第31話 桃子誕生

 年末が過ぎ、山彦の家にも年始が始まった。

 と言っても、村の皆と挨拶をして家々を回るだけの簡単な行事だ。

 だが、簡単とはいえ雪降る中を歩くのは辛い。

 山彦の家ではそれに加えて、来た信者の人達に鍋を振る舞っている。

 具は余っている肉とジャガイモだ。

 それらが無くなるとやっと落ち着ける。

 落ち着いたら山彦が食事を作って皆で食べる。

 あやめの腹が大きくなり出してから山彦が食事を作る階数が増えた。

 俺は包丁や火が危ないとの事で触らせて貰えない。

 雑穀と味噌汁と残った肉鍋で朝食は終わりだ。


 あやめの腹が大きくなってから蜘蛛の糸を取りに行き、新しい棒に孵るのは俺の役目になった。

 今日も朝早く、蜘蛛の寝ている時間から入って糸のついた棒と何も無い棒を交換する。

 偶に起きている蜘蛛もいるが、糸を取りに行くと繰り出した糸を切ってくれる。

 ありがたい事だ。

 糸は輸送船トランスに送られて何本も合わさった丈夫な糸として処理をして此方に戻されてくる。

 布も同様だ。

 そんな平穏な毎日を送っていると、あやめに陣痛が起き出した。

 産婆と育成カプセルを呼んで、俺は湯を沸かした。

 布を用意して、後はする事が思い付かない!

 結局、14時間程掛かかりあやめは女の子を産んだ。

 山彦には2ヶ月間まぐわい禁止だと言っておいた。


 女の子は桃にあやかって桃子と名付けられた。

 何と言うか皺だらけで猿のようだった。

 育成カプセルと俺からの祝いとして赤ちゃん用の洗える化学繊維の少し小さな布団セットを送った。

 6〜7歳児まではこれで行けると思う。

 

 あやめには呪術の手ほどきを受けているが徐々に難しくなってきた。

 湿原の開発も終わり、見事な水路と水田へと変わっていた。

 とは言っても今の時期は未だ寒いので水は張らずに土だけだけれども。

 未だ苗作りには早いし、田起たおこしぐらいしかすることが無い。

 そうだ、今の内に小型の偵察機を使って他に呪術みたいな事をやっている所は無いか調べてみよう!

 ……調べた結果、世界各地にありました。

 大昔の地球で言う欧州近辺には魔術と呼んでいる呪術があった。

 小粒金……欧州の価値ならこの小粒金を2つに割ると1ヶ月分の給料として有名な方でも雇えるぐらいの金額になるだろう。

 偵察機にそのまま偏見の無い魔術を伝えることに忌避感の無い魔術が上手くて口の堅い良い人材を探させて行くことにした。


 月日は巡り、田んぼは自立型万能工兵機械とそのロボット達で切り盛りしてくれている。というか、まだまだ余裕がある。

 俺は3歳になりあやめに教わった呪術を繰り返しながら、偵察機に探させた魔術の先生になる人のところに輸送船トランスの転送を利用して洋装で訪れて”通いで魔術を教えてくれませんか? 詮索無用で、本や材料費はそちら持ちで。給金は月これだけ出せます”と小粒金の半分を見せた。

 快諾された。

 

 その晩から山彦とあやめに話があると言った。


「話とはなんですか?」

「話だが、これから夕方から深夜にかけて修行することになった。天のこと故詳細は言えないが許されよ」

「義父や義母にも話せないことなのですね?」

「はい」

「分かりました。大事な修行なのでしょう。無事に帰って下されば良いのです」

「有り難う御座います」


 こうして俺は3歳の時に魔法使いの弟子になった。

 送迎そうげいは輸送船トランスの転送だが。

 弟子になった魔法使いは20代後半から30代前半の女性で冒険者をしていたがパーティーのメンバーが結婚して解散したので冒険者を辞めることにしたそうだ。

 最初に持っていた膨大な資産は本等に使われて少なくなってきた所に俺の声が掛かって助かったとの事。

 大丈夫かと心配したが、教え方は論理的で分かりやすく教えてくれる。

 分からない事が有れば分かるまで説明等を変えて教えてくれた。

 座学で一応理解できるところまで理解したと判断した先生は実際に使用してみようと言う事で、身体強化の魔法を使った。

 残念ながら最初の方は失敗ばかりだったが、後半は連続で成功して感覚を掴めた気がした。


 呪術の方はあやめの教え方はやらなくてはわからないが、やったら分かりやすい教え方だった。

 術も何種類か教えてもらい、狐火や式神を作る術などを教えてもらった。

 そして、何か言いたそうにしていたが結局何も言わなかった。


 桃教は順調に人数を増やしている様だ。

 年始の鍋には信者以外はダメなのに随分と人がいたからな。

 入浴も桃教の人数が増えた所為か、入る人数が多くなり掃除を当番でしている信者が大変そうだった。

 それは2番湯でも同じだが。

 ちなみに一番湯は山彦かあやめがしている。


 桃教だが、俺が育成カプセルから出たので太郎教にしようと言う話が出ているが、桃教でも困らないので好きにさせている。

 変えるなら何か話が有るだろう。


 ここいら辺で大きな町である須佐の町に生糸や布を売りに来た。

 大陸のスパイダーシルクには絶対に負けない自信があるので、強気の交渉をした。

 なんなら、大陸のスパイダーシルクを持って来てもらい比較をしてもらった。

 その結果、布の折り方も均等で綺麗なのと艶が妖しく光り人を魅了する艶なので、大陸のスパイダーシルクの3倍の値段がついた。

少量しか持ってこなかったが、結構な金になった。


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次回は時は小鬼ゴブリンが襲って来るよ!

次回、小鬼ゴブリンです。


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拙い出来ですが旧作も読んで頂ければ幸いです。


能力者が現れたと思ったらダンジョンも出てきました。これは・・・・・・商機ですね!

https://kakuyomu.jp/works/16817330658887843407

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