第7話 いざ、集会のはじまり

 インターホンにうつる管理人さんと肩に乗るテラさんを見ながら、首を傾げる私とフランとルル。


「お〜い早速来てやったのに、はよう開けてくれんかのぉ〜」


 インターホンにドアップでうつるテラさんの一言で私は我にかえり、すぐにドアを開けようと玄関に急いだ。


「今回はツレも一緒じゃと伝えておったじゃろぅが。フォッフォッフォ」


「あはは。俺は先に伝えておいたほうが良いって言ったんだよ。でもどおしても3人の驚く顔が見たいって、テラが言うもんだから。本当ごめんね」


 罰が悪そうに頭をかきながら苦笑いする管理人さん。そんな姿も格好よかったりするんだけどね。


 ん?てか管理人さんがテラさんのいってたツレってこと?


「えーっと。フランくんとルルちゃんと顔を合わすのは初めてだよね。まずはきちんと自己紹介させてね。俺はこのまたたび荘の管理人をしている、有馬ありま朔也さくや。皆さんお察しの通り、咲さんと同じように猫と話せる力を持ってます」


 えーーーー!!×3


「にゃにぃ〜。そんなことあるのかよ」


「ほ、本当なの?管理人さんも私たちの話がわかるの?」


「うん。俺の場合は物心ついたときからなんだけどね。咲さんが猫と話せる力に目覚めたこともテラから聞いたんだ。いや突然こんな話をしても困っちゃうよね……」


 ちょっと寂しそうな顔の管理人さん。いやルルの謎を解くために協力者は多いほうがいい!ってか、同じ気持ちを共有できる人が管理人さんだなんて、めっちゃ嬉しいんだけど。するとフランが管理人さんの周りをゆっくりと歩きながら、テラさんを見上げ声をかける。


「なぁテラじいさん。こないだ言ってただろ。ワシにも特別な力があるって。あれはどんな力なんだよ。気になって眠れないじゃないか。それについても詳しく教えてくれよ」


「そうじゃったのぉ。ではまずは信用してもらうためにも、ワシと朔也のことから話しておこう。ま、その前に咲さん一杯お茶でもいただけるかのぉ〜」


 そういうと、テラさんは管理人さんの肩から降りて私の部屋に向かい歩いてゆく。


「すみません。身勝手なじいちゃんなもので。勝手にあがりこむなよテラ」


 ひとりでトボトボと部屋に入っていくテラさんの後ろ姿をみて、管理人さんがうなだれている。でもこうなったら仕方ない!まるで突然ファンタジー小説の主人公になった気分だけど、やってやろうじゃない。覚悟を決めた私は管理人さんに声をかけた。


「あの手狭な部屋ですがよかったら中にどうぞ。話したいこといっぱいあるし。みんな一緒だし。あ、管理人さん、コーヒーでいいですか?ブラックですよね?」


「もう本当すみません。お言葉に甘えてブラックで。実は俺ね、子供の時から猫と話せるけど信じてもらえないから誰にも言えなくて。咲さんのこと知ってからすごく嬉しかったんだ。やっと話せる人がいるって思っちゃって。勝手にごめんね」


「さっきから管理人さん謝ってばっかりですよ。私も話せてうれしいです。それに相談したいこともたくさんあるんです」

 

 こんな形だけど、少しだけ距離が縮まったみたいで嬉しかったりして。すると何かを思い出したように管理人さんが振り返った。


「あの……それとさ……。管理人さんじゃなくて朔也でいいよ。俺も咲ちゃんって呼んで大丈夫かな?妹できたみたいでうれしいんだ」


 照れくさそうな管理人さん、格好良くてかわいいとかずるいんだけど。


「はい、もちろんです……朔也さん」


 あーー。ヤバい耳まで熱いんだけど。ひとりになったキッチンで、思わずニヤニヤしながらコーヒーを準備する私。引越しの時に買った猫耳のついたペアのマグカップにコーヒーを注ぐ。すると足元からフランの冷たい視線がほとばしる。


「どうしたの?フラン」


 私はそしらぬ顔でトレーにコーヒーを乗せた。


「テラじいさんは冷たい水は苦手なんだってさ」


「えへ。つい忘れるとこだった。一緒にお水も持ってくるね」


 うっかり忘れそうだったテラさんようの水を準備してこれでよし。


「な~にが、咲ちゃん〜朔也さん〜だよ!ちょっと急に近すぎないかぁ管理人のやろう。早く部屋にきてよママン。テラじいさん、あんまり日当たりがいいとこに置いとくと寝ちまうぞ。それに、ママンはいつも甘々のカフェオレじゃないか。同じブラックなんて背伸びしちゃってさ」


 いつもは嫌味なフランの小言も小鳥のさえずり程度にしか聞こえない。


「はいはい。フラン達はあとでカリカリごはんにいりこマシマシにしてあげるね」


「ふん。それ約束だよママン」


 ごきげんナナメなフランと一緒に部屋に入る。こうして、私とフランとルル、テラさんと朔也さんの5人での集会がはじまった。



「さて、何から話そうかのぉ」


「まずは俺のことから話そうかな。テラの話はそのあとに」


 朔也さんはコーヒーを一口くちに運び、静かに話し始めた。


────────────────────


今回は、7話目を読んで頂きありがとうございました。


急な秋の訪れに、朝晩はフランもルルもコタツから出てきません。

ここからお正月まで早いんですよね〜。


みなさん、お風邪などひかれぬよう、気をつけてくださいね。

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