…………2-(6)

 今日は競技会当日。昨日になって、優美が深沢に頭を下げにきた。優美の反省した様子に、深沢も悩んでいたが、折角だから、出場してみるかと、意外に簡単に引き受けてしまった。

 なつめが、観客席の一番前に居座って、落ち着いていられるのも、優美が初めて謝ったからだ。今までの罪滅ぼしに、なつめの分まで頑張ってみたいと。もう以前のような、見下したような視線はなく、昔のように真っ直ぐな優しい目で見つめていた。何かが吹っ切れたような感じだった。

「倒れた奴が、出るなんて」

 ぶつぶつ文句を言いながらも、心配そうななつめの横で、楽しそうに笑っている潤子がいる。

「宗司から、ダンスをとったら何も残らないわ」

「…そうだな」

 笑っているが、なつめは帽子を被り、サングラスをかけ、部外者を装っている。関わり合いのないような態度は一応、教室関係者にばれない様にするためらしい。

 競技会での席指定のチケットは、まとめて教室が購入するため、教室に関わり合いのあるものが集まってしまう。それが、応援の多さなどで競われることもある。深沢の応援が初めてのなつめは、そんなことは全く知らず、周りの意味深な視線にも気付いていなかった。

「なつめ君…」

 薄い紫色のサングラス越しに、潤子の真剣な目を見つめた。

「哲のことだけど…」

「………」

「宗司はいい思い出だけを持っているわ。哲は決して、いい子ではなかった。そういった意味では、彼女のほうが哲に良く似ていたわ。強かなところとかね」

 深沢の前では、いい子ぶっていたが、彼に寄ってくる女の子をそれは陰険なやり方で、撃退していた。哲がもしも生きていたなら、雁字搦めの屈折した愛情の餌食になっていたかも知れない。

「…君なら、きっと大丈夫」

 この子は強い。そして、根はとても優しい子である。

 だから、なつめを選んだのかも知れない。深沢を誰よりも理解し、側でその世界を共有している。少し羨ましい気がすると、苦笑いを浮かべた。もう大丈夫と、今度こそ胸を撫で下ろした。

「宗司の引退試合かぁ、残念ね…」

「まあね…」

 優美とのやりとりの後、今日で競技会への出場は引退することを、深沢は決めた───。

 先程、会場でそれを知らされたなつめは、驚いて声も出なかった。どうして、なぜと詰め寄るなつめに、深沢は優しい目で、話は後だと言って、控え室に行ってしまった。深沢をずっと追い駆けてきたなつめにとって、競技会で見られなくなるのは悔しい。これからどうするのか、問い詰めなければと考え込んでいた。

「あっ、出てきたわ!」

 潤子はハッと、なつめに指差した。

 深沢と優美がホールの入り口に出てきた。それだけで会場から視線を奪うほど、深沢の存在はダントツだった。これほど、この会場で輝いている男はいない。

「やっぱり、いい男だな…」

 ぽつりと呟いた声がなぜかはもった。視線を横に向け、側に立つ人物を見上げた。

「……げっ!」

 平賀と椎名が立っていた。椎名は笑いながら、なつめに手を振り、潤子に頭を下げる。

「聞いたよ。あの深沢が競技会を引退なんてな」

「…惜しいとは思うが、仕方がないな。新しい人生の始まりだな」

「罪なやつ…」

 納得顔で、みんながなつめを見た。

「……っ!」

 不本意ななつめは、どうして自分がそんな眼で見られるのか納得出来ず、また納まった怒りが湧き上がる。怒りのオーラを放つなつめだが、潤子に促されて、会場の中心に立っている深沢を見つめた。初めて深沢の競技会を見た時も、これくらいの距離だった。ふと深沢と目が合った。

「……っ…」

 なつめは真っ赤になりながら、奥歯を噛み締めた。離れていても、すぐ側に感じる。今までの俺様のような強いオーラはなく、どこか落ち着いた感じが漂っている。純粋にダンスを楽しもうとしているのが分かる。深沢のゼッケンが呼ばれると、ホールの中央へと進んで来る。

