第5話 汚嬢様、姉に二等分にされる。

 鍵が無く、全裸で自宅前で立ち尽くしていた私。

 そんな私の目の前で、ギギギと玄関の扉がゆっくりと開きましたわ。


「……はれ?」

「……絵里」

「ほ?」

「絵里、おがえりいいいいいい‼」

「オホおおおおお⁉」


 扉が一気に開き、中から誰かが飛び出してきて、華麗にタックルを決められましたわ。

 その威力、まさにプンバァ(ライオンキングのイボイノシシ)の如く。

 

 特大の物理的な攻撃にも似たタックルによって、私の上半身は、宙を舞いました。


「オホッ……グちゃっ」


 地面に叩きつけられてつぶれる我が頭部。

 ……また、ぐちゃぐちゃですわ。


「絵里……絵里~……こんなに軽くなって、軽く……ぎゃああああ! 絵里ぃぃ⁉」

「テメェ何やってくれちゃいますの⁉」

「ビえええええ、ごめんんんん!」


 頭を再生させ、私は突撃した人物を睨みつけた。

 突撃してきたのは十中八九あの人ですわ。

 むしろ、あの人じゃなきゃおかしいですわ。


 私は、ゆっくりとその人を見て口を開きましたわ。


「……只今ですわ。リオ姉さま」

「うん……お帰り。絵里」


 とうとう、帰ってこれたんですわね。

 そう思った私は、涙を……涙を……。


「あの、下半身返してくださいまし」

「あ、ぎゃああ”‼ 下半身が取れて喋ってるうう⁉」

「今さらかよですわ⁉」



【閑話休題】


 足を取り返し、最低限の衣服を身に纏った私はコーラをごきゅごきゅと飲み干していた。


「ごきゅ、ごきゅ……うまうまですわッ⁉」

「うるさいよ⁉ 今、夜だからね!?」

「は、そうなのでしたわッ‼ ……ポテチ、うまうまですわ‼」

「だからうるさいって!」


 バリぼり……ごっきゅん。


「ふぅ……この腐った体にしみわたりますわぁ……」


 そう、帰ってきたと、実感した私はソファーに腰を下ろしましたの。


「……そう言えば、リオ姉さまは良く私が帰ってきたことによく気がつきましたわね」

「へ? それは勿論、大事な妹だもん。匂いでも、音でも、絵里が半径百メートル以内に入れば確実に気配で分かるからにきまってるじゃん!」

「え、何それ怖いのですわ」


 ど、ドン引きですわー


「それに……」

「それに? ですわ?」


 そう私が聞き返すと、リオ姉さまは屈託のない目で私の事を見てきましたわ。


「絵里が死んでないって……信じてたから」


 そう、死んでないと彼女の言葉の通り……帰ってくると信じて待っていてくれていた目ですわ。

 そんなリオ姉さまの目を見て、眼を見れなくなった私は顔を背けましたの。


「――ッ、ふんっ。ばっかじゃないのですわ……」

「むっ⁉ 馬鹿って何さ。馬鹿って!」

「だって、馬鹿ですわよ。ダンジョンで行方不明になったら死んだと思え。これが常識ですわ。それなのに、半年の間帰ってくるかもなんて思って待ち続けてくれてるなんて……なんて……なんて…………うれしいに決まってるのですわッ‼ リオ姉さま~~!」

「っ……絵里ーーーー」

「わーン、ただいまですわーーーー!」

「うん、おかえりいいいいーーーーー!」


 そうして抱き合った私達、後に騒音でクレームがあったのはまた別の話なのですわ。
















「絵里……」

「なんですの?」

「臭い」

「ひどいですわっ⁉」

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