宝島

第1話

あたり一面金に緑。風が緑を激しく揺らしている。

「f、おい、f」

遠くで僕を呼ぶ声が聞こえたかと思うと、突然視界に浅黒い青年の顔が現れた。

「またこんなところで寝やがって。昼飯だ。起きろ。」

青年はそう言って微笑んだ。僕は渋々読んでいた本を持って起き上がった。青年はバンザという。僕は産まれてまもなく両親を失い、海沿いの街で漁師業を営むバンザの父、リリーに育てられた。町の人々は僕にfと名付けた。

振り返ると、リリーの船が港に浮かんでいた。


リリーが海から戻った日は、3人揃って遅めの昼食をとる。fがこの家に来たときからの習慣だ。今日はの昼食はサーモンとイモを煮たものだった。簡素だが、近くの料理屋で見習いをやっているバンザが作っただけあり、なかなかうまい。

「この時期のサーモンは一番うまいんだ。脂が乗ってるだろう?」

リリーがそう言って豪快に笑った。


昼食を食べ終えると、リリーはおもむろに言った。

「おい、fも今度の漁についてこねえか?」

「どうして」

「次の漁はただの漁じゃねえんだ。怪魚を釣るんだよ。怪魚だ」

「怪魚なんているか」

「それがいるんだよ。隣の港のバーで知らない爺さんに聞いたんだ。ここから十里ほど北に行った海で、大きな影が船の周りをぐるぐる泳ぐんだと。最初は俺もただ爺さんの見間違いだろうと思った。だがどうも本当らしい。バーにいた奴らのほとんどがその影をみてるんだ。」

「ならどうしてみんな釣らないんだ。そんな魚いないからじゃないのか?」

「俺もそう聞いたんだ。そしたらあいつら、こう言った。「その魚は船より大きいんで、とても釣り上げられない」ってな」

船より大きい怪魚なんているものか。僕はそう思いながらも、その怪魚とやらを見てみたい気持ちもあった。


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