第2話 不運
「あぁ...、あぁぁぁ!あぁ?」(知らない天井だ...、なんで話せないの!何処ここ?)
落ち着いて周りを見てみると、自分は何かの上に、布に包まれ置かれていた。
(何処だろう、ここ。体が小さくなってるって思ったけど、多分転生して、、赤ちゃんになったんだ僕。親は近くにいないのかな?)と考えていたら声が聞こえ始めた。
「術師様、ありがとうございました。」
「大切に育てなさい。私は町へ帰ります。」
「「ありがとうございました。」」
「頑張ったなリズ。お前ももう立派な母親だ。」
「オババ様も、やっと私達を認めてくださるわ。いつも子供も産めぬ女など、この村には必要ないって言われていたし。」
「すまないなリズ。俺にもっと力があれば、この村での地位を、上げることが出来たんだが、、、すまない。」
「謝らないで、、、あなたが怪我をしたのは、村のみんなを守ったからでしょ。それなのに、オババ様は何デ「だめだリズ、そんなことを言っては。」ごめんなさい。」
「オババ様のことを、悪く言ったなんてバレたら、何をされるかわからないからな。術師を呼ぶ許可をもらえただけ、ありがたいと思わないと。今日は我が子と共に寝よう。」
「そうね、、そうしましょう。あぁ、シス、、生まれてきてくれてありがとう。」
(なんか、きな臭いけど、この2人が両親なんだ。シスが僕の名前かな?お父さんがいるって不思議だな。前の世界じゃ、物心がつく前に両親は離婚して、お母さんと住んでいたし。とりあえず、オババ様?には注意して生きていこうかな。)
家の中(早朝)
「コン、コン」扉を叩く音が聞こえる。
「テンとリズはいるか?」
「いるぞ。扉を開けて入ってきてくれ。...トビーじゃないか⁉︎朝早くからどうした?」
「オババ様が、急に村人達を集め始めたんだ。お前達は、オババ様に嫌われているからな、早めに行った方が良いだろう。」
「ありがとな、そんなこと教えてくれるの、お前だけだぞ。分かった、リズと息子とすぐに準備して行くよ。」
「先に行ってるからな、遅れるなよ。」
「....リズ、話は聞いたな。すぐに準備をして向かうぞ。」
「なんだか、嫌な予感がするわ。」
「大丈夫だ、何か起これば俺がなんとかする。信じろ。」
「分かった。急いで準備をするわ。シス、貴方も一緒に行くのよ。」
母親に、抱き抱えられながらシスは思った。(僕が生まれてすぐに召集?嫌な予感がするな。この世界の神がアレだったし、村の統治者も怪しいぞ。)
オババ様の家の側には、すでに多くの村人達が集まっていた。
「今日は何の召集だ?」「テンの家に、ガキが生まれたとは聞いているが。」「だけど、テンの家とオババ様は仲が悪いだろ。」
「誰にも、今日の召集の内容は聞かされてないのか。」
「シスを連れてきて、大丈夫だったかしら?オババ様に、難癖付けられたりして....。」
「いくらオババ様でも、赤ん坊に難癖は付けないだろう。先頭が騒ぎ出した、家から出てきたみたいだ。」
「皆の者、鎮まれぇぇぇ。....朝早くから、よく集まってくれた。早速、集まってもらった理由を話そう。.....生贄のタリスマンが光ったのじゃ。」
「生贄のタリスマンだって⁉︎」
「また生贄が選ばれたのか⁉︎」
「頼む、今回も見逃してくれ。」
辺りは騒めく限りだ。(なんなんだ⁉︎生贄のタリスマンって、嫌な予感がするぞ⁉︎あ、オババ様が何か言おうとしてる。)
「鎮まれぇぇぇぇぇ。....今回の、、氷の女王への生贄を発表する。.....生贄の名は、、シスだ。」
「.....嘘だ、、、嘘だ、嘘だぁぁぁぁぁぁぁ。」
「テンが暴れておる、皆取り押さえよ。そして、リズから子供を確保せよ。」
「嫌、離して、、シスを返して、、返してぇぇぇぇぇ。」
「此奴がテンとリズの子か。気味が悪い顔をしておるの。儀式の場に連れて行く前に、清め、着替えさせるぞ。テンとリズは家に閉じ込めておけ。お前は泣くな、シス。」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」(僕どうなっちゃうのぉぉぉぉぉぉぉぉ。)
オババ様の家(夜)
(ここが、オババ様の家の中かぁ。僕の家より、造りがしっかりしてるなぁ。生贄って言われたけど、、、何処に連れて行かれるんだろう。)
泣き止み、疲れたシスは家の中を見回し、考えていた。そんな時、物音が聞こえた。
「あぁ⁉︎」(誰⁉︎)
「シス、お父さんだぞ。大丈夫か?.....まだ言葉は分からないか。すまんなトビー、手伝わせて。」
「流石に俺でも分かるさ、赤ん坊を生贄になんて間違ってる。早く逃げ出そう。村の外の馬車には、リズも乗って待っているからな。」
「あぁ、そうだな。幸いオババ様は、生贄の話を隣の村へ報告してるはずだ。早くこの村から脱出しよう。」
村の外(夜)
「とりあえず、街まで逃げよう。馬車を使えば早く着く。」
「すまない、トビー。馬車まで手配してもらって。」
「気にするな。俺も村の在り方に疑問を持っていたんだ。遅かれ早かれ、、村から出ていったさ、街へ向かうぞ。」
トビーは馬車を飛ばした。しかし、朝になっても街へ着く様子が見られなかった。怪しんだトビーは、馬車を停止した。
「おかしい、どうなってやがる⁉︎何故街へつかない。だいぶ時間をかけたぞ。」
「どうしたんだトビー?何かあったのか?馬が疲れてしまったか?」
「変なんだ、、もうとっくに街へ着いていていい時間だ。朝になって気づいたが、まったく村から離れた場所に移動したわけでもない。」
「なんだと⁉︎確かに、朝になっても着かないのはおかしいな、、、、まさか、、オババ様、オババ様いるんでしょう、出てきてください。」
「へっ、へっ、へっ、やっと気づいたか。そうじゃ、わしの呪術で、街へ着かんようにしたわい。残念じゃが、お主らには死んでもらう。村を見捨てて、逃げようとしたんじゃからのう。」
「巫山戯るな⁉︎ばあさん1人で何ができる。今すぐ死ぬのはお前だろう。」
「わしは1人で来たなんて、言っておらんわ。どうやらお前さんたちにも、手伝って貰わんといけないようじゃ。」
オババ様の側から屈強な男達が現れる。「あぁ。」(こんなん勝ち目ないよ。)
「我が村のためにもお前達には死んでもらう。」
「クソッタレ。テン、やるぞ。」
「あぁ、トビー。最後まで戦ってやる。」
テン達の戦闘は日が真上に昇るまで続いた。しかし、圧倒的な戦闘力の差によって殺された。リズも、シスの目の前で殺された。最後の最後までリズは、シスの方に村人達が行かないよう押さえていたが、切り捨てられ、死んだのだ。生き残ったのはシスだけ。そして、シスは村に連れて行かれた。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ。」(なんで、なんでことになるんだよぉぉぉぉ。)
「いくら赤ん坊でも、親が死んだのが分かるのか?気味の悪い奴だ。さっさと、儀式を終わらせてしまうか。お前達も付いてくると良い、儀式を見せてやろう。」
そうして、シスはオババ様に連れて行かれたのだった。
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