プロローグ

西の空がうっすらと明るい。部活が終わり、いつも通りの道をいつも通りの時間に帰る。

冬が近づき、暗くなるのが徐々に早くなっている。


「はぁ、今日も疲れたな...しっかりとしぼられたし」


僕は七草翔太。

高校2年生の17歳だ。部活は剣道部に所属し、昨年は1年生にしてインターハイベスト8の成績を残した。ベスト8の結果を残すほどであるから、学業を疎かにしていると思われるだろうが、定期テストでは常に1位だ。とにかく文武両道を目指し日々頑張ってきた。ちなみに、顔立ちは上の下くらいである。

身長も180cmと周りの男子よりも少し身長が高いくらいだ。この身長の高さも剣道の強さにつながっていると考えている。

また高校卒業後は国立大学に進学したいと考えている。帰宅後は時間の許す限り、勉強を続ける毎日である。


なぜ翔太がここまで頑張るのかには理由がある。翔太には家族がいない。

翔太が生まれて間もない頃に両親を交通事故でなくした。

翔太は祖父母に引き取られたが、祖父は3年前に、祖母は昨年、翔太が高校に入学し、3ヶ月後に亡くなってしまった。


祖母までいなくなり、頼る人がいなくなっため、バイトをする為に部活をやめようと思った。しかし、祖父母は翔太の為にお金を遺してくれていた事を祖母が亡くなった数日後に訪ねてきた弁護士さんに聞かされた。なんと、バイトをすることなく、大学を卒業できる程の大金だ。

本当に感謝しかなかった。両親が亡くなってここまで育ててくれたのに、お金まで遺してくれていたのだ。

翔太は、この恩に報いる為に勉強、部活両方を一生懸命頑張ってきた。


しかし、翔太の人生も終わりが近づいていた。


「きゃーーー」


突然女性の悲鳴が聞こえた。


「にっ、逃げろー」


それと同時に前方からたくさんの人が走ってこっちに向かってくるのが見えた。


前方で何か起きているようだった。そう思った翔太は急いで悲鳴の聞こえる方へ向かった。翔太はとても正義感の強い男だった。


急いで駆けつけるとそこにはナイフを持った目の血走った男がナイフを振り回していた。男の周辺には複数の人が血を流しながら倒れていた。辺りは血だらけだが、被害にあった人々はまだ息をしている様に見えた。


今止めなきゃ被害が広がる…

そう思った翔太は、ナイフを持った男に飛びかかった。


「離れろ、邪魔だ。」

「いい加減にしろ!ナイフを離すんだ!」


翔太は必死になってナイフを持った男を抑えようとした。

何とか男の動きを抑えているとパトカーのサイレンが聞こえてきた。飛びかかって数秒の事だ。


「よかった、警察だ。」


翔太は安心した。

しかし、安心と同時に一瞬力が抜けてしまった。

その瞬間、男の持つナイフは翔太の腹部に突き刺さっていた。


「うっ...」


翔太の腹部からは大量の血が流れ出ている。次第に力が入らなくなっていた。

そして翔太の瞼が自然と下がる。意識も次第に遠のいていく。


ここで人生が終わってしまうのか。

そう思った瞬間、目の前が白く光った。

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