第13話 リトルカブの「ネジ」を巻く

 さて、リトルカブのアイドリング調整に取りかかるため、僕はバイクと向き合う。


 リトルカブのキャブレター(気化器)は、バイクにまたがった際の両足の間ぐらいの位置にあるのだが、そこにアクセスするため、まずはレッグカバーのパネルを外す。パネルの位置はバイクにまたがった状態の右足の膝の内側あたりにあって、特殊な工具などが無くてもすんなりと開けることが出来た。


 そしてキャブレターとご対面。インターネットで調べた限りでは、このキャブレターの本体中央ぐらいの位置にプラスとマイナスのネジが一つずつあるはずだった――のだが、最初はなかなかお目当てのネジを見つけることが出来ず、ようやく見つけたのは配線の陰に隠れていたプラスのネジ一つだけ。


 ちなみに、プラスのネジは「アイドルアジャストスクリュー」と呼ばれる、アイドリング時のエンジン回転数を変化させるためのもので、マイナスのネジは「エアスクリュー」と呼ばれる、エンジンに流入する混合気(ガソリンと空気が混じったもの、これがエンジンの中で燃えることでバイクは動く)の量を変化させるためのものだという。


 結構悩んだ挙げ句、あれこれ悩み続けても仕方が無いと思って、リトルカブのエンジンをかけて、試しにプラスのネジを右側へと回してみる。するとインターネットで調べた通り、エンジンのアイドリング時の回転数が少しずつ上がっていく。


 今度は左側に回してみると、エンジンのアイドリング回転数は少しずつ下がっていって、そのうちエンジンが止まりそうになった。今回の僕のお目当てのネジは、こいつだ。


 エンジンをかけた状態のままで、プラスのネジを右へ左へと回し、体感的に「これがベスト!」と思えそうなアイドリング回転数を探す。そして、昔アルバイトで乗っていた郵政カブのアイドリング音を思い出しつつ、だいたいこんな感じかなってセッティングを出すことが出来た。


 アイドリングが不調だと分かった時には結構悩んだのだが、実際に(文字通りキャブレターまでのアクセスパネルの)蓋を開けてみれば、いとも簡単に問題を解決することが出来た。カブ系のバイクは結構人気があるし、インターネット上にも様々な情報が転がっていたので解決できたこと。まさにインターネット様々である。


 あとは実際に少し走ってみて、様子を見ながら微調整をしていこうと思っていたが、近所をぐるりと走った感じでは全く問題が見られなかった。めでたしめでたし。


 なお、結局最後まで見つけることが出来なかったマイナスのネジは、インターネット上の情報によると、どうやらバイクの年式によっては存在せず、代わりにD型のネジがついているらしい。


 というのも、メーカーが排ガス規制対策として、ユーザーがエアスクリューをいじって勝手に混合気のエンジン流入量を変更出来ないように、わざわざ特殊工具が必要な形のネジにしているとのことだった。そしてうちのリトルカブは、このD型ネジを採用したキャブレターがついていた模様。


 後で本屋に行ってバイクの整備に関する本を立ち読みしてみると、どうやらエアスクリューを調整することでバイクの乗り味を微妙に変えることが出来るようだったが、個人的にはメーカー指定のセッティングからわざわざ変更したいとは思っていなかったため、この件については結果オーライだった。


 それにしても、リトルカブ(というか、カブ系のバイク全般)が比較的簡易な構造をしていたため、ある程度は素人でも修理・調整が出来るのには助かった。これがハイテク満載の最新バイクなんかだったら、バイク整備の素人の僕ではもうお手上げ、おとなしくバイク屋さんに行ける休日まで待つしかなかったところだった。

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