第4話 お顔周りにクリームです

「先輩、おかえりなさーい」

「今日も頑張りましたねー」

「頭を撫でてあげます。よしよしよしよし……」

「えらいぞー♪ わしゃわしゃわしゃ……♪」



「……あ」

「気付きました?」

「そーです。先輩のパーカーです」

「着替えは持ってきましたけど……どーせなら先輩の借りようかなって」



「サイズおっきくて、いい感じですよ?」

「ぶかぶかーって感じで」

「先輩の匂いもするし。……ふへへ」



「ちなみにどーですか、先輩」

「そんな愛しのかわいい後輩ちゃんが先輩の帰宅を心待ちにしてたんですけど」

「何か言うことはありますか?」



「いやほんとに帰ってないのかって」

「そりゃそーですよ。ちゃんと甘やかすって約束しましたからね」

「誠心誠意、甘やかせてもらいますから」



「じゃ、先輩、今日はお風呂にします? ご飯にします? それとも……」

「あ、お風呂ですか。はい」

「もちろん、ちゃんとお湯は沸いてますよ」



「……そしたら先輩、あがったら、ちょっとだけ時間貰ってもいいですか?」

「保湿と……あとは顔周りのマッサージをしてみたいんです」

「はい、お願いしますね」

「ごゆっくりどうぞ♪」



(数秒、間を空けて)



「お、お風呂上りの先輩だー」

「これはレアですねー。ウチですらあんまり見たことないのでは?」



「でも……なんかちょっと……えっちですね」

「写真撮ってもいいです?」

「えーなんでですか」

「恥ずかしいー? そーですかー。残念」

「じゃあまた今度ですね」



「はい、今は保湿のが先ですから」

「先輩、またちょっとお布団に寝てもらえます?」

「今日は普通に枕に頭を乗せてもらって……仰向けで……はい、おーけーです」



「じゃあ今から、この化粧水とクリームで保湿させてくださいね」

「お風呂上りって、肌から水分が失われちゃってるんですよ。だから保湿しないと、乾燥して肌が痛んじゃうんです」

「これで先輩もぷるもち肌にー! ……なるかはわかんないですけど。やんないよりはいいですよね」



「ウチは先輩の頭の上に座りますね」

「先輩は目を閉じてりらーっくす、ですよー」



「あ、電気が眩しいと思うので、先にタオルを目に乗せますね」

「先輩がお風呂入ってる間に、ぬるめのお湯に浸したタオルを用意しときました」

「これを目の上に乗せますね……よし」

「では先輩、じっとしててくださいね」



//SE 液を手に出す音。ちゃぽちゃぽ、という感じ



「では化粧水から……」

「えい」

「塗るというより、染みこませるような感じでやりますよ」

「ぺた……ぺた……」

「もうちょっと出しますね」



//SE 液を手に出す音。ちゃぽちゃぽ、という感じ



「よいしょ」

「ほっぺたも……おでこの方も……よし」

「どうです? 肌に水分がしみ込んでく感じ……ありますか?」

「じわー……っと……」



「……なんかこうしてると、先輩の顔が近いですね」

「先輩はタオルで見えてないですけど」



「へー、こんな感じになってるんだー……」

「……あ。すみません」

「なんかじっと見ちゃった。えへへ」



「じゃ、次にクリームも塗っていきますね」



//SE クリームを手に出す音(プッシュタイプの容器)。かしゅかしゅ、という感じ



「出したクリームを……手の平に広げてー……」

「ほっぺたからいきますよー。……えい」

「ゆーっくり塗り広げていきますね」

「化粧水でしみ込んだ水分にー……クリームで蓋をするような感じでー……」

「ぬり……ぬり……」



「ついでにお耳の方もやりましょうか」

「こっちもマッサージですよー」

「ぬり……ぬり……」



「まったりリラックスしてくださいね」

「あ、先輩、顔の力が抜けてますね」

「これ、好きですか? ……そですか」

「またやってあげますね」



「もっと前からやってあげればよかったですね」

「そしたら、先輩もうちょっと元気だったかもしれないですし」



「……へへ」

「でもその分、これからいくらでもやってあげますよ」

「ウチ、先輩のこと……好きですし」



「…………」

「……これは伝わってないな」

「ま、いいです」

「はい、終わりですよ。先輩」



「そうだ先輩。今度のお休み、またおうちで映画見ましょうよ」

「あとはゲームしたり……。ご飯食べたり……。眠くなったら寝たり……」

「だらだらしたくないですか?」

「はい。ウチがだらだらのサポートをしますよ」



「……えへへ」

「楽しみにしててくださいね」

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