「相変わらず、派手な奴」

 会場中からわき上がる女性の声に、深沢は視線を送って答えている。平賀は呆れたような溜め息を吐き、なつめは眉間に皺を寄せた。そんななつめの後ろの席から、

「なつめさん、先生のゼッケンが見えなかったわ。何番?」

「二九番!」

 聞いてろよ!とばかりに即答した。潤子は目を丸くして、後ろの席を振り返った。教室の生徒がみんな揃って、シーッと指で口を抑えている。本人以外は、みんな全部知っているらしい。そんなこととは露知らず、深沢の応援に夢中になっている。

「二九番!」

 一番前の席で、立ち上がって応援するなつめを、慌てた潤子が押さえる様は、どこか昔でみた光景を、深沢に湧き起こさせた。

 今日の結果はどうでもよかった。出ることに意味がある。

 深沢は楽しそうに優美と踊った。結果は予選落ちだが、誰も悔しそうな人はいなかった。任務を終えた深沢は、関係者と雑談していた。暢気に話していた深沢は、急に椎名から耳元で何かを囁かれた。

「今かよ…」

「最後だから、いいんじゃないか」

「そうよ」

 急にしたり顔で入ってきた潤子は、可笑しそうに笑っている。

「潤子。…また、お前の仕業か?」

 含み笑いをしている彼女に、深沢は渋々OKを出す。

「じゃあ、準備をしないとね」

 話をしようと思ってやってきたなつめの腕を掴んだ。

「さあ、行きましょうか!」

「深沢…、えっ、ちょっと…何処に?」

 なつめは状況が把握出来ないまま、強引に潤子に連行されていった。呆然と見送っていた深沢は、椎名に手を取られる。

「なにを平和そうに見送っているんだ。時間がないぞ!」

「俺はこのままでいいじゃないか!」

「いや、ダメだ」

 椎名の台詞に、嫌な予感を感じた。


 会場は、競技会が終わり、ダンスを踊っている人たちが楽しんでいた。プロが踊っていた同じホールで踊ることが、なによりも楽しい。

 そこに、アナウンスが流れる。

「今日はご来場頂きまして、有難うございます。只今より、雛元財閥後援による深沢宗司プロによりますデモストレーションを行います。よろしければ、皆様ご観覧頂きたいと思います」

 ドアの前に立ったなつめは、隣に立つ深沢を見上げた。

「マジかよ。練習してないし」

「大丈夫だろう。この三日間ずっと踊っているか、エッチしているか」

 笑っている深沢の頭を殴った。

「あれは練習のうちじゃないだろう。あんたは大丈夫なのか」

「潤子のこの手の悪戯には、慣れているもんでね」

 意味深な潤子の言葉を真に受けていたら、こっちの身が持たない。何かするだろう予感はあった。

「でも、お前…。今日、見ているだけで満足だったのか?」

「な訳ないだろう!踊りたくてウズウズしていた」

「なら、ショータイムだな」

 バンとドアを開けて、なつめを引っ張ってホールへと出て行く。明かりは少し落とされて、ライトが激しく照らされる。深沢は黒に白とシルバーの格子の模様が入ったシースルーのシャツを着ている。鍛え上げられた胸が透けて見えるため、黄色い悲鳴が上がる。

「深沢先生、素敵っ!」

 夏川たちの声援に、深沢は笑みを浮かべた。平賀の冷やかしの口笛が響く。

 中央に立つと、その陰から現れた存在へと目が奪われる。

「ほぅ…素敵」

 長い首と両肩のラインの露出が美しいデザイン。胸にかけてクロスしたシースルーは優雅に動き、その下には、深沢と同じ黒に白とシルバーの格子の模様が浮き立って見える。所々にある金のフリンジが輝くように揺れ、鍛え上げられた細いウエストがスタイルの良さを伺えさせた。黒のパンツは、横のスリットが深く入り、白のシースルーがチラッと見えるだけで、奇麗な長い足が際立つ。ドレスの効果もあり、立っているだけで二人の一体を感じさせる。深沢の隣に立って、より輝いてその存在を現した。

