第37話 アルのお土産 11
「ライラちゃんとは、めでたく兄妹となったので隠し事はなし。アル同様、俺もライラちゃんと一生離れないってことで、全部しゃべっちゃおうっと」
ジュリアンさん……。
口調は軽いのに、言ってることが重すぎる。
「早く話せ。何を聞いても、ライラは俺が守る。他人のジュリアンは気にするな」
「えー、ひどい!」
「で、グリシア侯爵家に行った理由はなんだ?」
アルが厳しい口調で聞いたとたん、すっと笑みを消したジュリアンさん。
「グリシア侯爵が異国の怪しげな者を屋敷に住まわせているっていう、気になる噂を耳にした。しかも、あの疑り深いグリシア侯爵が、相当心酔しているらしい。おそらく呪術者だ。しかも、かなりやばい感じのな。それを探りに、イザベル嬢の誘いにのった」
「おい、ジュリアン! そんな状況で屋敷に行ったのか? 薬でも盛られたらどうする? おまえを狙ってるあの女なら、それくらいやるぞ」
え、薬……?
侯爵家のご令嬢なのに、そんな危ない人なの!?
「さすが、アル。だされたお茶を飲むふりしをして持ち帰ったら、よくわからない薬が入っていた。成分は今、調べている。本当にあの親子は、目的のためなら手段を選ばないな。まあ、手練れの護衛も連れてたし、屋敷の外にも、護衛を待機させ、指示した時間までに俺がでてこなかった場合は、父とアルに連絡がいくよう命じていた。ほら、俺って用意周到だろ?」
「はあ? どこが用意周到だ? いきなりそんな連絡がきたら心臓に悪いし、助けも遅れる。それならそれで、前もって言え。そんな色仕掛けをしなくても、もっとましな方法を考える」
え、色仕掛け?
思わず、ひいた目でジュリアンさんを見てしまった私。
その視線にジュリアンさんが、あわてたように首を横にふる。
「あ、ライラちゃん。そんな目で俺を見ないで? 妹にそんな目で見られたら悲しい。それに、色仕掛けっていうほどのこと、してないからね? ただ、ちょっと甘い言葉をかけながら、お茶をしてただけだから。あ、お茶を飲むふりか……。断じて、触ったり……」
そこまで言ったところで、アルに頭をはたかれたジュリアンさん。
「おい、ライラの耳が汚れるだろ!」
「ジュリアンさんって、筆頭公爵家のご子息なのに、すごい無謀……。あっ、ごめんなさい!」
驚きすぎて、つい本音が漏れた。
「いや、ライラ、その通りだ。子どもの頃から、ジュリアンは気になると、危ないところにも平気で首をつっこむ。俺が注意してもやめない。みんな、見た目の甘さで騙されるが、中身はただの危ない奴だ。……で、何か分かったのか?」
アルの問いに、ジュリアンさんが、意味ありげに微笑んだ。
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