一番使えた小説の書き方の本

 私ごとですが、昨日5日、人生初の! 講演というか「小説について」お話させていただく機会に恵まれました。

 来てくださったみなさん、ありがとうございます。一時間半のはずが、二時間舎べていました。しかも後半「もっと言いたいことが!」と早口になっていた気が。終わってからの懇親会でも四時間喋り続け、「え、俺ってそんなに小説について話せるの?」と自分でもびびったくらいです。そのあとにもSNSで親しくしていただいた方と話させていただき、計八時間。寝て起きたらめちゃめちゃ喉が痛い! そりゃそうだ。


 この創作論(?)でも話していたことや、もう少し実践向きのことを話すことができました。逆に話すことで、わかることもありますね。また本を作るまでのあれやこれややら、作家さんのイベントにいったときの愚行、ほんとにヤバい、なども披露し、いちおう会場は、苦笑いながらもウケていたのでよかったな、と。

 いや、講演会ってね、基本、面白いことの一つも言わなくちゃいけないんですよね。例えば大沢在昌さんなんて、本当に面白い。

 ぜひ機会があったらいってみてください。とくにデビューから「新宿鮫」がヒットするまでの苦労の歴史は、多分何百回と擦りに擦りまくっているんでしょう、ほとんど落語みたいなものですね。


 さて、タイトルにもありますが、世の中、小説の書き方の本が多すぎる。そして、世の中の人みんなが小説書きたいのか!? という勢いで作家のみなさんも「作家としての身構え」のエッセイなど出されています。最近はエッセイ、あるいは映画『かもめ食堂』の原作者でもある群ようこさんも書いていました。面白かった! 小さな、といったら申し訳ないですが、本の雑誌社でなんでもやりながら、雑誌「本の雑誌」に文を書いているうち、あれよあれよと。

 皆さん「羨ましい〜」と思うかもしれませんが、それまでの群さんの蓄積(読書)や鍛え続けてきた観察眼(家族のことをきちんと冷静に眺めておられる)などなど、それぞれのやり方で作家になっていくもんです。


 5日にも話しましたし、レジュメでも引用させていただきました書き方本を紹介しておきます。

 しかしこれは、純粋な小説の書き方の本ではありません。あくまでご参考程度に。まずは図書館などでさらっと読んでみて、応用できそうでしたら買ってみてください。


 平田オリザ『演劇入門』講談社現代新書

 いきなり演劇です。僕も何度か読み返しており、この創作論でも似たことを言いまくってきました。

 平田さんは一幕もの、つまり舞台上で初めから終わりまで同じ場所で、一時間半なら一時間半、そのままその場所でなにが起こっているか、を見せる作品を作っています。

「現代口語演劇」という今現在演劇を志す人は避けては通れない。そこから何をどう書くかが始まる、くらいの理論を打ち立てた方です。

 ぼくは、短編は「出来事」を書くものだと思っています。ですので平田さんの作劇方は、参考になるんじゃないでしょうか。


 三宅隆太『スクリプト・ドクターの脚本教室・初級篇』

 三宅さんは映画監督であり、心理カウンセラー、日本で数人しかいない「脚本のお医者さん」です。

 三宅さんがこれまで教えてきた学生たちを例にとりながら、なぜこの人たちは「物語を動かすことができないでいるのか」「ではそんな人たちが面白い脚本を書くためにはどんな方法やワークが必要なのか」が語られていきます。

 今後この『ずる賢い創作術』でも語っていく、物語を骨にして自身の物語に落とし込む技術、もじつはこの本が大変参考になりました。

 脚本術だと、なんにも知らない人はハリウッド式のものを手に取りますが、あれは理屈ではわかっても、自分ではできない人が続出、余計に路頭に迷うことがあります。

 読解力がないとちょっときついかな、と思います(あるというならぜひおすすめします)。

 公式を覚えるのではなく、物語の「型」を自身で発見するほうがいいのではないでしょうか。

 こちらは超、おすすめです。


 橋本治『熱血シュークリーム!』毎日新聞出版

 こんどは少年漫画の評論集。いや、何も考えず楽しんで読んでいる少年漫画とは、いったいなんなのか? 歴史的なものから紐解き、「あしたのジョー」論、大友克洋や手塚治虫、高橋留美子に永井豪、そして望月峯太郎まで。

 ここで橋本さんは「可能性」というキーワードで少年漫画のキャラクターを捉えるのです。

 キャラクター作りに迷いのある方は、読んでみてください。最初は「なんのこっちゃ」かもしれません。だったらぜひ、最後の望月峯太郎論だけでも。


 人の本の紹介するのもなんですが、上記の3冊は、はまるとかなり役に立ちます。

 いまは読まないでもいいので、思い出したときなどにどうぞ。

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