第8話 女子の密会です。

第8話 女子達の密会です。


「…」スヤァ


放課後の風が教室を満たす。眠っている彼を眺めながら彼女は微笑む。


「まったく…ふふ、もう放課後ですよ~」


眠る彼の頬を人差し指でつつく。思った以上の柔らかさに驚くもつつく手を止められない。


「学校一の美少女が寝ている同級生の男子に何してるのかな~?」


「きゃああ!!ムゴッ…」


後ろから声を掛けてきた人物は別クラスの加藤桃子であった。


「こらこら、しーっだよ」


「…」コクコク


結構大きな声を出してしまったと思うがそれでも彼は今も尚気持ちよさそうに熟睡している。


「私は別に何もしてないわ!ただちょっと頬をつついただけで…」ゴニョニョ


「はは、どうやら同級生達は君を神格化しすぎなようだね。噂と違う。あ、いい意味でね?」


「噂?」


「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花、成績優秀、クラスメイト同級生学年問わずみんなに優しい。只一人を除いて、だったかな?」


「あ…」


その一人は仁太だ。彼の前ではどうしても意地を張ってしまう。その結果、彼に対して酷い態度をとってしまうことも少なくない。その噂はそこから来ているのだろう。


「でも、その噂は訂正するべきだね。さっきの君を見ていて思ったのだが、どうやら彼の事が」


「わあ!!ストップ!場所を変えましょ」


「ああ、ごめんなさい。配慮が足らなかった」


二人は場所を屋上に続く階段へと変えた。


「それでそれで君は彼の事が好きなのかい?」


「あ、えっと…」コク


頷く。自身の頬が熱く熱を帯びていくのが分かる。耳まで熱くなっているかもしれない。すると加藤さんは私を抱きしめた。


「きゃああ~いいね!でもその緩み切った顔は誰彼構わず振りまいちゃダメだよ?私が男だったらセクハラでthe endだったからね!」


危なかったと額の汗を拭う素振りを見せる彼女は私が最初に抱いていた印象と異なっていく。


「いや~ごめんね?私恋話に目が無くてね、それも知り合いの話だったから余計に制御が効かなかった」


「なら、私も質問しようかな。加藤さんと仁太は中学からの知り合いなのよね?中学の時の仁太、加藤さんから見てどうだった?」


「ああ、和栗から話を聞いてるからその辺りは知ってるのか。ん~最初は不真面目な奴だなって思ったんだよね。仁太は授業中に寝るから先生に怒れてたし、授業に積極的ではなかったからね」


「そうなの!?」


幼い時、そして高校に入ってからの彼の印象しかなかった。幼い時はのんびりとしていたが先生の言ったことは守っていたし、高校での授業も真面目に受けていた。不真面目と聞いて驚いた。


「彼は陸上部だったんだけどね、部活内でも不真面目なのかと思ったらそうじゃなかった。彼の走ってる姿を見た時は釘付けになったね。私の中の彼に対しての不真面目のレッテルが剥がれ落ちっていた」


「うんうん」


授業は不真面目でも仁太は仁太だ。


「そこからは口説きまくったね~友達になろうって!そして頑張った結果、こうして友達になれたって訳だよ。ま、私の話はこんなとこかな」


「ありがとう加藤さん。仁太の話が聞けて良かったわ」


「私の事はカトちゃんでいいわよ。名前はあんまり好きじゃないからそこは配慮してもらえるとありがたいわ。それと、彼のご両親への挨拶は早めにね?」


「ま、まだそんなんじゃないです!!」

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