第49話本当に悪女ですね。でも、愛しています。
「エレノア・アゼンタイン侯爵令嬢、あなたと踊れる光栄を僕にいただけますか?」
私は目の前にきたフィリップ王子に驚愕した。
私が魅了の力を使って、彼を呼んでしまったに違いない。
聡明な彼のことだ誰に言われなくても、私と接触しないようにした方が良いことは分かっているはずだ。
周囲の視線が一気に私たちに集まるのがわかる。
踊ってはいけないと分かっていても、プラチナブロンドから覗く彼の海色の瞳を見ていたら衝動を抑えられなかった。
私は気がつけば彼の手に自分の手を重ねていた。
「エレノア、そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫ですよ。」
踊り出しながらも、不安そうな顔をしていたのか王子殿下が声を掛けてくれる。
私はハンスの歌ではないオーケストラの演奏の中、大好きな王子様と踊っているのだ。
彼の輝かしい評判を落としてしまうことになるとわかっていて、感情を抑えられないお姫様のふりをした野良猫だ。
「実はダンスがとても上手ですよね、エレノアは。」
彼に言われた言葉に、私が初めて彼と踊った時に緊張しすぎて彼の足を踏みまくったことを思い出した。
「あの時は、本当に申し訳ございませんでした。骨を何本か折りましたよね?」
私は恐る恐る彼に尋ねると彼は今まで見たことのないような眩しい笑顔を返してくれたあと、私を引き寄せ耳元で囁いた。
「骨が折れてくれてたら、エレノアは責任をとって僕のものになってくれましたか?」
聞き間違いのような言葉に驚きのあまり固まっていると、いつの間にかダンスは終わっていた。
「エレノア、サム国がどのような国かわかっているはずです。フィリップと踊るリスクを理解できませんでしたか?フィリップも王家の評判をあげる広告塔の役割を放棄していましたね。」
私の誕生日は王太子の婚約者ということで王宮の宴会場で行われた。
アゼンタイン侯爵邸へ帰る馬車の中、私はレイモンドに初めて怒られている。
でも、自分が悪いのだから仕方がない、怒っている彼の顔を見るのが怖くて顔を上げられない。
「フィリップ王子殿下は何も悪くないです。私が彼と踊りたいと願ったので、魅了の力を使って呼んでしまいました。彼は何も悪くないのに不義理を疑われ悪い噂がたってしまいます。どうしたらよいのですか?助けてださいレイモンド。」
私は顔を上げてレイモンドの顔を見たら、彼は怒っていなくて私を心配するような表情をしていた。
彼の海色の瞳に映る私は、目を赤くして涙をポロポロと流している。
「エレノア、何も心配しなくて大丈夫です。あなたが好きだと言ってくれた飛び抜けた能力を使って私が何とかします。貞節を重んじるサム国で2人の王子を誑かすなんて、本当に悪女ですね。でも、愛してます。」
彼は私の涙に口づけをすると、私を強く抱きしめてきた。
私はその温もりに、初めて彼ならなんとかしてくれると安心した。
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