第17話 オレンジ色の髪の女性
オレンジ色の髪の女性からでた黒い煙が、パトリックにたどりついた。
そして、首にまきつきはじめる。
女性の髪の色のオレンジと、邪気である黒色の煙。
ん? この色の感じ、今さっき見たよね……!?
私はあわてて、バッグをあけて、さっきパトリックの邪気からとれた花の種をとりだした。
オレンジ色に、黒い糸のようなものがぐるぐるとまきついたような模様が浮き出ている種。
そう言えば、パトリックが私の家に来た時、邪気を吸い取ってうまれた種も似たような感じだった。
そうか……。このオレンジ色の髪の女性からつけられた邪気だったんだ。
そして、今も、黒い煙が、パトリックの首に幾重にもまきついていっている。
パトリック、さっきもこの黒い煙に首をしめられて、苦しそうだったもんね。
相当、強い邪気に思えるけれど、パトリック、この女性に危害を加えられるほど恨まれてるのかな……?
あ、でも、黒い煙の動きをよく見ると、パトリックの首にからみついて、自分のほうへ、引き寄せようとしてるみたい。
恨みよりも強い執着みたいな感じかも……。
二人の関係も、理由もわからないけれど、さすがにこのままだと、パトリックが危ない。
なんとかしなきゃ……。
あ、そうだわ! 私の能力を知っている両親に手伝ってもらって、あの女性からパトリックを引き離そう。
と思ったけれど、両親を探せば、パトリックのご両親とともに、沢山の招待客に取り囲まれて話をしているのが見えた。
あの輪の中に入って、主催の公爵ご夫妻の失礼にならないように、両親を呼んでくるには、時間がかかりすぎる。
だって、こうしている合間にも、パトリックは女性の方へと近づいている。
邪気が見えない人には、ただ、パトリックが女性の方へと歩いていっているように見えると思うけれど、私の目から見ると、パトリックの意思ではなく、黒い邪気によって女性のもとへと引っ張り寄せられているようにしか見えない。
やっぱり、私が、なんとしてでも、食い止めるしかない!
そして、ついに、パトリックは、オレンジ色の髪の女性のそばにまで引き寄せられた。
ここの位置から、パトリックの表情は見えないけれど、女性からでる黒い煙が、パトリックの首だけじゃなく、全身にまきつきはじめた。
私は、そーっと近づいていき、さりげなく、パトリックの後ろ姿に向かって手をかざした。
少しだけでも、黒い煙を吸い取ろうと思ったから。
でも、距離が離れすぎていて、上手くいかない。もっと、近づかないとダメだわ!
私は、二人に少しずつ近づいていく。
その時だ。
オレンジ色の髪の女性が、私の方を見た。
うわっ!
一気に黒い煙が、私の方にむかって、波のようにどばっと押し寄せてきた。
私は、とっさに、柱の陰に隠れた。
なに今のっ!?
こんな黒い煙、見たことないんだけど!?
鳥肌がたった……。
自分の全身をさっと確認すると、ドレスに泥がはねたように、黒い煙が少しひっついている。
すぐに、私は手のひらを自分にむけて、邪気を吸い取った。
幸い邪気は少しだけだったので、手のひらに現れたのは、オレンジ色に黒い線が入った小さな豆のような種だけだ。
とにかく、パトリックを助けなきゃ……。
息を整え、柱の陰から、おそるおそる顔をだす。
すると、オレンジ色の髪の女性が私の方を見て、にやりと笑った。
そして、見せつけるように、パトリックと腕を組んだ。
パトリックがあわてて、振り払おうとしているけれど、振り払えないようだ。
そりゃ、そうよね……。
あれだけ黒い煙でがんじがらめにされてしまったら、身動きとれないと思う。
オレンジ色の髪の女性は、動けないパトリックにもたれかかるようにして、顔をよせた。
邪気の見えない人には、仲睦まじい二人にしか見えない。
まわりが一気にざわつきはじめた。
「公爵家の次男が連れている、あの女性はだれだ?」
「さっき紹介された婚約者の方とは違うわよね。まさか、愛人……?」
「婚約者を紹介したばかりだぞ。ありえないだろう」
「なんて、はしたないの。こんな大勢の前で、どういうつもりなのかしら」
「婚約者の方が、かわいそうだわ」
「公爵家の次男の方はダメだな。優秀な長男の方とは全然違う」
いろんな声が聞こえてくる。が、今はそれどころじゃない。
例え、パトリックがあの女性を好きだとしても、身の危険がある状態で放ってはおけない。さすがに、あんな邪気を見て見ぬふりはできないもんね。
あの危ない邪気が消えたのなら、大喜びで婚約解消する。
二人でお幸せになってほしい。
が、今は、あの邪気を吸い取ることに集中よ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます