第27話 アルのお土産 1
今日の私は、朝から心がはずんでいる。
気が付いたら、変な歌まで歌っていたらしい。
屋敷のみんなには生暖かく見守られ、お母様はクスクス笑い、お父様はなんだか寂しそう。
でも、しょうがないよね。
だって、今日はアルがくる日だから。
それより、アルが来る前に、庭の様子を見ておかなきゃ!
だって、アルがつけていた邪気から生まれた種が、昨日の夕方、咲いたばかりなんだもん。
アルに見せられたらいいなあ!
が、アルが見られるかどうかはわからない。
というのも、邪気から生まれた種は、花が咲くタイミングもわからないし、散るタイミングもわからない。
でも、花が散った後は全て消えてしまうのはどれも同じなんだよね。
もうすぐ咲きそうだなあと思って、翌日見たら、あとかたもなかったということは、よくあること。
毎日、様子を見ている私でも、花を見られないこともあるからね。
だから、まだ咲いていますようにと願いつつ、庭にでた。
あ、まだ咲いてる! 良かった!
私は花に近づき、そっと声をかけた。
「もう少しで、アルがくるからね。それまでは頑張って咲いていて。お願い!」
すると、細長い花がいっせいに私の方を向いた。
どうやら、私の声に反応しているみたい。
この花は、細長い紐みたいな花びらが沢山あって、ふにょふにょと好きに動いている。
色は、グレーに真っ赤な色が流れていて、マーブル模様みたい。なんだかおしゃれだな。
「のどが渇いたんじゃない? お水をあげるね」
私は花に語り掛けながら、優しく、水をまきはじめる。
水をはじきとばして、嫌がる花もあるのだけれど、この花は大丈夫ね。
だって、ほら!
紐のような花びらが、いっせいに、お水のほうに伸びてきた。
一生懸命、お水を飲んでいるみたいよね。
「さすが、王都の邪気ね。珍しくて、おもしろいわ。きみたち、とっても素敵だよ! フッフラフーン」
と、鼻歌まじりに、花に声をかけていると、背後から笑い声がした。
「アル! 来てたの?!」
「ああ。ライラを驚かそうと思って、そっと歩いてきたが、必要なかったな。楽しそうに鼻歌を歌いながら、夢中で花に話しかけてるし。こんなに近づいても、ちっとも気づかないもんな」
そう言って、優しい笑みを浮かべるアルを見て、ふと出会った頃を思い出した。
きれいな紫色の瞳が、やたらと鋭かったアル。
あの頃は、王都へ戻るたび、ごっそりと邪気をつけてきていたよね。
でも、今は、邪気もつけていないし、別人のように、やわらかい顔で笑うようになった。
アルが元気だと私もすごーく嬉しい!
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