第6話 うどん

 無類のうどん好きだ。

 毎日3食うどんでも構わないくらい、いや、むしろそうしたいほどに、うどんが好きだ。

 けれども家人は、それでは栄養が偏るからと、あまりうどんを食べさせてはくれない。だから、自分で食事を作る時や外で食べるときなどは、必ずうどんと、決めている。


 それでも、なにか物足りなさを感じていたある日。

 コンビニでなんと、『片手でうどんスナック』なるものを見つけ、早速購入した。どうやらうどんがそのままスナック菓子状になっているらしく、湯も不要で、袋から出したら片手でそのまま食べられるらしい。


 これならば、家人が家の中にいようがいまいが、部屋に入ってしまえばいつでも好きな時にうどんが食べられる。

 食べてみないことには、好みの味か食感かは分からないが、試して見る価値は十分にあるだろう。


 帰宅後、訝る家人を尻目に、早速部屋に籠もって『片手でうどんスナック』を食してみる。


 ……本当に、うどんがそのままスナックになっている!謳い文句に嘘偽りなし!


 あまりの旨さに貪るように食していると、スナックの欠片が気道に入り込んでしまった。


「う……」


 苦しさに、思わず呻き声が漏れる。

 慌てて胸元をドンと叩くと、スナックの欠片は無事気道から飛び出し、食道を通過していった。


 ホッと一息つきながら、思わずこんな言葉を口にしていた。


「この『うドン』は、好きじゃないんだけどな……」


【終】

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