遊んでばかりのパイナが付き合ってくれそうだ。
私は早速パイナのいる森に行く。パイナは他の友達と飲んだりして楽しんでいた。
「あの、あね……き」
「何よ、レーモン。ママに変わって説教しにきたの?」
他の仲間も笑う中で私はパイナにお願いごとをする。
「そうじゃないの、私に戦闘を伝授してほしいの」
「はあ~、5歳のガキがなにいっちゃってんの? まあいいわ。それでなにをしたい? 相撲? 剣?」
「まあ、出来ることなら……」
「じゃあ早速よ」
「えっ?」
私は突然パイナに殴られた。
「何をするのですか?」
「攻撃なんて不意打ちは当り前よ。ほら!」
パイナは容赦なく殴ったり蹴ったりしてくる。しかし私も殴られたり蹴られたなら黙っていない。一度ナイフで刺される経験をしているからそれくらいの攻撃は大したものじゃない。
私は必死に反撃する。
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