その思惑すらも利用して
現在、ティアの周囲に設置された罠の数は合計九つ。
一定の間隔を空けて扇状になるように手前には五つ、奥には四つ、二段に分けて仕掛けられている。
その中で俺の狙いは——地雷のトラップただ一つだ。
上手くそれだけを起動できれば、そのままティアをぶっ倒せる……はずだ。
つーか、アイツこの短時間でどんだけ仕掛けてんだよ……!?
ラウンドが始まってからまだ一分くらいしか経ってねえだろうが。
他にも最短距離での追撃を防ぐために引き撃ちしながら設置したのも含めると、既に十個以上は設置していた。
アビリティによる罠を設置するのにかかる時間は、TECやそのアビリティの習熟度などの影響を受けるようだが、何よりプレイヤーの技術が物を言うらしい。
一つの罠を設置するのに平均どれくらい時間が必要なのかは知らんが、少なくともティアの設置速度が並外れているって事だけは分かる。
それを可能としたのは、きっと長年ソマガで培ってきた経験の賜物だろう。
「——って、呑気に感心してる場合じゃねえ……な!」
咄嗟にマジックシールドを起動する。
ふと足を止めたティアがサブ側にもマシンガンを形成したからだ。
「チッ!」
——ここに来てフルアタックかよ……!!
直後、二丁のマシンガンから放たれる怒涛の弾幕が大盾に叩き込まれる。
でもまあ、マジックシールドのおかげでそう簡単に破壊される事は……って、違え!
「これ普通の弾じゃねえ!!」
さっきよりも速いペースで大盾の耐久値が削られている。
今、ティアが撃っているのはアビリティを発動させた弾丸だ。
(コイツ、今の今まで温存してたのかよ!!)
一ラウンド目ほどじゃねえけど、これだと長くは持たねえぞ。
「クッソ、随分と舐めプしてくれてたじゃねえか……!!」
けど、俺としては延々と引き撃ちされるよりは断然こっちの方がありがたい。
元より短期決戦は俺の望んでいた展開だ。
後は盾の耐久が続くうちにギャンブルを仕掛けるだけだ。
(——考えろ、どれが
ああ見えて、俺らの中で一番の理論派であるアイツの事だ。
必ず何かしらの意図を持って罠を仕掛けているはず。
まずティア自身のすぐ側に仕掛けられた四つの罠だが……それらは地雷じゃないと思う。
位置的に爆破に巻き込まれるリスクがある。
紙耐久のせいで自滅する恐れもある以上、地雷はその外側に設置された五つのどれかだろう。
じゃあ、残り五つの中で一番地雷の可能性があるのはどれか。
俺の予想では俺から見て両端のどちらか……あるいはその両方だ。
多分だけど、向こうとしても俺が罠を無理矢理突破して突っ込む可能性は少なからず考慮しているはず。
その場合、俺に一番して欲しくない行動はど真ん中を突っ切られる事だ。
幾らアビリティで弾の威力が上がっているとはいえ、確実に盾をぶっ壊せる保証がない以上、最短距離で突撃されることは避けたいだろう。
もし仮に盾を破壊できずに罠を強行突破されたら、そのまま火炎放射器の射程圏内になるからだ。
それをケアするのであれば、真ん中側の三つは落とし穴、それか習得しているのなら何かしらの行動阻害系のトラップを設置するはずだ。
そうなると、消去法的に両端のどちらかが地雷の可能性が高くなる。
両端であれば、俺の移動距離が伸びる事で盾に弾幕を浴びせる時間が稼いだ上で爆破での破壊も狙えるし、罠自体を避けるようなルートを取ったとしても、それはそれで盾破壊のチャンスが増えるからどのみち都合が良い。
最悪のケースは一つも地雷を仕掛けていない場合だが、これに関しては割り切るしかない。
あくまで条件が整っている前提で動かなきゃ俺に勝ち目はない。
罠の陣形が目前に迫ったところで、俺は右手の装備を火炎放射器に変えつつ、右端に設置された罠に向かって進路を変更する。
そして、リベンジガードを発動させた大盾を地面に叩きつけて罠を起動しようとした瞬間——、
「——お前なら俺がこうするって読んでるよなァ!」
「へっ!?」
右端の罠への攻撃を中断——左に切り返すや否や、俺は真ん中の罠に大盾を殴りつける。
刹那、地面が発光すると共に強烈な爆発が俺を飲み込んだ。
「ぐっ!」
直撃は防いだものの、大盾は破損し、衝撃でHP半分と左腕が吹き飛ぶ。
どんだけ威力高えんだよ、この地雷……!!
——でも、択は俺が読み通した。
リベンジガード起動——俺は、火炎放射器の銃口をティアに向ける。
ティアも慌てて照準を俺に合わせようとするが、動揺のせいか反応が僅かに鈍っている。
ほんの僅かな判断の遅れ……その一手の差がそのまま勝敗となった。
リベンジガードによって威力も範囲も別物レベルとなった火炎が銃口から放たれると、そのままティアをHPごと全て焼き尽くした。
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ワイガ読み読みラオス引き読み読み暴風は神でしたね
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