第4話 失われた希望

☆星空瞬サイド☆


家に帰り着くとその全てが整っていた。

つまり家の中が汚れていたのに気付いた様だ。

それはそうかあんだけメチャクチャにしたらな。


帰ったら片付けるつもりだったのだが。

その前に流星が帰って来てしまった。

予定外である。

俺は思いながら靴を揃えてから玄関から上がる。


「.....お帰り。瞬」

「ああ。ただいま。流星。お前もお帰り」

「.....そうだね」


流星は控えめ?な感じの笑顔になりながら無言でコーヒーを差し出してくる。

俺が好きなブラックコーヒーだ。

真っ黒な海の様なコーヒーを受け取ってから俺は流星を見る。

流星は、美味しく出来たの今回は。飲んでみて、と言ってくる。

何も入ってないよな?コーヒーの中に。


「.....美味しいな.....」

「そうでしょ?暖まるでしょ?」

「.....6月だけどな。.....暖かい気持ちだ」

「6月だからだよ。瞬」

「.....」


俺は目の前の流星を見る。

流星は少しだけ控えめな感じでミルとかの物を洗っている。

その姿を見ながら俺は湯気の上るコーヒーを見る。

そして椅子に腰掛けた。

すると流星が何かに気付いた様に俺に向いてくる。

!、という感じで。


「手.....どうしたの」

「え?.....あ、いや。転んだ」

「そうなの?誰に治療してもらったの?」

「.....あ。陽毬だ」

「.....陽毬さん.....」


そう、とまた言いながら沈黙する流星。

俺はその姿を見る。

黒の煌めいた肩までの髪の毛が揺れる。

それから垂れてから顔が見えなくなってしまう。


因みに流星の容姿だが。

肩までの黒の髪の毛にEラインの整ったモデルの様な容姿端麗。

それから勉学も優秀であり。


黒の髪の毛に髪留めを着けている。

その髪留めは俺があげたものだ。

誕生日に、である。


「.....どうしたの?瞬」

「.....いや。何でもない」


ジッと見てしまった。

宝石でも見る様に。

コイツは本当に浮気したのだろうか。

だけどホテルに行くってなったらもう浮気だよな。


しかも鞠と一緒とは.....嫌気がする。

何が起こっているのか全く分からない。

思いながら俺はもう一度、流星を見てみる。

すると流星は、洗濯物ができたね、と言いながらパタパタとスリッパを鳴らして去って行った。


「聞きそびれた.....か」


俺は考えながら窓から外を見てから。

そのままブラックコーヒーを飲む。

痛みがする。

心からも手からも。

思いながら俺は窓から空を見つめる。


「早乙女さん。俺どうしたら良いかな」


会った事がない流星の父親にそう尋ねてみる。

目の前の飾られている写真に、だ。

だけど返事はない。


当たり前だが俺が何とかしないといけないな。

そう.....思いながら俺はブラックコーヒーの入っていたカップを洗う。

それから片した。


陽毬の兄との浮気.....か。

そんな事を考えながら俺は母親を思い出す。

交通事故で亡くなった母親を。

あの日以来だな。

この様な衝撃は.....。


「.....」


そんな事を呟きながら破れた写真が入っている生徒手帳を見る。

そこに居る俺の母親。

実はこの写真は写真屋に立ち寄って帰る時にあった写真だ。


その際に幼い俺も一緒だったが。

俺だけは助かった。

だが母親は俺を守ってから跳ねられ死んでしまった。


俺が生きる意味とは何なのかを考えるきっかけになったとは思う。

それから1年ぐらい引き篭り。

俺はそれから2年後に流星に出会う。


「.....」


全てが0に戻った様な。

5年間築いた信頼度のパラメーターが0に振り切った様な。

そんな衝撃がする。

俺は考えながら陽毬の言葉を思い出す。


『大丈夫。何とかなるよ』


その様な言葉に俺はどれだけ励まされたか。

ただその一言で。

思いながら俺は生徒手帳を閉じる。


そして目を閉じてから意気込みをしてから。

そのまま、よし、と思いながら2階に上がる。

取り敢えず今は考えない。

それから宿題とか仕事をし始めた。


☆星空流星サイド☆


瞬は2階に上がった様だ。

洗面所で私は呆然と洗濯機を見つめる。

瞬に絶対に言えない事を私はしているのだが。

何をしているかといえば私は浮気をしているのだ。


だけどそれは絶対に言えない。

言える訳がないのだ。

しかもその理由.....は.....。


「言えないよね。口が裂けても絶対に瞬に」


だけど猛烈な後悔に襲われている。

背徳感にも絶望にも。

私は.....どうすれば良いのだろうか。

この先、どう生きたら良いのだろうか。


思いながら私はさっき震えたスマホを観てみる。

そこには鞠からメッセージが入っている。

どういうメッセージかというと。

逃げたら分かるよな?、という感じのメッセージ。

私は冷や汗を流す。


(でもこの関係は.....マズイよ。貴方にとっても)

(それは関係ないね。俺は欲しいものを全て手に入れるから)

(もう止めようよ。無理だよこれ)

(分かってないな君は。無理じゃない。やるんだ。さもないと.....)

(そ、それだけは止めて。お願い)


私は涙を浮かべる。

それから意気消沈する。

もうどうしたら良いのだ?私は。

私は.....。

この関係を続けるべきなのか?

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