「キャァア、なつめさん!」

「綺麗っ!」

 妙なテンションの教室のメンバーに、なつめは驚いたように見ていたが、笑みを浮かべた。

「………」

 緩やかに流れてきたルンバの曲に、深沢の横顔を見上げた。すでに体のなかで、深沢のカウントが響いている。流れるように、なつめの体を抱き込むと、両手の指を絡め、頭上高く上げる。リードの手が持ち方を変えると、三回転回って、なつめの首だけを支え、倒していく。そのラインの美しさに、会場中から溜息が漏れる。

 ずっと掛かっていたこの曲───。

 時計が時刻を刻む音と、オルゴールの音が妙に耳に残る

 Sweetboxの『Every Step』

 深沢がよく口遊む You are there(あなたはそこにいる)が耳から離れなかった。

 高速回転しながら、深沢へと手を伸ばした手を強く握り締められる。

「………」

 緩やかなリズムに合わせた、伸びのある動き。なつめの柔軟な体が、深沢の腕のなかで綺麗に舞う。二人の絡み合うステップは、お互いの気持ちが重なり合うようで、見ているだけで、純粋な気持ちになる。

 あんなふうに愛する人と踊りたい…。

 深沢の肩に足を振り上げると、足首が固定される。深沢が腰を支えると、両手を広げて倒れていく。会場中からの拍手が遠くに聞こえた。

 深沢の自分だけを見ている視線に、なつめは嬉しそうに笑った───。

「………」

 会場の端から見ていた優美は、唇を噛み締めながら、昔を思い出していた。

 幼い頃からずっと一緒にいて、成長していく過程のなかで、自分とは違う何かを見せつけられていく事が堪らなかった。置いて行かれたくない。その思いが強すぎて、いつからか自分でも分からないうちに、屈折していった。

「やっぱり、勝てないな…」

 優美にとって、深沢は初恋だった。でも、優美が好きになったのは、なつめと踊っている時の深沢だった。あんなふうに優しく抱き締め、時には激しく愛して欲しかった。深沢の拒絶は、彼からダンスへの気力さえ失ってしまうとは思わなかった。恋に落ちて、我を忘れていたとはいえ、それに激しく傷付いた。優美は、なつめへの今までの拘りから、やっと卒業できそうだった。

「なつめ、頑張れ…」

 負けられない。そう呟き、会場をあとにした。

 なつめは、深沢だけを見つめていた。言いたいことは沢山があるが、今は楽しくただ踊りたい。この思いだけは誰にも負けない。

 この曲は、なつめを綺麗にみせるために、深沢が作り上げたものだ。強靭なバネと柔軟さ、深沢を夢中にさせたこの体。二人で作り出す世界に、潤子たちは笑みを浮かべて観ていた。

「…勿体無いなぁ」

 椎葉の言葉に、潤子は楽しそうな笑みを浮かべた。

 

 高級ホテルのVIPルームを借りて、深沢引退パーティを開いていた。深沢となつめ、椎葉と潤子の四人で、ソファにゆったりと座っている。テーブルに広げられた豪華な食事、ワインを飲みながら、潤子は超ご機嫌だった。機嫌の悪かったなつめも、美味しいディナーに舌鼓を打ちながら、ほぼ完食している。あまりにも根回しのいい潤子に、深沢は如何わしい目で見ていた。

「なんとなく、まだ嫌な予感がするのは、気のせいか」

 そっと椎葉に耳打ちすると、同じように頷いた。

「女王様の超ご機嫌ぶりがな、気になるな」

 二人の声が聞こえたのか、

「美味しいものも食べたし、さて、私から宗司に引退祝いにプレゼントがあるの」

 ほらきたと、深沢は身構える。なつめはお腹一杯で、深沢に持たれて欠伸をしている。寝そうななつめを気にしていると、潤子が別の部屋から、一台のノート型パソコンを持って来た。

