君色の青い夏

「暑い…」


 太陽がギラギラと私を照らし、アスファルトはその暑さを反射させ、上下から暑さが私を攻めてくる。


 空にはわたあめのような大きな入道雲が浮かんでいる。


 あんなに大きければ太陽を隠してくれそうだが、実際は太陽を少しも隠さず空の青さだけを隠している。


 夏の暑さに加え自転車を漕ぐから体中から汗が吹き出し、ワイシャツが背中に張り付く。


 ベタっとくっついてくるワイシャツが気持ち悪い。


 自転車を漕ぐと風が私を包み込むから気持ち悪さが少しでも減るかと思いきや、風は生ぬるく余計気持ち悪くなる。


 さっきまでいた教室が恋しい。


 冷房が効いていて丁度いい温度になっている教室は私にとって天国だ。


 そんなことを考えていると前に二人の女の子が横に並び、自転車を漕ぎながら楽しそうにお喋りしていた。


 私は楽しそうでいいなぁと思うが、同時に自転車でゆっくり並走しないで欲しいとも思った。


 あまり車の通りが少ないとは言え、私みたいに後ろから来た人にとっては邪魔でしか無い。


 グチグチと文句を言っているのは、別に青春を満喫している彼女達のことが羨ましいからでは無い。


 ……たぶん


 抜かそうかどうか悩んでいると、対向車線から車が数台来てしまったため追い抜かすタイミングを失ってしまった。


 いつもそうだ……


 やっていればよかったのにと後悔する。


 あの日もそうだった。


 彼にたったの一言伝えればよかったのに、私は言えなかった。


 今更後悔しても意味は無い。


 そうわかっていてもどうしても、そのことが頭に浮かぶ。


 特に最近はそのことを考えることが多い。


 多分原因はこの夏の青空だろう。


 この夏の青い空を見ていると彼を思い出す。


 空の青のような彼は3年前の夏に消えた。


 だから夏になると思い出す。


 彼と出会った日。


 そして彼に最後に会った日を───

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