第8話 お金を稼ぐって大変



「全然売れなかった……」



 魔獣の森から帰ってきた翌日、採ってきた物を売りに行った。



 ダンジョンで集めた素材や食料は、市場を管理する「商業ギルド」で買い取ってもらえる。

そこでさっそく商業ギルドに行って、買取りをお願いした。



「待たせたな、買取りカウンターへようこそ。少年、名前は?」



「黒保根修汰」



「クロホネ・シュータ……シュータだな。それで、何を買い取ってほしい?」



「この袋に入ってる食材を買い取ってほしいんだ。昨日魔獣の森で採ってきた」



「ふむ、これは……」



「どう、いくらくらいになる? 1万エルいっちゃう?」



「全部で300エルだな」



「……えぇっ!」



 安すぎだろっ! あんなにがんばって、ブタの魔物だって追い払ったのに……。



「……俺がスラムのガキだから?」



「ウチは客が誰だろうと買取り基準は変えねえよ。見てるのはモノだけだ」



「それにしたってさあ」



「じゃあ今から説明してやるから、しっかり聞け」



 買取りのおっちゃんが、買取り内容の説明をしてくれた。



「まず、このキノコな」



「うん」



「これは灼熱キノコっていって、食うと内臓が焼かれてボロボロになっちまう毒キノコだ。価値はねえ」



 これ毒キノコだったんだ。たしかにかなり辛かったけど……

ああ、俺は多分スキルか何かで食っても死なないから平気だったんだ。



「次に、この木の実」



「うん」



「これはクリミだな。殻を割って、中の実が食える。シュータが持ってきた袋を満杯にする量で600エルだ」



「俺が採ってきた量は袋半分くらい……じゃあクリミの買取りが300エルってこと?」



「ああそうだ。これは買い取らせてもらう」



「残ってる草は? 薬草っぽいの採ってきたんだけど」



「これは全部ただの雑草だ」



「そ、そんなあ~!」



 がんばって草むしりしたのに……。



「ちゃんと売れるもんを見分けられるようになるんだな」



 __ __



「もぐもぐ……ごくんっ。そんな感じで、儲けはたったの300エルだってさ」



「たった今、200エルになったけどな」



 串焼き屋に寄っておっちゃんに愚痴る。

あ、お金貯めないとなのについ買っちゃった。美味いんだもんこれ。



「日が落ちるギリギリまで頑張ったのにさあ。ツノの生えたブタにも襲われるし、散々だったよ」



「なんだ坊主、森でトンホーンに出くわしたのか」



「あのブタの魔物、トンホーンっていうんだ。あと俺の名前、修汰だから」



 アイツ、クリミ食ってたし、俺の商売敵かもしれない。



「というか、シュータ、お前が今食ってる串焼きはトンホーンの肉だぞ」



「モグ……えっこれあのブタの肉なの!?」



 今度遭遇したら焼き豚にしよう。じゅるり。



「ああ、トンホーンは味もそこそこ良くて、値段も安いから市場でもよく売られてる」



「……もしかして、商業ギルドで買い取ってもらえる?」



 そう聞くと、おっちゃんはニヤリと笑った。



「そうだな、クリミをチマチマ拾って売るよりは稼げるだろうな」



「よっしゃ!」



 トンホーン狩り、いきますか!



「……その前に、もっと鍛えて強くならないと」



 昨日はトンホーンを押さえるのに精一杯だった。

きゅーたろうに助けてもらってなんとかなったけど、今のままじゃ多分勝てない。

しばらくはクリミ拾いと、売れる食材の見分け方を勉強しよう。

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