レスバ勃発! ワナビVSヒキニート

『レア賢の発売日決定しました。●月●日です。既にママゾンのほうで予約ができるので、ぜひご購入をお願いします』


 数日後、俺はエックスターで小説の宣伝をした。通販サイトであるママゾンのリンクを貼り付け、閲覧者たちに購買を呼びかける。

そのポストを投稿すると、早速信者たちが反応を送ってくる。


『おめでとうございます(*^_^*)』

『おお、ついにレア賢発売ですか! 絶対買わせて頂きますね』

『Web板とどんな違いがあるのか楽しみ』


 スマホの画面を見て、俺はニマニマとほくそえんだ。やっぱりエックスターは心地いい。こうして俺を称賛する声がドバドバと送られるって、麻薬のように中毒性がある。もっと称えろ信者ども!


 小説の宣伝ポストには、次々といいねやリポストがつき、コメント欄のツリーもどんどん伸びていった。俺はにやけ顔が止まらず、スマホの画面をスクロールしていく。

これこそプロ作家が受け得るべきステータスというものだ。


 だが、最新のコメントが更新された時、俺の指が止まった。


『なろう書いてる暇あるなら働けよニート』


 俺の目にはそんな文面が飛びこんできた。クソみたいな頭の悪いリプ。

だが同時に俺の胸の内では、ふつふつと堪えがたい怒りが込みあがってきた。毎日のように俺の部屋に上がり込んでは、「働け!」と怒鳴りつけてくる親父の顔がフラッシュバックする。


『ワナビさん嫉妬乙』


 俺は反射的に返事をかえした。

だがほとんど間を置かずに、またリプが返される。


『クソニートよりはマシだろwwwなろう作家様ってそんなに偉いんですかねwww』


「w」を多用した明らかな挑発。俺の頭に血が上る感覚が走った。

我慢できず、更に俺は反撃を返す。


『は? 普通にプロ作家として働いてるんですけど。ワナビは上の文章も読めないんですかね?』


『発狂してて草wwwよっぽど無職にコンプレックス拗らせてるんですねぇwwwさっさとハロワ行けよヒキニート』


『ワナビが必死にプロに噛みついてきて笑えるんですけど? てめぇこそクソリプ送ってる暇あったらさっさと仕事に戻れよ。まぁ俺の収入より遥かに低賃金な社畜なんだろうけど』


『ニートがいきなりシャドーボクシング始めてて草wwwお前より低収入なわけないだろ無職wwwプライドだけ高くて中身スカスカな奴の典型』


 何度も頭の悪い言葉を浴びせられ、俺はとうとうブチ切れる。それからクソリプを送ってきたゴミクズとの応酬がはじまった。


『ワナビ』

『ニート』

『ワナビ』

『ニート』


 罵倒を浴びせては罵倒を返す。自分でもどういう文章を送っているのか、全く意識できていない。文字入力する指も、どんどんと乱暴になっていく。


 だがとうとう、相手が「じゃあなイキリニート。飽きたから帰るわ」と捨て台詞を残し、リプライが止まった。コメント欄のツリーには、何も返信がかえされなくなる。いつの間にか、いいねやリポストなどの他の反応自体も途絶えていた。


『ワナビが涙目で敗走していきました。愉快愉快。プロ作家に立てつくからこうなるんだよ雑魚』


 しばらくして、俺はそんなリプライを付け加え勝利宣言した。

だが俺の怒りは収まらず、「ニート」という言葉が頭の中でズキズキとこびりついたまま離れない。


『あの、あまり荒らしとかに反応しないほうがいいと思いますよ』


 信者の一人から、突然ダイレクトメッセージが送られてくる。

俺は指図されたことがムカついて、速攻でそいつをブロックした。

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