第6話 16時35分②

「いやぁあああああ!!!!」

 遅かった。

 因崎の叫び声に続き、別荘に宇治治の甲高い悲鳴がこだまする。


 部屋の入り口から中を見る。

 ホテルのような綺麗な室内にダブルサイズのベッドがあった。

 そこに確かに、蛇九が…いた、のだ。


 それは…異様な光景だった。

 蛇九はベッドにそのまま、仰向けで寝ていた。

 目は閉じていて、安らかな表情をしている。


 けれど、けれど胸には太い杭が真っ直ぐに刺さっていた。

 口と胸からは大量の血が吹き出したようで、それが部屋中を真っ赤に染めあげている。

 むわっとした生臭い匂いが入り口に漂ってきた。

 人目見ただけで分かる。

 蛇九は…、死んで、いる。


「いや、いやだ…、こんなの、なんで、なんで…」

「宇治治!こっちに戻れ!」

 六角が呆然とする宇治治の腕を強引につかみ廊下に戻す。


「蛇九!」

 怖くないといえば噓になる。

 こんな、こんなスプラッタ映画みたいな惨状に出くわすなんて普通に生きていたら起こるわけがないのだ。

 だけど、もし、まだ蛇九が死んでいなかったら?

 俺は蛇九の名を呼び部屋に飛び込もうとした。


「やめろ!」

 けれどその時、六角が俺の肩を強く掴み制止する。


「なんだよ…六角、離せよ!まだ生きてるかもしれないんだぞ!?」

「あぁ?見たら分かんだろ?蛇九はもう死んでんだよ…!なら警察とか呼ばねぇとだし、こういう時はわかんねえけど、死体いじったりとか部屋ん中、荒らさない方が良いだろうが!!」

 六角がイラついた口調で俺に説明する。

 でも!と俺は怒鳴りたくなったが、六角の言うことの方が正しいのかもしれない。

 あんな状態で、ピクリとも動かない。

 やっぱり蛇九は…。


「分かった…、とりあえず皆で応接室に戻ろう…」

 俺がそう言うと、六角は軽くため息をつき蛇九の部屋のドアをゆっくりと閉めた。

 顔面蒼白でその場に腰を抜かす因崎を立ち上がらせ、恐怖で震えている宇治治の肩を抱くと、俺たちは応接室に戻った。

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