第三節 悲しませてすまない
第四十四話
それまで黙っていた
「悲しませて、すまない」
「離して! あなたは今でもあの女を愛しているのに! 分かっているのよ!」
「聖子」
「わらわは……わたくしは、ずっと、お待ち申し上げていたのです。あなたが、いつかわたくしの元に来てくれることを」
「……すまない」
「わたくしは……ずっと、あなたの妃になることを、ずっとずっと――幼いころから夢見てきたのです。まだ、成人する前、あなたにお会いしたときから、ずっと。……ずっと、あなたのことをお慕い申し上げておりました。……文字の能力がないと嫁げないと分かっていたので、
これで、あなたの妃になれると。それなのに……‼」
聖子皇后は泣いているらしかった。
辺りは依然として真っ暗で、ぼんやりとした
……あれ?
聖子皇后は結局、
それとも、愛を拗らせて呪ったってこと?
でも、明らかに
「……あのう、聖子皇后」
あたしは恐る恐る、声をかけてみる。返事はない。聖子皇后は、
「聖子皇后が
あたしの台詞に、聖子皇后は顔をあげて、きっとあたしを睨みつけ、言った。
「そんなことするはずはない! わらわは……わたくしは、
わたくしを見て欲しかっただけなのです。
「だけど、
「それは話だけです。わたくしは、そういうものに気をつけなさい、という意味で話したのです。
わたくしは、実は、
「そうですか」
なるほど。
お互いがお互いを犯人と目していた、ということ。
でも、
あたしは、聖子皇后の言葉が嘘ではないと思った。
「わたしは父上に
では、誰が?
そこにいる全員が思った。
誰が?
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