第53話2人には帝国の首都で幸せになって欲しい。

「エレノア、本当にレイモンド・サムと結婚するのかよ。帝国の要職試験を受けに行かないのか?俺はともかくエレノアは優秀だし合格すると思うぞ。それにエレノアが好きなのは実は違う人だと思っていたんだ。」

俺はエレノアが好きなのはフィリップだと思っていた。

だから大好きな2人がくっつくようにと願っていた。

次の要職試験は2年後だ、姉上の手紙によると帝国の要職になると本当に食事も買い物も帝国の支払いになるらしい。

どれだけ宝石やドレスを買おうと、品位を保つための支度品としてお金を支払わらなくても帝国ヅケで処理されるという。

一握りしかなれない職でも、そのようなことをしていたら世界77億人の人間は夢を見て努力するだろう。


それに姉上は帝国の伯爵位を貰って、仕事をしている。

きっと、それは帝国が姉上の能力を見て与えた爵位なのだろう。

姉上が卒業したのはサム国のアカデミーで、帝国で爵位をもらうには帝国のアカデミーを卒業する必要があると思うのだが関係ない。


相当の能力があるということと、爵位がないとできない仕事をさせる予定だと言われ合格を告げられると同時に帝国の爵位を賜った。

本当に今、帝国で行われていることは今までの常識を覆している。


レイモンド・サムは国王になると、あっさりと帝国にサム国を受け渡し帝国のサム領の領主となった。

その恐ろしいほど早い行動力にサム領の領民はレイモンド・サムを賞賛した。


2年も世界の仲間はずれのような状態になっていて、ストレスを溜めていた民衆は彼にかなりときめいたようだ。

彼の行動は売国奴や反逆者と3年前なら罵られただろうに、今では待ち侘びてたように歓迎される行動だった。

王位にこだわらず、自分たちのことを考えた行動のできる彼を周囲は尊敬しはじめた。

最近彼と話したがフィリップと兄弟とは思えないほど、相変わらず引くほど性格が悪かった。

彼自体は6年くらい女遊びをやめているだけで何も変わっていない気がするが、周囲の彼を見る目が軽蔑から尊敬に変わるという現象が起きている。



エレノアは来月には彼と結婚し、領主の彼を支えると言っている。

あんな女好きで嫌な奴よりも、優しく謙虚なフィリップと結ばれた方が幸せになれるのにと思ってしまうがエレノアが決めたことならば仕方がない。


「私はあなたの思っている人のことも好きだし、ハンスも好きだから2人には帝国の首都で幸せになって欲しいわ。」

エレノアの言うことに思わず俺は耳を疑い絶句した。

彼女は俺とフィリップ王子をくっつけようとしているのだ。


彼女のジェンダーレスな考え方は帝国の価値観なのだろうか。

彼女は明らかに女性であるエレナ・アーデンのことを性別がないと言ったりしていたこともあった。

帝国の首都に行ったらカルチャーショックを受けそうだ。

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