「………」

 テーブルに置かれたパソコンを見て、欲しかった新型のパソコンに、なつめは飛び起きた。

「うわぁ、いいな。これ欲しかったやつ…」

 純粋に喜んで、なつめと椎葉はパソコンを開いた。少しの間、パソコンを触っていたなつめに、側に寄ってきた潤子は、そっと指差した。椎葉は身を乗り出して覗く。

「あれ、これ?」

「………」

 恐ろしくて見たくもない深沢は、現実逃避してソファに転がった。椎葉は眉間に皺を寄せ、なつめと顔を見合わせる。

「これ、パーティのデモだよ」

「でも、誰がネットに流したんだ?…おい、いいのか?」

 深沢に問い掛けるが反応しない。そこまでの管理は出来ないのが現状で、こんなふうに勝手にネットで、流されていることさえも知らなかったのだ。深沢が大きな溜息を吐くと、なつめがボソッと呟いた。

「あれ…?デモの予約が入っている」

「え?」

 深沢は慌てて起き上がると、一緒にパソコンを覗き込んだ。椎葉が驚きの声を上げた。

「一〇〇件近い予約が殺到している。お前、ショーとしてやっていけるんじゃないか!」

「………」

 深沢は潤子の顔を凝視した。ソファにゆったりと座って、腕を組んでいる。いつもの穏やかな顔ではなく、ビジネスの顔をしている。いくつものショップを経営しているだけあって、こういった時の潤子は経営者の顔だ。新たなビジネスを差し出してきた潤子に、言葉がなかった。

「誰もが、勿体無いって思うの」

「潤子…」

「雛元には了解取ったから、しっかり働いてもらうわよ。マネージャーもつけるから」

 指刺された椎葉は立ち上がった。

「えぇ、俺っ!」

 立ち上がった拍子に、足の痛みに顔を顰めたが、今はそれどころではない。潤子の笑っていない顔に、真っ直ぐに見つめた。今日なぜ自分が此処に呼ばれたのか悟った。

「………」

 潤子なら、椎葉の今の事情を知っているのかも知れない。動かなくなりつつある自分の足で、今の仕事はもう限界がきている。仕事を止めて、手術に躊躇いがある椎葉に、不安を払拭するかのような提案だった。腹のうちを知られたようで、椎葉はげんなりと項垂れた。

 深沢はそんな椎葉の心境を思いながら、パソコンを凝視しているなつめの顔を見た。

「よく考えろ。お前の人生が変わるかも知れない」

「…俺は、宗司のパートナーとして、ダンスを踊りたい。ただそれだけだ…」

「分かった」

 深沢は潤子に深く頭を下げた。潤子はその肩を叩きながら、

「あなたが幸せなら、私はそれだけでいいの」

「…ありがとう」

「馬鹿ね…」

 深沢は顔を両手で覆った。

 椎葉はゆっくりと立ち上がると、みんなの顔を見つめた。

「…話が決まったなら、これの段取りは俺の仕事だな」

「椎葉…、大丈夫なのか」

「やらせてくれ。…俺は、お前の一番のファンであって、親友でもある。他に誰がおまえの管理が出来るっていうんだ。なつめ君も良く知っている。彼の素晴らしい居場所を作ってやりたいって、今思っている」

 なつめからパソコンを受け取ると、思わず足の痛みに顔を顰めたが、その顔に迷いはなかった。

「…俺も決めた。さっさと手術して帰ってくるから、待っていろ!」

「あぁ、席は開けておく」

 椎葉は穏やかに安心したように、大きく頷いた。

「お前は、お前らしく生きろ!」

「分かった」

 椎葉の後ろ姿を深沢は静かに見送った。潤子はホッとしたように、

「やっと本人に覚悟が出来たみたいね。良かったわ」

 そう椎葉の妻から、内密に相談は受けていた。あとは背中を押すタイミングを計っていただけだ。

「きっと大丈夫。すぐに戻って来るわ」

 潤子の呟きに、なつめも大きく頷いた。

 深沢は、なつめの手を掴むとゆっくりと歩いていく。これからは最高のパートナーが側にいる。この手を放さない限り、最高の演技を追い求めることが出来る。力強くドアを開け、

「なつめ、行くぞ!」

「…うん!」

 迷うことなく、二人は走り出した。


「宗司、ドライブに行きたい」

 朝食の後、珍しくそんなことを言ったなつめを不思議そうに見た。

「なんだよ、急に」

 面倒くさそうなセリフに、頬を膨らませた。

「あんたとドライブに行きたいなって…」

「………」

「なんだよ、いいよ。もう…」

 昨日テレビで見たドライブの景色があまりにも綺麗だったから、深沢と行ってみたいなと思った自分に腹が立ってきた。

 深沢は携帯を掴むと、

「ちょっと待て…」

 いなくなってしまった。

 一時間後玄関から物音がする。

「あれ?宗司、帰ってきた?」

「帰ってきたじゃねーよ!行くぞ」

「え?どこに」

 思わず固まったなつめの肩を抱き寄せると、そのまま有無を言わさず、マンションの側の駐車場へ向かう。そこにある車を見て、思わず固まる。

「凄いベンツ?…誰の?」

「潤子の」

 知り合いに車を借りようとしたら、何処で嗅ぎ付けたのか、潤子が連絡を寄こしてきた。会社まで行き、車を預かると、この借りは高いわよッと笑いながら、鍵を渡していった。

 普段車に乗ることのない深沢は車を所有していない。なつめの思いつきのせいで、また怖いやつに借りが出来たと、内心溜息を吐き出した。

「何処に行きたい?」

「海!」

 久しぶりのドライブに、窓を少し開け、涼し気な風に笑みが浮かぶ。信号で停まると、そっとなつめの茶色の髪に触れた。何気ない時間が穏やか過ぎて、愛おし気に見つめた。

「俺、あんたが倒れた時、ショックだった」

「あぁ、悪かったよ」

「他の人の名前を呼ばれたのもショックだった」

「悪かった」

「責めてるわけじゃない」

「………」

「俺、もう何年も家に一人で住んでいた。あんたと一緒に暮らして、帰っても何も変わらないと思った。…でも違った。なんだか、一人が辛くて、あんたが恋しくて眠れなかった」

「なつめ…」

「あんたに恋して追い掛けて、こんなにも好きになって…」

 その思いが一生懸命で、思わず見つめてしまった。

「もうあんたから何もかも奪って、このまま何処かへ連れ去ってしまいたかった…」

「……っ!」

 胸を鷲掴みにされた衝撃を受けた。こんなふうに誰かに口説かれたことはない。思わず笑ってしまうと、

「笑うな!」

 泣きそうな顔が可愛くて仕方がない。こんなにも心が温かくなるなんて───。込み上げてくる幸せで、手に力が入らない。海岸近くの駐車場に車を停めると、

「なつめ…」

「うるさい」

 そっと腕を開いてやる。なつめは睨んだが、広げられた優しい腕の温もりを知っている。大好きな胸板が呼んでいる。抵抗できずに、その胸板に顔を埋める。

「宗司…」

「俺以外のことは考えるな」

 甘える体を抱き締め、その唇にキスを落とす。

「ホテルを予約した。二人でゆっくり過ごそう」

「ほんと?」

「俺は、全部お前のものだ」

 驚いたように目を見開くと、背中に回した手に力を込める。

「こんなにもあんたを愛してる」

「あぁ、愛している」

「うん…」

 真っ赤になってなつめは嬉しそうに笑った。その笑顔を守りたいと心のなかで強く思った。


  

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